先日、研究室メンバーと勉強会をしました。そのときに同じ研究室M1の木村充くんがリーダーシップ論の歴史をまとめてくれたので、その内容をもとに記事を書きたいと思います。木村君に了承を得てblog書いてます。木村君、ありがとう!

私はリーダーシップ研究の専門家ではないので、レジュメをもとにざっくり歴史をまとめ、最後にコミュニティとリーダーシップの関係について、僕なりの意見をちょっと付け加えてみました。

■リーダーシップ特性論
古代から1940年頃まで主流だった。優れたリーダーが持つ特性を明らかにしようとする研究。ポイントは「特性」ですね。

この研究の課題は2つ。1.特性を測定するのは現代でも困難、2.特性をもっていても成果を出せないリーダーもいる、ということ。

■リーダーシップ行動論

特性論に関する反動的な立場。1940年代後半のアメリカにおいて、どのような行動が有効なリーダーたらしめるのかを確認した研究。こちらのポイントは「行動」ですね。
例)レヴィンのリーダーシップパターン、リッカートのマネジメント・システム論、三隅二不二のPM理論

リーダーシップの科学―指導力の科学的診断法 (ブルーバックス)
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5 納得。

 

 

 

 

 

 

この研究の課題は、リーダーの行動だけが全ての成果に影響するわけではなく、状況の変化を超えてある行動が有効であるとは限らないと指摘されたことのようです。

■状況対応型リーダーシップ論
1960年に出てきた立場。「全ての状況に適応される、唯一絶対のリーダーシップ・スタイルは存在しない」という前提に立ち、どんな人でも適切な状況に置かれればリーダーシップを発揮できるという立場。
例)フィードラーの条件適合理論、ハーシー&ブランチャードのSL理論

■カリスマ的リーダーシップ論・変革的リーダーシップ論

1970〜1980年に出てきた立場。アメリカの長期的経済の低迷化、急激な経営環境の変化によってもたらされた。既存の価値観や命令体系では企業が継続的に成長することが不可能になってきた。

そんな中で必要とされるのが、カリスマ的リーダーのカリスマ性であり(カリスマ的リーダーシップ論)、リーダーの掲げるビジョンとそれを実行する能力である(変革的リーダーシップ)と各論者が主張した。

・カリスマ的リーダーシップ論
マックスウェーバーや、Houseの再定義。J.CongerとR.Kanungoの研究

・変革的リーダーシップ論
1980年代に広がる。カリスマ的リーダーシップ論と重なる部分も多いが、多くの学者はカリスマ性よりもリーダーの掲げるビジョンの方が重要であるという立場をとっている。
ビジョンを共有して、社員の能力を引き出し、組織学習を促進することによって、変革を実現するという基本的な考え方
→コッター、ティシーなど

関連記事:[書評]カモメになったペンギン
https://www.tate-lab.net/mt/2008/11/post.html

カモメになったペンギン
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■サーバント・リーダーシップ論
リーダーである人は、「まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という実践哲学のこと。1970年代にRobert K. Greenleafによって提唱された。

サーバント・リーダーは常に他者が必要としているものを提供しようと努める。相手への奉仕を通じて、相手を導きたいという気持ちになり、その後リーダーとして相手を導く役割を受け入れる人。他者に奉仕することで、相手がより健全に、賢く、自由に、自立的になり、自己中心的な欲望にとらわれない真の奉仕者として成長できるよう、お互いを支え合う関係を構築する。

こちらはずいぶんとこれまでの流れと異なりますよね。

→Spearsによるサーバーント・リーダーの10の属性
傾聴、共感、癒し、気づき、説得、概念化、先見力、スチュワードシップ、人々の成長に関わる、コミュニティーづくり

サーバントリーダーシップ入門
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5 リーダーシップの既成概念を打ち砕く
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4 サーバントリーダーシップは最高です
4 取っ掛かりとして適した本です。
4 第五水準の経営者にも通じる概念

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまでがざっくり歴史です。リーダーシップ論は実にさまざまな角度から切り込まれているのですね。

個人的に面白いと思っているのはサーバーント・リーダーシップです。こないだ日本教育工学会論文誌に掲載された荒木淳子さんの論文「企業で働く個人のキャリアの確立を促す実践共同体のあり方に関する質的研究(2009)」においても、サーバーント・リーダーシップの話が登場していました。

少し乱暴にいってしまえば、キャリア確立を促す実践コミュニティにおいては、「配慮型リーダーシップ」が大事ではないかという話なのですね(もちろん、それだけが大事というわけではなく、論文にはちゃんと書いてあります)。ここで、荒木さんは「配慮型リーダーシップ」は「サーバーント・リーダーシップ」と似ているのではないかという指摘をしています。「キャリア確立の視点から見ると、参加メンバーに細かく配慮するリーダーシップの存在もまた、重要である」ということが論文の中で述べられています。

ちょっと長くなってしまいました。

「リーダーシップ」という言葉は非常に、魅力的で、いつの時代でも求められている言葉のように思います。研究の分野においては、その時代の流れとともに、さまざまな考え方・アプローチがとられてきました。

サーバーント・リーダーシップという考え方が、リーダーシップ論の中のどこに位置づくのか、私は明確にわかってはおりませんが、こういう話がでてくるのもまた、現在の社会の状況を反映しているのかもしれませんね。

ゆるくて、多様なコミュニティでありながら、それがあるタイミングでぐっと結び目をつくったり、離れたりする。そんな組織には、サーバーント・リーダー的な役割が求められているのかもしれません。

先日インタビューさせていただいたシブヤ大学学長の左京さんからも、サーバーント・リーダーシップに近いかんじを受けました。

関連記事:[書評]「シブヤ大学の教科書」読了!
https://www.tate-lab.net/mt/2009/11/post-142.html

ということで、長くなってしまいましたが、今回の記事は終わりです。ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。

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ちなみに今回の記事を書くにあたり、木村充くんだけでなく、同じ研究室の山田寛邦くんにも助言いただきました。どうもです。山田君のblog→http://nlab.he.u-tokyo.ac.jp/lab/yamada/

▼参考になりそうな文献

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