昨日京都大学で開催された「大学生研究フォーラム2012」に参加してきました。今回のテーマは「グローバルキャリアの時代に大学教育は何ができるか」です。

今回のイベントでは現在中原研究室のメンバー(中原先生、木村君、保田さん、舘野)で取り組んでいる調査研究について、その中間報告を中原先生が代表してプレゼンテーションしました。写真は発表の様子です(木村君撮影)。

304542_409439822449095_2062296832_n.jpeg

この研究は、京都大学の溝上慎一先生らとともに取り組んでいる共同研究の成果の一部です。

発表テーマは「最近の若者は「内向き」か?海外就労意欲に影響を与える要因の探究」という内容でした。

「ほんとに若者は内向きなの?」ということを切り口に、グローバル人材について色々と言われている言説について、ひとつひとつデータから検証するというスタイルで発表を行いました。

今回のフォーラムでは、私たちの発表以外に

・溝上慎一先生によるご発表(高校や大学1・2年生にときの初期のキャリアに対する見通しの話)
・福田公子先生によるご発表(「生物学自主研究?『研究』を通して学部学生が能動的な社会的力をつける試み?」)
・勝又美智雄先生によるご発表(国際教養大学の試み「学生の国際協商力を高めるための教育・学習」)
・林雅子さんによるご発表(アサヒビール株式会社様の試み「グローバル戦略に呼応した人材開発のあり方」)

などがありました。

その発表を踏まえて、総括パネルディスカッションでは以下の先生方がコメントを行いました。

司会:松下佳代先生(京都大学高等教育研究開発推進センター)
児美川孝一郎先生(法政大学キャリアデザイン学部)
吉見俊哉先生(東京大学大学総合教育研究センター)
大塚雄作先生(京都大学高等教育研究開発推進センター)

どの発表も初めて聞くものが多く、新鮮に話を聞くことができました。

ただ「グローバル人材を育成するってどういうことなのか?」については、「うーん」というかんじで色々悩んでしまうなと思いました。

その悩みについてはいくつかフォーラム中にツイートを行いました。例えばこれです。

「結局、大学教育で育成する能力が「最低限ここまで身につけて」の話なのか、「付加価値」としての能力の話なのかがよくわからないのが、ややこしいのかも。」

グローバル人材の話に限らないのですが「こういう力が必要だ」という話になったときに、それが「ミニマムの目標」なのか「付加価値」とか「イケてる人の目標」なのかがわからなくなるなあと思いました。

グローバルキャリアというのを、ある意味で「トップ層ががんがん活躍する」という文脈に位置づけて議論するのか、「グローバル化は、全員避けられない状況にある。そんな状況下で全員が最低限やるべきことはなんなのか?」を議論する場なのかがよくわからなくなるんですね。

議論の中で「エリート」「ノンエリート」という言葉などがでてきましたが、結局のところ大学教育を語るときに、「大学」を一様に語ることは難しく、「それだれを対象に考えているの?」みたいな議論になるのかなあと思いました。

もうひとつ思ったのは、「グローバル化」ということがある意味で言えば価値の多様化・多元化ということなのであれば、必要とされている能力やゴールも多様化・多元化してもいいんじゃないのかなというのも思いました。

もちろん「全員に共通する力はなんなのか?」を問うことは必要だと思うのですが、多様化・複雑化しているのに、それらに共通する普遍的能力をつけようということになると、とても抽象的な能力かつ「あれもこれも」になっちゃうんじゃないかなとも思いました。

まあ難しいですね。

整理するなら「最低限必要な力はこれ」ということと「ゴールとしてはいろんなタイプがあるよ(例えば、専門型、職人型とか)」というのを分けて考えるということなのかもしれませんが、このあたりはちょっとまだよくわからないまま書いています。

ということで、今回はよい意味でモヤモヤが残るイベントとなりました。

結局は「グローバルに活躍する人材をどう育てるか」というより「グローバル化の進展がどんどん進む中で、大学教育どうするの?」という問いの方がしっくりくるのかもしれません。

大学に対していろんなことがあれやこれやと言われますが、いきなり右往左往するのではなく、大学がその強みを生かしながら、何を変えて何を変えないかということを、ある意味で腰を据えながら、丹念に考え抜くしかないのだよなあとあらためて思いました。

大学はこれからどうあるべきでしょうかね。
何ができて、何ができないのでしょう。

よろしければご意見ぜひ聞かせて下さいね。

■参考リンク

発表内容については、中原先生のブログに紹介されているので詳しくはそちらをご参照下さい。

大学生研究フォーラム2012が終わった!:グローバル時代の大学生のキャリア、能力開発
http://www.nakahara-lab.net/blog/2012/08/2012_1.html

また、当日の議論については京都外大の村上先生がツイートをまとめてくださいました。
こちらをご参照下さい。

大学生研究フォーラム2012
http://togetter.com/li/358738

■参考図書

学歴革命 秋田発 国際教養大学の挑戦
中嶋 嶺雄
ベストセラーズ
売り上げランキング: 13975