月別アーカイブ: 2012年8月

「アウトプットへの恐怖感」をどう考えるか?

最近考えていることの一つに「アウトプットへの恐怖感」ということがあります。
もうちょっと具体的にいうと「人はアウトプットをするときに、自分の実力以上に恐怖感や不安感を感じていないか?」ということを考えています。
例えば、「書くこと」について。
「書くのが苦手をみきわめる」という本の中には、「大学生が、自分のレポートを実際書けているクオリティより低く見積もる傾向があるのではないか」ということが書かれています。
実際よりも過小に評価してしまうということですね。

この他にも例えば「英語」について。
英語を話したり、書くときに必要以上に不安な気持ちを感じたり、能力の過小評価をしていませんか?
でも実際やってみると、意外に伝わったり、そんなに気にしすぎないでいいのにと言われたりすることもあるのではないでしょうか。
これもなぜか必要以上に不安を感じている例だと思います。
これらを踏まえて最近考えているのは、
・なぜ私たちは必要以上に不安を感じたり、自信がないのか?
・不安を低減することはできないのか?
ということです。
色々考えてはいますが、いまのところ僕が明確な答えをもっているわけではありません。
心理学的には、マインドセットの話や、自己効力感とかの話になるでしょうかね。
これまで以上にアウトプット型の教育が求められる中で、こうした不安感への対処は大事な視点だと思っています。
「ワークショップ」という手法に注目が集まる背景にはこうした点もあるでしょう。よい意味でのアウトプットへの安心感をつくるということですよね。
組織で新たなアイデアを出すためにも「心理的安全」はひとつの要素になると聞きます。
もちろん当然「緊張感」だったり、「不安感」というのは完全な悪ではなく、適度にあるに越したことはありません。
それらがクオリティを押し上げる部分も確実にあるのですが、適度なラインはどうやって作れるのだろうかということを最近よく考えています。
なぜなら、アウトプット型の教育は「トライ&エラー(試して、失敗して)」や「PDCAのサイクル」を回すことがひとつの成功の条件になります。それができないと期待した効果が得られないわけです。
ではできない人は何がだめなのか?私は「サイクルの回し方がわからない」のではなく、「知っているけど怖い、失敗したくない」みたいなことの方が意外に多いような気がするんですね。技術やスキルだけでなく、感情的な側面も大きいのではないかということです。
もちろんこれは僕の感想ですけどね。
アウトプットへの恐怖感や安心感についてあなたはどう思いますか?
なにか感想があったら教えてくださいね。
■関連書籍
失敗をおそれずに挑戦できる人とそうでない人の「考え方の違い」に言及したものとして、この本はとてもおすすめです。

この本に書かれている内容を生かした「コメントシート」をゼミで導入してつかっています。詳細はこちらの記事に書いてありますので興味のある方はご覧下さいませ。
今年ゼミに導入した「研究室メンバーの内省を促す」3つの仕組み

iPadや3DSのカメラ機能をつかいこなす人たち:機能の組み合わせから生まれる付加価値

突然ですが、あなたは写真を何を使って撮りますか?
携帯?それともデジカメ?
以前はほとんどそのどちらかだったのではないでしょうか。
しかし、最近よく「iPad」や「ニンテンドー3DS」で写真を撮る人を多く見かけるようになりました。
例えば、こんな使い方。
■ セミナーに参加中、必要なスライドの写真等を「iPad」で撮る

セミナー等で、話を聞きながらiPadに手書きやタイピングでメモをし、大事なスライドがでてきたり、グループワークで使ったメモなどを手元に残したいときは、そのままiPadの写真機能でパシャリととってあわせて保存するという使い方です。
先日参加したフォーラムでも何人かそういう使い方をしている人を見ました。
たしかにこの方法ならば、いちいち「メモはパソコン」「写真はデジカメ」みたいに別々のものをつかわないで済みますし、データもひとつにまとまります。とても便利そうです。
この使い方は年齢的には30代からそれ以上の方が多いような気がします。
■ 子どもたちが気軽に「ニンテンドー3DS」で写真を撮る
ニンテンドー3DSの方をメインでつかっているのは子どもたちです。
イメージ的には僕たちが携帯でちょっと写真を撮りたいなと思う感覚のときに、3DSでパチリというかんじですね。
例えば、先日ある水族館に行ったのですが、子どもたちはみんなDSをだしていました。「なぜ水族館でDS?」と思いきや、みんなDSで好きな魚などの写真を撮っているんですね。
これはとても新鮮でした。
■ 既存の機能も組み合わせることで価値がでる?
正直は僕はこれまで、
・iPadにカメラ機能っているかな?iPadで写真撮るケースなんてなくない。
・3DSにカメラ機能っているかな?だれがどういうときに使うの。
と思っていました。
しかし、どちらも使っている場面・人を見ると、非常に納得がいきます。たしかに、全てのメモが一緒に出来るのは便利だし、携帯もデジカメも持っていない子どもたちからすれば自分のDSで好きな写真が撮れるのはとても楽しい経験だと思います。
よく言われることかもしれませんが、既存の機能でも、組み合わせや場面をうまく考えると、まだまだ新しい経験を生み出すことができそうですね。
ちなみに僕はiPadが欲しくなりました(笑)こんな使い方しているよというのがあったら教えてくださいね。
■ 関連する商品
ちなみに僕は写真を撮るときは、iPhoneもしくは最近買ったいわゆるミラーレス一眼であるNikon1です。とても気に入って使っています。

でもたしかにこれはイベントの写真を撮ったりするのにはいいけれど、「セミナーとかでちょっとメモ」にはオーバースペックですし、iPhoneだとちょっと小さいしファイルの移動がめんどうですよね。その意味でiPadのカメラというのは絶妙にすきまを埋めているのかもしれませんね。面白いですね。

大学生研究フォーラム2012に参加してきました!(グローバルキャリアの時代に大学教育は何ができるか)

昨日京都大学で開催された「大学生研究フォーラム2012」に参加してきました。今回のテーマは「グローバルキャリアの時代に大学教育は何ができるか」です。

今回のイベントでは現在中原研究室のメンバー(中原先生、木村君、保田さん、舘野)で取り組んでいる調査研究について、その中間報告を中原先生が代表してプレゼンテーションしました。写真は発表の様子です(木村君撮影)。

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この研究は、京都大学の溝上慎一先生らとともに取り組んでいる共同研究の成果の一部です。

発表テーマは「最近の若者は「内向き」か?海外就労意欲に影響を与える要因の探究」という内容でした。

「ほんとに若者は内向きなの?」ということを切り口に、グローバル人材について色々と言われている言説について、ひとつひとつデータから検証するというスタイルで発表を行いました。

今回のフォーラムでは、私たちの発表以外に

・溝上慎一先生によるご発表(高校や大学1・2年生にときの初期のキャリアに対する見通しの話)
・福田公子先生によるご発表(「生物学自主研究?『研究』を通して学部学生が能動的な社会的力をつける試み?」)
・勝又美智雄先生によるご発表(国際教養大学の試み「学生の国際協商力を高めるための教育・学習」)
・林雅子さんによるご発表(アサヒビール株式会社様の試み「グローバル戦略に呼応した人材開発のあり方」)

などがありました。

その発表を踏まえて、総括パネルディスカッションでは以下の先生方がコメントを行いました。

司会:松下佳代先生(京都大学高等教育研究開発推進センター)
児美川孝一郎先生(法政大学キャリアデザイン学部)
吉見俊哉先生(東京大学大学総合教育研究センター)
大塚雄作先生(京都大学高等教育研究開発推進センター)

どの発表も初めて聞くものが多く、新鮮に話を聞くことができました。

ただ「グローバル人材を育成するってどういうことなのか?」については、「うーん」というかんじで色々悩んでしまうなと思いました。

その悩みについてはいくつかフォーラム中にツイートを行いました。例えばこれです。

「結局、大学教育で育成する能力が「最低限ここまで身につけて」の話なのか、「付加価値」としての能力の話なのかがよくわからないのが、ややこしいのかも。」

グローバル人材の話に限らないのですが「こういう力が必要だ」という話になったときに、それが「ミニマムの目標」なのか「付加価値」とか「イケてる人の目標」なのかがわからなくなるなあと思いました。

グローバルキャリアというのを、ある意味で「トップ層ががんがん活躍する」という文脈に位置づけて議論するのか、「グローバル化は、全員避けられない状況にある。そんな状況下で全員が最低限やるべきことはなんなのか?」を議論する場なのかがよくわからなくなるんですね。

議論の中で「エリート」「ノンエリート」という言葉などがでてきましたが、結局のところ大学教育を語るときに、「大学」を一様に語ることは難しく、「それだれを対象に考えているの?」みたいな議論になるのかなあと思いました。

もうひとつ思ったのは、「グローバル化」ということがある意味で言えば価値の多様化・多元化ということなのであれば、必要とされている能力やゴールも多様化・多元化してもいいんじゃないのかなというのも思いました。

もちろん「全員に共通する力はなんなのか?」を問うことは必要だと思うのですが、多様化・複雑化しているのに、それらに共通する普遍的能力をつけようということになると、とても抽象的な能力かつ「あれもこれも」になっちゃうんじゃないかなとも思いました。

まあ難しいですね。

整理するなら「最低限必要な力はこれ」ということと「ゴールとしてはいろんなタイプがあるよ(例えば、専門型、職人型とか)」というのを分けて考えるということなのかもしれませんが、このあたりはちょっとまだよくわからないまま書いています。

ということで、今回はよい意味でモヤモヤが残るイベントとなりました。

結局は「グローバルに活躍する人材をどう育てるか」というより「グローバル化の進展がどんどん進む中で、大学教育どうするの?」という問いの方がしっくりくるのかもしれません。

大学に対していろんなことがあれやこれやと言われますが、いきなり右往左往するのではなく、大学がその強みを生かしながら、何を変えて何を変えないかということを、ある意味で腰を据えながら、丹念に考え抜くしかないのだよなあとあらためて思いました。

大学はこれからどうあるべきでしょうかね。
何ができて、何ができないのでしょう。

よろしければご意見ぜひ聞かせて下さいね。

■参考リンク

発表内容については、中原先生のブログに紹介されているので詳しくはそちらをご参照下さい。

大学生研究フォーラム2012が終わった!:グローバル時代の大学生のキャリア、能力開発
http://www.nakahara-lab.net/blog/2012/08/2012_1.html

また、当日の議論については京都外大の村上先生がツイートをまとめてくださいました。
こちらをご参照下さい。

大学生研究フォーラム2012
http://togetter.com/li/358738

■参考図書

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