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3/4,5に中原研究室の春合宿がおこなわれました。中原研究室の春合宿は、研究室メンバーだけではなく、研究室にゆかりのあるメンバーたちを集めて実施します。今年は約30名の方が参加しました。

この合宿全体のデザインは私が一任されたので、今回は企画者であり、参加者としてこの合宿に参加しました。今回はまず参加者としての感想をブログに書きたいと思います。主催者側としてどのようにデザインを行ったかなどについては徐々に書いていきたいと思います。

今年は「各領域の最先端を学ぶ」「研究と実践の関係を学ぶ」ということを大きなテーマとして、5つのセッションを実施しました。各セッションは1時間30分です。

1.学習科学のフロンティア(静岡大学 益川弘如先生/コーディネーター舘野泰一)
2.経営学の現在 オープン・イノベーションをテーマに(神戸大学大学院・株式会社ビジネスリサーチラボ 伊達洋駆さん/コーディネーター舘野泰一)
3.パフォーマンス・エスノグラフィー(高尾隆先生/コーディネーター苅部将大)
4.状況的学習論のフロンティア(東京都市大学 岡部大介先生/コーディネーター保田江美) 5.よい研究とはなにか?(中原研究室/コーディネーター舘野泰一)

それぞれのセッションには、中原研究室のメンバーがコーディネーターとしてかかわり、一緒にプログラムを考えました。1時間半が丸ごと講義になることはなく、必ず体験セッションが入っています。

今回のプログラムの面白いところは、さまざまな「理論的バックグラウンド」をもった人たちがそれぞれの理論の説明と、具体的にどのようなかたちで分析をしたり、表現をするのかについて体験できた点です。これによって、それぞれの立場についてよく理解ができましたし、自分の研究スタンスについても相対化することができました。また、具体的なデータや体験をもとにセッションが組み立てられていたので「この理論体系だと、具体的にこうやって分析する」といったイメージが湧いたのも収穫でした。

おそらく今回話題提供して頂いた方がひとつの学会に集合するということはないと思います。また、仮に同じ学会で発表があったとしても、きっと「同じ時間帯のセッション」に入ってしまい、それぞれの人たちが交流する機会はあまりないのではないかと思います。

今回はそうした先生方が同じ場所にいることで、普段は見られないディスカッションも見られましたし、自分の立ち位置を理解できたということが大変大きな収穫のひとつでした。

もうひとつ今回の合宿で面白かったのは「研究とは何か」「研究者として研究や実践とどのようにかかわって生きるのか」という大きな問いについて考えられたことです。

これは伊達さんと実施したセッションの中で「研究者としてのビジネスモデルを考える」というワークをしたり、「よい研究とは何か?」を考えるセッションを実施したことがメタに捉えるきっかけになりました。そして、メタな視点をもって益川先生、高尾先生、岡部先生のセッションをみてみると、それぞれの立場による研究者の生き方、研究と実践との関わり方、問いの立て方の特徴が見えてくるというかんじがしました。

普段の研究生活では、おそらく
(1)ひとつの理論系を前提にして研究を捉える
(2)その理論系をもとにした研究方法論を学ぶ
ということが多いのかなと思います。

しかし、今回の春合宿では、もう少しメタな意味での「研究とは何か」ということを深めたり、「なぜ、その分野ではそういった方法論を使うのか」という部分について理解が深まったような気がしました。

以上の点を踏まえて、今回の合宿を通じて強く思ったのは「自分の研究のビジネスモデルのようなもの」をアップデートしなくてはいけないなという点でした。ビジネスモデルというのはマネタイズすることのみを指しているわけではありません。

・自分はどのような問いを追い続けたいのか?
・そのためにはどのような現場が必要なのか?そしてその現場をどのように見つけるのか?
・研究成果をどのように発表するのか
・研究成果をもとにどのように実践に還元するのか?
・研究を通じてどのようにその領域や後輩の育成をしていくのか?
・こうしたことをできるために必要なお金はいくらで、どうやって調達するべきなのか?

などなどを、うまく循環するようなスタイルをもっと洗練させていく必要があるなということを強く感じました。

いま現在ももちろんそれらを意識して研究をしたり、ワークショップなどの実践活動を行っています。しかし、現時点の自分のスタイルはまだまだ「粗すぎる」ということをあらためて思いました。

その「粗さ」をイメージで表現すると「ものすごくいい流れの水流があるのに、それを受けきる受け皿がものすごく小さくて、水がいっぱい落ちている」とか「全然水が流れていないところに、大きなバケツで待ち構えている」みたいなかんじですね。つまり、研究と実践の関係みたいものを水の流れに例えると、まだまだ力任せに水を流しているだけで、全然効率よく、それらが循環していないのだなということを痛感しました。

もちろんこのモデルというのは、時期によって修正していく必要がありますし、ひとつ完成したらおしまいというものではないでしょう。ただ、ぼくもそろそろ20代が終わり、独り立ちをしていかなくてはと思うと、この問いと正面から向き合う必要があるのだろうなということを強く思いました。

まだまだ考えたことがあるのですが、今回はここで切ろうと思います。次は合宿をデザインする視点から書くかもしれません。

■関連する本

EnCamp2013に参加してくださった先生方の本をたくさん紹介したいのですが、増えてしまうのでひとつずつ紹介していきたいと思います。今回は益川先生に関連する本をご紹介です。ぼくもまだ買っていなかったのでAmazonでポチりました。

デジタル社会の学びのかたち: 教育とテクノロジの再考
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