月別アーカイブ: 2010年5月

「目覚めるための理由がある」 ≒ 「生き甲斐」

先日たまたまこの動画をみつけました。

この動画は、TEDカンファレンスのプレゼンテーションです。TEDの説明をwikipediaを見ながら説明すると、

TED(Technology Entertainment Design)は、アメリカのカリフォルニア州モントレーで年一回、講演会を主催しているグループのことを指します。

この講演会は、学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人物が講演を行なうことで有名です。元アメリカ大統領のビル・クリントンをはじめ、さまざまな著名な人物が講演をしています。(この講演会は、参加費が驚くほど高いことでも有名です。)

TEDのサイトにいくと、プレゼンテーションが無料で閲覧することができます。この動画もそのひとつで、日本語の字幕がついています。

今回ご紹介した動画は「ダン・ベットナー:100歳を超えて生きるには」です。

この動画では、
世界中の長寿者が元気と活力のある生活を送っている社会、「ブルームーン」を研究しているグループが、「長寿の秘訣」について話をするという動画です。

動画の中では3つの地域を紹介するのですが、その1つに「沖縄のある島」が紹介されます。

ここでは、長寿者たちが若者とかわらないくらい元気に過ごしており、その秘訣について紹介されます。

例えば、
・腹八分でご飯をたべる
・豆腐をよくたべる

といったことです。

しかし、もっと重要なことがあるとダン・ベットナーは主張します。
それが「生き甲斐(ikigai)」です。

彼は「生き甲斐(ikigai)」を、こじゃれた表現で紹介します。

原文を紹介すると以下になります。

Instead there is one word that imbues your entire life, and that word is “ikigai.” And, roughly translated, it means “the reason for which you wake up in the morning.”

後半部分を訳すると、

「生き甲斐(ikigai)」をおおざっぱに訳するならば「翌日目覚めるための理由」である。

と述べています。

アメリカでは、人生は「バリバリ働く時期」と「引退後」という2つの時期にきっぱり分かれるのだそうですが、この島には「引退」という言葉はなく、その代わりに「生き甲斐」という言葉があるということを説明します。

ここに住んでいる人たちに話を聞くと、
「翌朝目覚めるための理由」をすぐに答えてくれるそうです。
その理由はさまざまです。

・102歳の空手の導師の場合は、空手道を発展させること
・100歳の猟師にとっては家族のために週3回、魚をとってくること

このように、この島の人たちは、
生き甲斐を持って生きることで、毎日が充実し、
その結果として長寿につながっているのではないかということでした。

これはとても面白いなと思うと同時に、少し考えてしまいました。

僕には

「目覚めなくてはならない理由」(義務)

はあるけれど、

「目覚めたいと思える理由」(内発的な動機)

はほんとうにあるのかな?ということです。

これは難しいけど、なかなかいい問いかけなのではないかなと思います。

この動画には、他にも長寿の地域に共通する特徴について説明しています。また、プレゼンテーションがうまいので、見ていてとても面白いです。

こういうコンテンツが無料で見られるのはなかなかすばらしいなと思います!

みなさんもこの動画をきっかけに、少し生活を内省してみてはいかがでしょうか?

[書評]許可はあとからもらえ!クリエイティブを支える文化とは – デザイン思考が世界を変える

前回の書評に引き続きIDEO本を読みました!

本書「デザイン思考が世界を変える」は、早川書房からでているIDEO関連本の3作目になります。これまでの本との関連は、本書のあとがきに書かれていました。

早川書房のIDEO関連書としては三作目に当たるが、前二作が「いかにして恒常的にイノベーションを生み出す会社組織をつくるか」というビジネス書寄りの執筆・編集スタンスであったのに対し、今回はIDEOのノウハウが生まれた根源に立ち返り、それを思想として突き詰め、いわば「いかに人の生活を豊かにするか」とうとに答える方法を提案するようなつくりになっている。

今回の本は、ノウハウよりもむしろ、その根幹にある「考え方・思想」の部分に焦点を当てた本ということですね。

この本では「デザイン思考」という言葉がひとつ大きなテーマとなっています。

デザイン思考とはなにか?

強力で、効果的で、幅広く利用できるアプローチ。ビジネスや社会のあらゆる面に適用できるアプローチ。個人やチームが画期的なアイデアを生み出して、実行し、影響を与えられるアプローチ。このようなアプローチを提供するのが、本書のテーマである「デザイン思考」なのだ。

より具体的にいうと、以下のような特徴をもっているようです。

デザイン思考では、誰もが持ってはいるものの、従来の問題解決方法では軽視されてきた能力を利用する。デザイン思考は、人間中心であるというだけでなく、人間の本質そのものともいえる。

・直感で判断する能力
・パターンを見分ける能力
・機能性だけなく感情的な価値を持つアイデアを生み出す能力
・単語や記号以外の媒体で自分自身を発信する能力

直感、パターン、感情的価値、多様な表現方法をもつ力・・・。これらの力が非常に重要ということですね。

目次をみてみましょう。この本は2部構成になっています。前半はデザイン思考の説明、後半はこれからどこへいくのか?について語っています。

1 デザイン思考とは何か?(デザイン思考を知る–デザイン思考はスタイルの問題ではない
ニーズを需要に変える–人間を最優先に
メンタル・マトリクス–「この人たちにはプロセスというものがまるでない!」
作って考える–プロトタイプ製作のパワー ほか)

2 これからどこへ向かうのか(デザイン思考が企業に出会うとき–釣りを教える
新しい社会契約–ひとつの世界に生きる
デザイン・アクティヴィズム–グローバルな可能性を秘めたソリューションを導き出す
いま、未来をデザインする)

本の中では、いろいろぐっとくる部分はあったのですが、今回私が個人的になるほどと思ったのは「創造性を支える環境」について記述された部分です。以下に引用します。

前もって許可をもらうのではなく、あとから許可を求める方がよいとされる文化、つまり成功には報酬を与えるが、失敗しても許される文化は、新たなアイデアを生み出す際のひとつの大きな障害を取り除く。二十一世紀に必要なのは適応力とたゆみないイノベーションであるというゲイリー・ハメルの主張が正しいとうれば、創造性を「ウリ」にする組織は、それを反映・強化する環境を育む必要がある。

私がいま幸せだなと思うのは、なんとなくこうした環境にいさせてもらえるようなかんじがするからでしょうか。

いかに「デザイン思考」が大事だ!といっても、それを育む環境がなくては、むしろ個人にとってジレンマが起こることになり、結局組織にとってはマイナスにすらなりえるでしょう。こうしたことを考えたときに、この記述はかなりぐっときました。

創造性を支える思考法とは?それを支える文化とは?

本書はこれらの問いに対して、様々な示唆を与えてくれると思います。おすすめの一冊です!

▼IDEO関連本

「東大式 世界を変えるイノベーションのつくりかた」は最近出たばかりですよね。この本の書評もそのうち書こうと思います。過去に出版された「発想する会社!」「イノベーションの達人!」の2冊もオススメです。

「発想する会社!」については前回書評を書きました。

[書評]よりよいブレストをする秘訣を復習してみる 発想する会社!世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法(トム・ケリー他)
http://www.tate-lab.net/mt/2010/05/-ideo.html



[書評]よりよいブレストをする秘訣を復習してみる 発想する会社!世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法(トム・ケリー他)

本書「発想する会社!」は世界でも有名なデザイン・ファームであるIDEOが行っている「イノベーションの技法」を惜しみなく紹介してくれている本です。

実はこの本自体、ずいぶん前に読んだのですが、最近出た「デザイン思考が世界を変える」を読んだので、久しぶりに読み直してみました。こちらの書評も数日中にアップする予定です。

この本の書評は、もうすでにかなり多くの有名ブロガーさんたちが書評しているので、いまさらな感じも否定できないですが、まあよしとしてください(笑)

今回は自分の復習も兼ねて「ブレストをよりよく行うための7つの秘訣」をおさらいしてみます。
7つの秘訣はこちらのようです。

1焦点を明確にする
2.遊び心のあるルール
3.アイデアを数える
4.力を蓄積し、ジャンプする
5.場所は記憶を呼び覚ます
6.精神の筋肉をストレッチする
7.身体を使う

簡単に解説します。自分の言葉で書いているので少し本書のニュアンスと異なる部分もあるかもしれません。

1.焦点を明確にする

テーマ設定は、具体的になりすぎてきも、曖昧になりすぎてもよくないそうです。
焦点をしぼった良い問いを設定するからこそ、いいブレストになるのですね。

2.遊び心のあるルール

例えば、「アイデアの量をねらう」といった、楽しいルールを設定しすることが大事だそうです。
しかもちゃんとみんなの目の見えるところにルールを書いておくそうです。
シンプルですが大事なことですね。

3.アイデアを数える

これはつまり「質」にこだわりすぎることなく、まずは「量」を意識してみるということですね。
そもそも「量」がでているかどうかが、このブレストがうまくいっているかの尺度になるとのことです。
量にすればアイデアを可視化できますよね。

4.力を蓄積し、ジャンプする

これは司会の腕の見せ所のようです。
アイデアに詰まったら別のアイデアへ目先をかえたりすることが大事だよということですね。

5.場所は記憶を呼び覚ます

会議のプロセスは、ローテクなものにメモするのが大事とのことです。
ポストイットとかですね。
よいメモをしておくことが、結果的にアイデアを捉え直すきっかけになるとのことです。

6.精神の筋肉をストレッチする

体のストレッチも大事なのと同様に、精神(メンタル面)のウォーミングアップも大事とのことです。
言葉遊びをしてみたり、会議の前になにかの課題をしたりすることが、ブレスト自体を有意義にするのですね。

7.身体を使う

よいブレストは、言葉だけじゃないんですね。
とりあえずいろいろなものを持ってきたり、試しに作ってみたり、体で表現してみたり、視覚を使った表現をすることが大事だそうです。

ブレインストーミングという方法自体は、名前を知らない人はほとんどいないと思いますし、やったことのある人も本当に多いと思います。

しかし、本当にアイデアがでるブレストや、ブレストを日常的にやっているという人たちはそうはいないのかなと思います。

「イノベーションの技法」とはなんなのか?

これをもう一度問い直したいという方におすすめの本です。

こちらの本もいまさらあらためて書評を書きたいなと思っています。
IDEO本をいろいろ復習したいなと思う今日この頃です。

[書評]元祖 文系のためのレポート書き方本! – レポートの組み立て方(木下是雄)

本日紹介するのは、元祖レポートの書き方本といってもよい、木下是雄先生の「レポートの組み立て方」です。木下先生の本と言えば「理科系の作文技術」が有名ですよね。
今回紹介する本の方が文系よりに書かれていると思われます。

だいぶ前から持っていましたが、あらためて読み直してみると、とても発見の多い本です。

目次を見ただけでも、かなり気づきが多い本といえるんじゃないでしょうか。
本から引用してみましたが、長いので文末に載せることにします。

目次の中でも個人的にぐっときた2つのポイントについてここでは紹介します。

1.レポートを書く上で重要な心得

木下先生はレポートを書く上での心得として大きく2つを紹介しています。

(a)レポートには、調査・研究の結果わかった事実を客観的に、筋道を立ててまとめて書く。この部分がレポートの主体で、これだけで終わっていい場合もある。

(b)レポート中に書き手の意見が要求される場合には、それが(事実ではなく)意見であることがはっきりわかるように書く。意見の当否を検討できるように、意見の根拠を明示しておくことが肝要である。

これは当たり前のように見えますが、かなり重要かつ難しいポイントですよね。
例えば「事実と意見を区別する」ということは、レポートを書く際に最初はけっこう苦労するポイントなのかなと思います。

常にこの2つを頭の片隅にいれておきたいものですよね。
何事も基本が大事です。

2.だれが読むのかを意識して書くこと

木下先生は文章を書くときの「読み手意識」について詳細に言及しています。他人に読んでもらう文章では、下記の4つを常に意識することが大事とのことです。

A 誰がこれを読むのか
B 自分の書くことについて、その読み手はどれだけの予備知識があるだろうか
C その読み手はどういう目的で、何を期待してこれを読むのだろうか
D その読み手が真っ先に知りたいのは何だろうか

これまたシンプルだけども難しい!

僕はこのblog記事を書くときにちゃんとこの4つを意識できているのか!と思いました(笑)

まとめ

さて、今回紹介した「レポートの組み立て方」は古い本ですが、レポートを書く上で重要なエッセンスがかなりまとめられています。

「この本の書評を書く」という行為は、少し怖い気持ちになるくらい、自分の文章の書き方を反省させられました(笑)

やはり長く読まれている本には、それだけの理由があるというかんじでしょうか。文章の書き方について学びたい方にはおすすめの一冊です。

目次の紹介

かなり重要なエッセンスがまとまっていると思います。ざっとみるだけでも勉強になるかも!?

1.レポートの役割
1.1 レポートとは
1.2 大学生のレポート
1.3 社会人のレポート

2.事実と意見の区別
2.1 事実と意見 言語技術教育との出会い
2.2 事実とは何か 意見とは何か
2.3 事実の記述の比重

3.ペンを執る前に
3.1 レポート作成の手順
3.2 主題をきめる
3.3 目標規定文(主題文)
3.4 材料を集める
 3.4.1 頭の中にあるものを引き出す方法
 3.4.2 調査・観察・実験
 3.4.3 図書・新聞・雑誌
 3.4.4 図書館
 3.4.5 書店の利用
 3.4.6 ノートのとり方
3.5 いろいろの制約
 3.5.1 長さの指定
 3.5.2 引用について
3.6 レポートの構成
 3.6.1 表題
 3.6.2 レポートの標準的な構成
 3.6.3 起承転結について
 3.6.4 構成案のつくり方

4.レポートの文章
4.1 読み手の立場になってみる
4.2 叙述の順序
 4.2.1 重点先行
 4.2.2 新聞記事
 4.2.3 記述・説明の順序
 4.2.4 論理展開の順序
4.3 事実の記述・意見の記述
 4.3.1 事実を書くには
 4.3.2 意見の記述
 4.3.3 事実と意見の書き分け
4.4 レポートの文章は明快・明確・簡潔に書け
 4.4.1 明快な文章
 4.4.2 明確な表現
 4.4.3 簡潔
4.5 パラグラフ 説明・論述文の構成単位
 4.5.1 パラグラフとは何か
 4.5.2 パラグラフの構成
 4.5.3 文章の構成単位としてのパラグラフ
4.6 すらすら読める文・文章
 4.6.1 文は短く
 4.6.2 逆茂木型の文
 4.6.3 逆茂木型の文章
 4.6.4 首尾一貫しない文
 4.6.5 まぎれのない文を
 4.6.6 文は能動態で
 4.6.7 並記の方法
 4.6.8 漢語・漢字・辞書・その他
4.7 文章の評価

5.執筆メモ
5.1 原稿の書き方
 5.1.1 原稿用紙の使い方
 5.1.2 区切り記号
 5.1.3 文字の大きさ・字体・その他
5.2 出典の示し方
5.3 表と図
5.4 読み直し 修正

文献
問題の解答
索引
あとがき

[書評]「わかっちゃいるけどやめられない」を超えて! -「やめられない」心理学 不健康な習慣はなぜ心地よいのか (島井哲志)

「不健康な習慣はなぜ心地よいのか」というサブタイトルにぐっときて買ってしまいました(笑)

本書「やめられない」心理学は、ポジティブ心理学の本もお書きになっている島井哲志さんが書かれている本です。

医学博士でもあり、心理学者でもある筆者が、健康に関する習慣をどのように変えていくのかについて、わかりやすく、そして、学問的な知見に基づいて解説している本です。
具体的には「健康心理学」という、心理学の応用分野の知見を紹介しています。

健康心理学とは以下のような学問であると筆者は述べています。

健康心理学は、心理学の知識を生かして健康を実現することをめざす領域であり、さまざまな病気や事故などを予防し、健康で幸福な状態(ウェルビーイング)を実現することを目的としている。

目次をみてみましょう。健康にまつわる話が網羅的に書かれています。

第1章 わかっていてもできない健康習慣
第2章 医療のパラダイムと変化の必要性
第3章 習慣を変えるための心理学
第4章 食の健康心理学
第5章 ストレスはたまらない
第6章 こころと健康状態
第7章 病気の心理と行動
第8章 健康な社会づくりをめざして

本書を読むと最初にいきなり読者への問いかけがあります。以下の7つが当てはまるかというものです。みなさんはどうですか?

1.週に一回から二回以上、定期的に運動している
2.毎朝、朝食をとっている
3.間食はほとんどしない
4.タバコは吸わない
5.一日平均7〜8時間の睡眠をとっている
6.自分の体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割ったBMI値が18.5以上25未満
7.週二日の休肝日を守っている

本書によると、ブレスロー博士らが、7000人を約10年間、追跡調査した結果、ほかの条件がまったく同じでも、この7つを維持できている人は病気にかかりにくいことがわかったそうです。また、あらゆる原因の死亡率も低いらしいのです。

うーん、なるほど。みなさんはどうでしょうかね。

じゃあこれで「やばい!」となったときに、どう習慣をかえるのかっていうことを、後半で書いています。

「習慣をかえるためにどうしたらいいのか?」について1つ話を紹介しましょう。
ポイントは「変えやすい習慣から変えればよい」そうです。以下に本文を引用しましょう。

自分の習慣を変えたいときに、効果的に変えるにはどうすればよいか。答えは単純だ。変えやすい習慣からかえればよい。
では、変えやすい習慣とは何か。まずいえるのは、変える前と後にそれほど大きな違いがない習慣が変えやすい、ということである。つまり、一度に大幅に変えなければよい。短期的に実現しやすい目標をもって少しずつ習慣を変え、そして目標に近づいていけばよい。

なるほど。いきなり大きな目標をたてないほうがよいのですね。

本書では、これ以外にも、こうした対処法を学習心理学の知見などを用いて紹介しています。

「最近健康がちょっと・・・・」

とか

「習慣をかえるための心理学って!?」

とか

こうしたことを思った方にはおすすめの一冊といえそうです。

「健康心理学」とか「ポジティブ心理学」とかなかなか面白い分野ですね。
これからもこのあたりの領域の本をご紹介できればと思います。

▼参考図書

人勢塾については、書評を書きましたのでこちらもどうぞ!
[書評]人のポジティブな側面に注目する!- 人勢塾(金井 壽宏)
http://www.tate-lab.net/mt/2010/05/–1.html

[書評]人のポジティブな側面に注目する!- 人勢塾(金井 壽宏)

金井 壽宏先生の「人勢塾」を読みました!
「人勢塾」は「ポジティブ心理学を組織に応用するための研究会」とのことです。
この本は、その研究会のレクチャーを再録し、加筆したものです。

ポジティブ心理学という言葉になじみがなくても、以下のキーワードにぐっとくる方にはおすすめできる本かなと思います。
「ストレングスファインダー」や「フロー」、「学習性無気力」、「マズロー」 etc…

僕自身「ポジティブ心理学」については学びたいと思いつつも、どうも手が出せていなかったのですが、この本はすごく読みやすく、ポジティブ心理学について理解するためにとてもとっつきやすい本なのかなと思いました。

目次を見れば分かる通り、取り扱う内容は幅広いです。
毎回ゲストを呼び、ゲストの人とともにトピックについて考えていきます。

序章 人勢塾への道–ポジティブ心理学を組織・人事に実践的に応用するために
第1章 ポジティブ心理学
第2章 「感謝」が社内を変えていく
第3章 「強み」を生かした組織づくり
第4章 「フロー経験」を知る
第5章 ピーク経験と自己実現
第6章 HRから組織を変える
第7章 逆境を乗り越える力
第8章 その後の人勢塾
巻末付録 「人勢塾」事前シラバス抜粋

個人的にこの本を読んで面白いと思ったポイントは、「ポジティブ心理学」の中心人物であるセリグマンさんが、元々は悲観主義や無力感の研究をしていたという点でした。

実は、楽観主義や幸せをテーマとするポジティブ心理学の中心的な創始者マーティン・セリグマンは、もともとは悲観主義や無力感、抑鬱の研究者として名高い人であった。

ちょっとびっくりしますよね。元々セリグマンさんは「学習性無力感(learned helplessness)」といった話を研究していました。どういう話かは本書に簡潔にまとまっているので引用します。(太字や下線は舘野が追加)

簡単にいうと、イヌをどうやっても逃れることができないような状況に置き、電気ショックを与える。そうやって、イヌに「動き回っても絶対に逃げられない」という経験をさせます。その後、この経験をしたイヌたちを、今度は、特定の行動をすれば電気ショックから逃げられるという状況に置いてやります。すると、約30%は逃げることを学習しますが、残りの70%は、まったく逃げることがありません。逃げれば痛みに遭わないことがわかっていても、逃げずに痛みに耐えて、おとなしくショックを受け続けるような状態になってしまう。つまり、何をしても無駄だと「絶望」学習してしまうわけです。

こんな研究をしていたセリグマンさんがなぜポジティブ心理学をはじめたのか?その1つの理由としては、「絶望」を学習することができるならば、「楽観」(自分は無力じゃない!)も学習することができるんじゃないかと思ったそうなんですね。そこで、「学習性楽観(learned optimism)」という話がでてきます。

楽観主義とは、学習された無力感という悲観主義と逆に、もしうまくいかなくても、「今だけ」「これをやっているときのみ」「他のみんなも」うまくいっていないと因果帰属させるような説明スタイルをとる人の特徴としてとらえられる。

こうした発想をもとに、実際にこうした考え方を学ぶためのプログラムなども実施しているそうです。面白いですよね。詳しくは本書をご参照下さい。

この本が入門書としていいと思うのは、とっつきやすいだけではなく、話の中でさまざまな本が紹介されている点です。

もっと詳しく知りたい場合になにを読めばいいのかがわかりやすいです。その意味でも手元にあると重宝しそうです。

人のポジティブな側面に注目したい!

と思っている方は、このへんのことを勉強してみるとさらに面白いことができるかもしれないなと思いました。おすすめです。

▼参考図書

・ポジティブ心理学をさらに詳しく知りたい方へ。

・ストレングスファインダーをまだやっていない方はこちらをぜひ!自分の5つの強みがわかります!

・フロー理論について知りたいかたはこちら。本書にもちょっとでてきます。

▼参考情報

ポジティブ心理学
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%82%B8%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6

NAKAHARA-LAB.NET 「人勢塾:ポジティブ心理学が人と組織を鍛える」を読んだ!
http://www.nakahara-lab.net/blog/2010/04/post_1674.html

[書評]「する」生き方から「しない生き方」へ – 努力しない生き方(桜井章一)

本書は桜井章一さんによる「生き方・考え方」に関する本です。桜井さんは麻雀の世界で、20年間無敗という驚異的な伝説を持っている方です。

一見ものすごくストイックに見えるのに「努力しない」なんて、なんで!?

そんな気持ちで思わず購入していまいました(笑)タイトルもすごくキャッチーですね。

目次を見てみればわかる通り、さまざまな観点から「○○しない」ということについて語っています。おそらく目次を見るだけでも、「ああ、私のことかも・・・」と思うものもあるんじゃないかなと思います。

第1章 「努力しない」から、いい結果になる(努力しない–力が入ったら疑え
持たない–持つほどに不自由になる ほか)

第2章 「何もない」から、満たされる(満たさない–「何もない状態」は豊かである
才能を磨かない–「生きる」という才能があれば十分だ ほか)

第3章 「求めない」から、上手くいく(求めない–求めると願いはかなわない
目標を前に置かない–目標は横に置くといい ほか)

第4章 「つくらない」から、いいものが生まれる(つくらない–つくると嘘が入る
「裏のない人間」にならない–表だけで生きるとおかしくなる ほか)

第5章 「計算しない」から、負けない(計算しない–計算しないほうが勝つ
テクニックに頼らない–テクニックだけだと行き詰まる ほか)

「努力しない生き方」というのは「なにもしないで寝て過ごす生き方」ではありません。

桜井さんの言葉を使うのであれば「努力」ではなく「工夫」が大事であるということなのですが、よりよく生きるための工夫の仕方の本といってもよいかもしれません。

この本からは「努力する=ストイック」というわけではなく、「努力しないストイックさ」を感じます。例えば、以下に本文を少し引用させていただきます。第三章の「求めない」の部分です。

 自分から強く求めないのは、ふだんからやるべきことをしっかりやっていれば、おのずと何らかの形となり、それなりの結果が導かれるという思いが根底にあるからである。
 自分の中に何かあるとすれば、せいぜい、こうなったらいいかなぐらいのうっすらとした思いである。一瞬思ったら、その後は忘れてしまうような薄い思いである。しかし、そんな感覚でいたほうが強く求めるより、いい結果をもたらすのだ。
 それと同時に私が何事も強くもとめないのは、そんな強い願望にはその先にどんな崇高な目標や夢があってもどこか卑しさを感じるからだ。夢という言葉はきれいな響きがあるが、夢だって求め方によっては卑しくなるのである。

どうでしょうか。「努力しないでゆるふわで生きようぜー」みたいなかんじではなく、「努力しないストイックさ」が伝わってはきませんか(笑)

人は思わずなにかをやるときに、結果ばかりを気にしてしまったり、そのせいで苦しんだり、さらには結局結果がでないということになりがちです。

「こんなにつらい思いをしているのになんで・・・」

という気持ちになることも多いのではないでしょうか。

そんなときに本書を読んでみることで、少し肩の力を抜くことができ、「努力する生き方」から「工夫する生き方」へと変化していくのかもしれないなと思いました。

▼関連する本

島田紳助さんの「自己プロデュース力」にも共通する点があるなと思いました。島田さんはこの本の冒頭で「努力の仕方を教えます」ということを述べています。それは、島田さんが若手の芸人たちの稽古している様子をみて、違和感を感じることがあるからだそうです。つまり、「努力の仕方」が間違っていると思うらしいんですね。きっとそれは、桜井さんが言いたいことともつながるのではないかと思います。

[書評]自分だけの教科書をつくること! 自己プロデュース力(島田紳助)
http://www.tate-lab.net/mt/2010/05/post-178.html

仕事の仕方の本でいえば、こちらも発想は似ているのかなと思います。この本は小飼弾さんのblogでも紹介され、かなり評判になった本ですよね。僕も買いました。最近文庫になったので、購入しやすくなりましたね。

[書評]人を動かすストーリーの作り方! -「共感」で人を動かす話し方(菅原 美千子)

「ロジックだけでは思いはつたわらない!」という副題通り、ストーリーを使って人を話し方について書かれた本です。

冒頭にこんなことが書かれています。

 人を動かす優れたリーダーは、仕事の事務能力やスキルの面で優秀なのはもちろんですが、部下や周囲との信頼関係を築く能力が非常に優れているという事実でした。
 信頼関係を築くためには、「相手に共感する」能力と同時に、「相手を共感させる」能力が重要だということもわかりました。
 それはなかなか話が通じない人にも理解しやすい、「共通言語」への転換装置として、強力な武器になるのです。

なるほど。たしかに最近、ロジカル系だけではなく、「共感」「ストーリー」という言葉もよく聞きますよね。

本書の目次を見ればわかりますが、なぜ共感が大事かということをのべ、それをどうつくるのかという方法を2章以降で述べていきます。

第1章 人を動かす3つの条件(どんなに正しい理屈を並べても人は動かない
人を動かす3つの条件 ほか)

第2章 共感をつくり出す「ストーリー」(ストーリーで語る4大メリット
ストーリーには王道の基本型がある ほか)

第3章 共感を生み出す「プレゼンス」(人は「信頼」があって初めて「共感」する
プレゼンスを磨けば、おのずと信頼を得られる ほか)

第4章 共感をつかむ「会話反射神経」(今、目の前にあるものを表現できますか?
アドリブは思いつきでは話せない ほか)

第5章 「共感」で人を動かす話し方(「人を動かす」際に陥りやすい5つの落とし穴
ウォーキング・マネジメントのすすめ ほか)

僕が面白かったのは2章に書かれている具体的な「ストーリーの作り方」です。詳しくは本書を読んでもらうとして、大枠をここで紹介したいと思います。作り方は5つのステップです。

STEP1 ストーリーを掘り起こす
ストーリーを掘り起こすためには、自分の感情の動きをグラフに表してみるという作業をします。まずは自分の中の材料を掘り起こすイメージですね。

STEP2 ストーリーを選択する
次に、その材料の中から自分にとって転機になったようなストーリーを選択します。

STEP3 タイトルをつける
自分の経験にタイトルをつけます。タイトルをつけることで、方向性が見えてきます。

STEP4 ストーリーを組み立てる
経験に対する「解釈」と「意味づけ」をします。ここはかなり大事なポイントですね。

STEP5 ストーリーを声に出して読み、練習する
聞き手の立場になって練習してみます。

「ストーリーで話すことが大事!」と言われても、なかなかストーリーを作るのは難しいですよね。

最初はこういう枠組みを利用してみると、ストーリーを語るときのコツみたいなものが見えてくるんじゃないかと思います。

ストーリーが大事と言われても、どうもよく分からないんだよなあという方にはおすすめの一冊かもと思います。

▼関連文献

[書評]自分だけの教科書をつくること! 自己プロデュース力(島田紳助)

島田紳助さんが「自分がどのようにして売れたのか」という成功の秘訣を語った本です。これは本がオリジナルではなく、DVD「紳竜の研究」の一部を書き起こしたものということです。

Amazonを見ると、この本の評価はそれほどではないのですが、低くつけている人は「DVDのほうがよかった!」という感想を書いているように思います。僕は本だけでも面白いと思ったので、DVDが見たくなりました(笑)

とにかく面白いです。マーケティング的視点というか、「売れる方法を研究している!」という点がかなり勉強になります。

売れているものは何かを分析し、社会で求められているもの、自分の強みを理解しながら、売れるための努力を続けていく。

「個人で生きていく!」ということを考えている人にとっては、かなり学べることがあるのかなと思います。

目次は以下となっています。これは一部ですね。

「努力の方法」を教えます
まずは「自分だけの教科書」をつくる
「ボケカス!お前らが間違ってる!」
結果さえ出せれば「生意気」でいられる
「本当の客」を見極める
「X+Y」の公式の確立
「技術派」と「感情派」
同じことをやっても絶対勝てない
「島田洋七」というシステムをパクる
直球がダメなら変化球で〔ほか〕

僕が個人的に面白いなと思ったのは「自分だけの教科書をつくる」という話です。

紳助さんはお笑いを始めたときに、「売れている漫才」を研究し尽くしたそうなんですね。面白いと思う漫才を録音し、全て文字に書き起こしてみる。そういうことを続けていると、だんだん共通する特徴がわかってくる。

こういうことを地道に続けながら、「どうやったら売れるか!?」というお笑いの教科書を自分で作り、それをもとに練習したり、ネタを作ったりしたという話でした。

これはすごく面白いと思いました。

丹念に丹念に分析をし、自分なりの教科書をつくっていく。

これを読んで僕も「自分なりの研究を進める上での教科書」を作ろうと思いました(笑)

「個人で生きていくこと」が求められつつある時代が少しずつ迫っているような気がしています。
そんな時代を生き抜くひとつのヒントになるのかもなと思いました。おすすめです。

▼元となったDVDはこちらのようです

今年ゼミに導入した「研究室メンバーの内省を促す」3つの仕組み

今回は今年中原研究室に導入した「研究室メンバーの内省を促す仕組み」についてご紹介させていただきます!

具体的には「ゼミ」における工夫です。ポイントは3つあります。

1.ゼミのコメントを促す仕組みの改善(去年使っていたコメントシートを紙からデジタルへ!)
2.発表者の内省を促す仕組みの導入!(今年から導入)
3.研究を進める上での「教訓」のデータベース化とTwitterによる配信(今年からの導入)

昨年度は、紙のコメントシートのみを使っていたのですが、今年はそのアイデアをベースに、また改革をしてみました!

今回はその3つのポイントについてご紹介させていただきます!

1.ゼミでのコメントを促す仕組みの改善(去年使っていたコメントシートを紙からデジタルへ!)

ゼミコメントシート.jpgのサムネール画像

以前このブログでも紹介したのですが、中原研究室ではゼミのときに「コメントシート」を導入しています。
このコメントシートは、発表中にメモを取り、発表が終わった後に、発表者に手渡すというスタイルで実施しています。
(昨年度のコメントシートはこのWebで配信しています。文末にリンクを貼りました)

コメントシートの大きな目的は
「ポジティブな意見を伝えよう!そしてのびのびゼミをしよう!」
ということです。

このコメントシートはキャロル・デュエックさんの「しなやかマインドセット」という発想を応用し、「プロセスに対してコメントすること」を重視しています。

昨年度はこれを一年間使っていたのですが、コメントシートが「紙」であることから以下のような問題点がありました。

・紙なので、コメント内容がコメントした人ともらった人しかわからない(共有の問題)
・紙なので、振り返るときにシートがどこにいったのかわからなくなったりする(内省の問題)

だれがどんなコメントをしているか共有できないことで、「コメントスキルの育成」につながらないということや、みんながどのようなことを考えているかがわからなくなってしまいます。また、自分が何をコメントしたのかも、紙を渡してしまうとわからなくなってしまうのですよね。

さらに、もらった方も手書きのシートはうれしいのですが、実は管理が大変だったりします。振り返るときに「どこにいったっけ・・・」となったり、紙を持ち歩かないと「いつでも見直す」ことはできません。

そこで今年は「コメントシートをWebからフォームで入力する」という形式にかえました。
システムを一から作るのは大変なのでGoogleのサービスを使って「フォーム」を作りました。
これはとても簡単ですし、便利です。

これによって以下のことができるようになりました。

・他の人がどんなコメントをしているかを参考にすることができる
・コメントは全てデータになるため、PCまたはネットにつながる環境があれば常に参照できる

やはり面白いのは「他の人のコメント」です。

・「やっぱりみんな同じところにひっかかるんだなあ」
・「ああ、こういう発想は僕にはなかったな」
・「この人、いいコメントするなあ」

というかんじがします。以前は他の人のコメントを見ることができなかったので、かなり新鮮です。
これが1つ目の改善です。

2.発表者の内省を促す仕組みの導入!(今年から導入)

内省シート-1.jpg

これは新しい試みです!
昨年度までは「コメントシート」しか導入していなかったので「聞き手がコメントする機会」は増えたのですが、「発表者がそれをどのように受け止めるか?」「次の発表にどういかすか?」の部分は特に何もしていなかったのですよね。

その問題としては「いろいろコメントをもらったたけど、次のアクションにつながらない」ということがあるのではと思います。

そこで今年はコメントシートと同様に、発表者もWeb上で「内省シート」を導入する仕組みを導入しました。こちらも同様にGoogleのサービスを使っています。

・今回の発表の出来はどうだったか
・今回の発表の準備はどうだったか
・もらったコメントの中で一番印象に残ったのはだれのどんなコメントか
・自分の次の課題は何か?(「やること」と、「その期日」を入力する)

といった項目があります。

これを入力することで、今回の発表について内省し、次になにをするのかということを明確にしていきます。
つまりこことでは、「次のアクションへつながる内省」を促すことを目的としているのです。

3.研究を進める上での「教訓」のデータベース化とTwitterによる配信(今年からの導入)

中原研究室 (nakaharalab) on Twitter.jpg

これも新しい試みです!

今年はコメントシートの項目の中に
「発表を聞いていて気づいた研究に関する教訓・気づきを入力して下さい」
という項目を設けています。

これを導入したのは以下のような理由です。

・他者の発表を聞くことによって、自分自身の学びにつなげること
・発表を他人事ではなく、自分事として捉えること
・「研究についての教訓」という共同体の知をデータベース化していくこと

ここで入力した内容は中原研究室のTwitterアカウントで配信