月別アーカイブ: 2008年12月

高等教育におけるクリエイティブの代償

先日、大学で求められる力、学士力についての記事を書きました。学士力は、大学生が卒業するまでにここまでの力をつけているということを保証するものと言ってもいいかなと思います。その構成の要素のひとつに、「創造的な思考」が位置づけられていたと思います。

今度は学士力

http://d.hatena.ne.jp/asapon/20081225

学士力を中教審が定義 大学卒業に厳格な認定試験も

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20070910ur21.htm

今回の素案に示された「学士力」は、「知識」「技能」「態度」「創造的思考力」の4分野13項目。

高等教育では今、学生が主体的に学ぶことの重要性がさけばれており、世の中の複雑な課題に立ち向かえる力をつけることが重要視されています。たしかにこれはとても重要なことでしょう。しかし、こうした力を本当に育成することというのは非常に難しいことであろうと思います。

自ら学び考える課題として、大学ですぐに思い浮かぶのは研究活動ですが、これを見ても、すんなりいくとは限らないことが明らかでしょう。こないだ私のはてなブックマークで登録した記事にこんな記事がありました。

はてな匿名ダイアリー:卒論ネタ

http://d.hatena.ne.jp/next49/20081217/p3

卒論をあきらめたを読んで、ちょっとGoogleで「卒論 site:anond.hatelabo.jp」「卒業研究 site:anond.hatelabo.jp」で検索してみた。うすうす気が付いていたけど、はてな匿名ダイアリーの研究関連ネタはネガティブ過ぎ。まあ、うまく言っていたら愚痴なんて書かないもんね。

とりあえず、理由なんてどうでも良いから生きていようぜ!

ここでははてな匿名ダイアリーの中で、卒論やら修論やら、博論というキーワードをいれて検索すると苦しんでいる様子しか出てこないことを述べています。みなさんも経験したことがある方はわかるかもしれませんが非常に苦しいということは同意できることではないでしょうか。

これを生みの苦しみと言ってしまえば楽なのですが、大げさかもしれませんけども鬱状態に近くなる人もけして少なくはないという現状もあります。学生にとっては、数枚のレポートを書くことですら大変なのに、より複雑な問題ばかりが先に進んでしまうと、どちらにとってもよろしいことにはならないように思います。

よく学習の分野では、熟達するためには、「よく考えられた学習」が必要になるといいます。その人にとって適切なレベルの練習を続けることの大切さがその中のひとつとして言われています。ちょっと苦しいけど乗り越えられる範囲の課題を続けること、苦しいけど楽しいというラインがとても重要なのですがこれを設定することはこれまた非常に難しいわけです。

楽でもだめ。苦しいだけでもだめということです。そのためには、師弟関係はきめ細かである必要があると思うのですが、大学は先生に対して学生の数は増える一方であるので、それも難しいと。じゃあどうするのよ?というのが現状なのではないかと思います。

学生同士にインタラクションさせる形式の授業も、それ自体がよいからというよりも、「そうせざるをえないから」という部分も多いように思います。もちろん、学生同士に任せたら任せたでまた別の問題が出るのは明らかなのですが。

ということで、なにかモノを作ったり、問題を解決したりする体験は非常にエキサイティングだし、大学がそういう場所になったらよいというのは非常に同意できるのですが、無策でつっぱしると、非常に大変なことが起きそうだよなということを思う今日この頃です。

クリエイティブを目指すことの代償は必ずあると思うのです。それを踏まえた上で、なにが出来るのかなあと思ったりするのですよね。まあそんなところで。

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5 学生参加型の大学授業

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4 協同学習の実例集が中心

学校の仕組みをちょっとだけアレンジする

最近あらためて思いますが、「学校」てなかなか面白く、よくできたシステムですよね。今年、個人的にとても実感したのは「部活」とか「時間割」のシステムです。

「部活」については、本業とまた違ったなにかに打ち込んで、成長するひとつの仕組みなわけですよね。

「時間割」についても、勉強する時間をしっかり区切って、その中で勉強をし、休みをいれてやるっていう仕組みです。

いまの自分のように、時間が自由に使えるところにいると、どちらの仕組みも、「なるほど、よくできている」と実感することができます。

最近、もうひとつ注目しているものがあります。それは「卒業アルバム」です。いわゆる「卒アル」ってやつですね。これもなかなかよくできていると思います。学校にいたときの活動をひとつの本にして、活動を振り返るわけです。一種のリフレクションブックともいえると思います。これをベースになんかしたいと今、思ってます。

このように、学校の仕組みはとてもよくできていると思う一方で、もうひとつアレンジが必要だろうなとも思うのですよね。

学校の仕組みをベースとしつつも、ちょっとイケてる仕組みを備えたもの。来年はこういうのをテーマに活動してみようかなと思ったりします。

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ワークショップ的なデジカメ

ワークショップをちょっと愉快にする方法として、写真をつかう場合ありますよね。チェキとかで写真を撮って胸に貼ったりとか、そういうことあると思います。

そういう用途にうってつけなデジカメがちょっと前に発売されました。

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5 最高のおもちゃ
5 旅行に便利かな

xiao(シャオ)というデジカメです。なんか細長いデジカメですけども、下についているのがプリンタなんです。つまり、デジカメで撮った写真をその場で印刷できるわけです。すてきですよね。タカラトミーからでているところにおもしろさを感じます。ちょっと欲しいアイテムです。

ワークショップを楽しくするには、「記録」というのは非常に重要な要素になります。記録してきたものを共有するとか、情報をうまく可視化することが重要なんですよね。それがコミュニケーションのきっかけにもなります。その活動を最大限にいかすようなイケてるアイテムに目を配っておくこともこれまた重要ですよね。

ワークショップをちょっと彩るアイテムをこれからたまに取り上げていきたいなと思っています。

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5 場づくりの方法が、具体的にわかる!
5 目的設定を一番強調しているのがポイント

僕なりの学習環境デザイン

今回はちょっと自分語り風です。

お茶の間に届ける

最近頭の中をぐるぐるまわっている言葉のひとつに「お茶の間に届ける」という言葉があります。クイックジャパンで浦沢さんが言っていた言葉に触発されました。研究に関することをしていていろいろ思うのですが、せっかくの知見がまったく「お茶の間に伝わっていない」よなあと思います。要するに、「研究的にはそんなん当たり前じゃないの」みたいなことが、普通の人からすると、「なにそれ?」みたいに思われているってことかもしれません。

そういうことってとても多いですよね。だからまあ大学の知を公開するという試みが行われているのかもしれません。大学の授業を一般の人でも見ることができるようにするというのもひとつの試みですよね。

UTOpenCourseWare

http://ocw.u-tokyo.ac.jp/

でもまあこういう動きってほんとうにはじまったばかりですよね。僕がいろいろと個人的に納得がいかないことのひとつは、「そんなん全然広まってないよ」ということなのかもしれません。広げるのは、「なんか作ったモノ」でも、「考え方」でもなんでもいいのですけれども。

広げたいわけでもない。

でも、僕はほんとうに「広げること」がしたいのか。そう言われると疑問があるかもしれません。

ありきたりかもしれませんが、僕は個人的に「ある集団」と「ある集団」を「翻訳してつなげる」ことが好きなのかもしれません。

あんたたち違うこと言っているように見えるけど、これとこれ同じだよね。これとこれは違うよね。みたいに、一見違う人を同じ土俵にのせて話してもらうというのかなあ。

そうなんです。僕にとっては「同じ土俵にのせる」ということはすごくポイントなのです。「参加させる」といってもいいかもしれません。「参加」というと、状況論的な話とも接続がいいかも。

うーん、要するに、世の中まだまだ「参加のデザイン」がなっていないように思えるわけです。「参加のデザイン」というと、ワークショップとも重なってきそうですね。

「考えを広げる」ということは、僕からすると要するに、「みんなに参加してもらう」ということに近いかなと思います。固定のものをみんなに配布するメタファーではなくて、「モヤモヤ」を共有してもらってみんなを参加させるってかんじなのですよね。

結局のところ

よくまとまらないのですけども、僕が自分自身楽しいと思う瞬間の一つは、「みんなに同じ土俵にのってもらう瞬間」なんですよね。「俺かんけいねー」とかじゃなくて、「これ君も関係あるよ」というのを自然に促すっていうのかなあ。そういう共通の「なにか」をうまく構築して、参加してもらう。

これが僕なりの「学習環境のデザイン」だと思う今日この頃です。よくわからないけど、とりあえず。

親の学習観とワークショップ

ワークショップコレクションの記事を書いたときに、面白いコメントを2つもらいました。そこから考えた話を今日はここに書こうと思います。

http://d.hatena.ne.jp/asapon/20081222

そのポイントとはズバリ「親の学習観」です。

ワークショップコレクションとかやった場合、それって子どもが直接「このイベントおもしろそう」と思ってくることってあんまりないわけですよね。むしろ、親が連れて行くという側面が非常に大きいと思います。つまり、ワークショップとかそういうものに興味をもってもらうためには、ある意味、「親に興味を持ってもらう」ということが非常に重要なことになるわけですよね。もちろん、連れて行って子どもが喜んだからということで、もう一度来てくれるかもしれませんが、もう一度来るときにもやはり親のモチベーションというのは重要ですよね。

すごく単純かつ、主観的な考えを述べさせていただければ、ワークショップってハイソなイメージがありますよね。子どもに創造的に育ってほしいわ!というかんじでしょうか。そのために、美術館に連れて行くようなノリのように思えます。間違っていたらごめんなさい。実際はそういうわけじゃないんでしょうかね。なんかよさそうだから?

うーん、ワークショップに子どもを連れて行く親のモチベーションがとても気になります。今度どこかのママさんに聞いてみようかな。そのあたりって、子ども向けワークショップをやるときにポイントになるかなと思う今日この頃です。

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今度は学士力

昨日こんなニュースがでましたね。

大学生の学習目標「学士力」規定を 中教審が答申

http://www.asahi.com/national/update/1224/TKY200812240076.html

 答申は、「大学全入時代」が迫る中、日本の大学が与える学位(学士)の質を保ち、国際的な通用性を高めることが狙い。知識・理解▽汎用的技能▽態度・志向性▽統合的な学習経験と創造的思考力の4分野で、コミュニケーションの能力や自己管理力など計13項目を学士力の指針として列挙。大学には、学位の授与を厳格化し、水準を確保していくことなどを求めた。

たぶんこれは大学を卒業したときに、これだけは出来るよ!みたいな出口としての能力確保ということなのでしょうかね。こうした流れによってまた授業スタイルはかわるかもと思われます。

大学はいままさに変化のときだと思います。これをうまくいい方向に持って行きたいですよね。総合的学習の時間のように、導入したけど・・・とならないためにしないとですね。

いろんなワークショップがある

コラムというか、情報というか。こないだこんなページを見つけました。ワークショップコレクションというやつです。

ワークショップコレクション2008

http://www.wsc.or.jp/index.html

ワークショップコレクションとは?

ワークショップコレクションとはこういうやつみたい。

近年、こどもの新たな学びと創造の場として「ワークショップ」が注目されています。日本においても、こどもたちの創造力・表現力を刺激する、独自性のある優れたワークショップ・プログラムが全国各地で実施されており、それらは独自の発展をとげてきました。

ワークショップコレクションは、このようなこども向けワークショップ・プログラムの全国普及と発展を目的に、全国に点在するこども向け「ワークショップ」を一同に集め、一般へ広く紹介する博覧会イベントです。ワークショップコレクションは、こども向け「ワークショップ」の“ 祭典” として、全国各地でこども向けワークショップを実施している方々の発表/交流の場所となり、それらワークショップに参加/体験をするこどもたちの集まる場所となります。

おもしろかったのは、紹介されているワークショップの一覧があることです。

http://www.wsc.or.jp/WSC2008ws/

これを見ると、実際にどんなものをどういう団体がやっているのかがわかって楽しいです。ワークショップってなんだろう?とか考えていると、ついつい具体的な活動から遠ざかっていくことがあります。でも、やっぱり具体的にやっているものを見るのは考える上でも重要ですよね。

このアイデアはすでにやられている!とか、こういうのは全然やられていないんだなとかがわかって楽しいです。一度ごらんあれ。

参考文献

ワークショップ―新しい学びと創造の場 (岩波新書)
中野 民夫
岩波書店
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3 読み進めて行けない
1 やや主観的すぎる内容
4 ワークショップで大事なこと。
3 「個人」とセットでパーフェクト

野球人の錯覚

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5 定石や定説から見える、心の不思議
3 分析のツメは甘いが、球界の通説に一石を投じる意欲的な書
4 たくさんの野球人に読んでほしいですが・・・
5 常識を打ち破る、野球好きな教授の話に引き込まれていきました。楽しくためになる一冊でした。

内容

おもしろげな本発見。以下の記事に関する本みたいです。

野球のセオリー、実は“錯覚” 名古屋大大学院・加藤教授らデータ分析

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081220-00000078-san-base

「過去の回数より印象の強さ」

 「四球で出塁させるなら、ヒットの方がましですね。試合の流れが悪くなる」というフレーズを野球解説者はよく使う。しかし、それは根拠があることなのだろうか。行動経済学が専門の名古屋大学大学院・加藤英明教授は、神戸大学大学院准教授の山崎尚志氏とともに、05年度のセ・パ公式戦(交流戦を含む)846試合、1万5143回を分析。同年の全イニングの得点(失点)確率26・4%、得点(失点)平均0・495点と比較しながら、解説者のいう「セオリー」を検証した。

おもしろいですね。統計的にどんくらい妥当なのかはよくわかりませんけども、こういう試みは面白いなと思います。著書では、以下のようなことを調べているようです。

●延長戦は後攻が有利?

●ラッキーセブンに点は入りやすい?

●ホームランやエラーは流れを変える?

●「チャンスの後にピンチあり」は本当?

●盗塁は有効な戦術か?

●送りバントは意味がある?

一度読んでみたいな。こういうのを見ると、自分でもデータ取って検証したいという気になりますね。例えば、少年野球とかのコーチになったら、いろいろデータをとっておくわけですよ。そんで夜な夜なSPSSで統計的な分析をかける(笑)こんな少年野球のコーチいたらちょっとうけますね。

ただ、こういうデータをとった結果によって、「いままでこう言われていたけど、データによるとうそだった!」というのはちょっとそれはそれでほんとかなという気もします。みんなが感じ取っている「なにか」というのがやっぱりあるわけで、その「なにか」を知りたいというのも同時にあるんですよね。

どういうことかというと、たしかにヒット打たれるよりも、フォアボールでノーアウトのランナーでるのは、守っていていやなんですよ。得点が入るかどうかというのはわからないのだけども、「いや」なのはたしかなのです。このへんの実践者が感じる「予感」みたいなものと、サイエンスの力というのはうまく折り合わせながらやると面白いよなと思います。

サイエンスだけでも、予感だけでもない、その間っていうのはなんなんでしょうかと思う今日この頃です。

  • SPSSとは

SPSSは統計パッケージソフトの代表的な製品であり、SASと並んで高いシェアを誇る。SPSS はシカゴ大学で開発された。最近ではStataもシェアをのばしている。特に医歯薬看護分野で用いられることが多い。

当初は Statistical Package for the Social Sciences (社会科学のための統計パッケージ)の略とされていたが、現在は単なる SPSSが 正式名称。

PC 版は、SAS と異なり、売りきりである。

http://ja.wikipedia.org/wiki/SPSS