大学生研究フォーラム2016のまとめ(午後編)

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午後のまとめもやってみようと思います。午前のまとめはこちらです。
http://www.tate-lab.net/mt/2016/08/1555.html

お昼は立食形式だったのですが、いろいろな人とお話しすることができ非常に楽しかったです。「この人とこの人がつながっているんだ!」という色々な驚きもありました。こういうイベントは話を聞くだけでなく、こういうネットワーキングも醍醐味ですよね。

午後も村上先生の導入からスタートです。村上先生の導入は安心感があります。午後は4人の話題提供があります。

午後の発表の一人目は、須田淳先生(京都大学大学院 工学研究科・准教授)です。「午前の発表はちゃらいかんじ」とおっしゃったり、最初から面白いです笑 ただ、学びの視点の転換などお話しされているポイントは非常に本質的です。タイトルは「創造的な技術者・研究者を育てる教育-工学部・工学研究科の事例から」というものです。

「理工系って物事がきっちり決まっていて、正解は一つだけなのでは?」というのは大きな間違いだよという話からはじまります。しかし、受験勉強に毒されているからなかなか発想の転換に至らず、「解法を教えてくれ」ということになってしまうのだそうです。

実際教員が期待していることは「解法の適用」ではなく、「物理法則の感覚化」であるといいます。何かを考えるときに「これ計算しときます」と作業するだけでなくて、事前の予測をして、結果を鑑賞して、感覚化していくことが大切なのだということです。

こうした感覚を身につけるためには、基礎だけやっていても伝わらないので、夏休みなどにマインドストームなどを使ったプロジェクトを行うのだそうです。こうしたプロジェクトをすることで、基礎基本の意義がわかるというお話でした。

発表の要約するとこんなかんじなのですが、須田先生の実際の語り口はこの文章の100倍面白く、ぜひ須田先生から直接お話を聞いて欲しいなと思えるような内容でした。

二人目の発表は、明和政子(京都大学大学院 教育学研究科・教授)先生です。タイトルは「発展途上の脳とメタ認知―京都大学教育学部・教育学研究科の教育活動で大事にしていること」です。京大の教育活動の紹介からはじまります。具体的には、エビデンスベースドの教育を大切にしており、特に以下の3つのポイントが大切になります。

1.「理論」と「実践」の往還
フィールドワークを重視した教育(身体性の認知)。自分で問いを見つける。多様な価値観などを体で感じる。

2.「対話型」教育
専門ゼミナールの実施。黙っていると目立つような授業。

3.「文理融合の視点」を重視した教育(理系入試の導入)
文理融合の視点と方法論が不可欠。理系入試などもおこなっていく。

最後は脳の話です。「他者の心」を理解する2大神経ネットワークは「ミラーニューロン」と、「メンタライジング」です。それぞれ自己と他者を切り離さないものと、自己と他者を切り離してメタ理解するものになります。

機能の成熟は30歳まで続くそうです。大学生は大人が思う以上に、脳としても発展途上であるということになります。それはよい面もあるのですが、メタ認知を可能にする前頭前野の発達が、現代は遅くなっているというのもあるようです。脳の話も人の学びをする上でやはり欠かせないですね。

三人目の発表は、安藤直人(昭和電工株式会社 総務・人事部事業支援グループ マネージャー)様です。タイトルは「新入社員育成プログラムでの経験を成長につなげる取り組み」です。昭和電工さんで重視する行動特性は以下の4つです。

・達成指向性
・対人能力
・職務専門能力
・思考力

中原先生の「企業内人材育成入門」の書籍を読んで学び、「経験学習ノート」というツールを使いながら、振り返りの機会を提供したそうです。ノートとかワークシート的なかんじなものを使うというのはわかりやすいですね。

ツールを使うことの効果として3つが挙げられていました。
・仕事を進める上でのポイントをおさえられる
・専門外の能力向上に目を向けられる
・成長の度合いを把握できる

よい振り返りをするために3つを意識されているそうです。このあたりは振り返りの質をあげるtipsとして面白いですね。
・具体的に振り返る(絵にする)
・多様なバックグラウンドの仲間とゆっくり話す
・ポジティブに振り返る(リストーリー/ポジティブイット)

経験をしっかり「成長実感」につなげていくのはあらためて大切ですね。

四人目の発表は、松本 加奈子(大阪ガス株式会社 大阪ガス行動観察研究所 研究員 兼 株式会社オージス総研 行動観察リフレーム本部 主任)様です。タイトルは「行動観察のビジネスへの応用」です。

まず松本さんの自己紹介ででてきたエピソードが面白かったです。顧客が「言葉として言うこと」と「本当に思っていること」のギャップをどう捉えるか。ギャップや問題をどのように創造的に解決するかということなどを仕事でなされていたそうです。

「行動観察」は、「意識」レベルのアンケートやインタビューでわからない「無意識」のところを拾い上げていく手法であるということです。イノベーションのための「リフレーム」を行動観察から提供するかんじですね。

「ビックデータ」と「行動観察」は対比されますが、結局両方必要になるといいます。データでわかること、わからないことがあります。データでは「相関がある」というのはわかるけど、「なぜ相関があるの?」などはわかりません。

例えば、「雑誌とガムの売り上げが両方下がっているのはなぜか?」観察してみると、レジ待ちの間に「スマホ」を見ているからだということがわかります。これがデータと観察の関係を理解するひとつの例とのことでした。わかりやすいですね。

最後は帰納でも演繹でもない、アブダクションという思考形式のことについてお話がありました。アブダクションとは、蓋然的推論のことです。

例としては、シャーロックホームズが、ワトソンと出会ったときに「あなたはアフガニスタンにいっていましたね?」と当てるのですが、そのために「日焼け」「表情」「手の動き」「服装・動き」といった事実から、知識を使い、軽く解釈していくといったそんな流れを想像してもらえばよいかと思います。

データをもとに、洞察をして、展望を作っていく、そしてそのためには高いレベルで矛盾を持ちつつ、統合していくことが重要ということですね。

ということで、午後も盛りだくさんでした!まとめるのは大変でした笑

重要なキーワードを挙げると「学びの発想の転換」「基礎と応用の関係」「理論と実践の関係」「メタ認知と脳」「振り返りを習慣づけるためのツールとアクティビティ」「行動観察(現場・フィールドワーク含む)」というかんじでしょうかね。

抽象的に考えることや法則などの重要性が指摘されながらも、それと同時に「応用」や「体験」、そして「現場」の重要性が指摘されるのが面白かったです。

すごく簡単にいってしまえば、本当は両方必要なんですよね。なのに「経験か」「知識か」などの変な二者択一になってしまうのはもったいないよなとあらためて思いました。

1日通したまとめはまた別記事にしようかなと思います。

午後の発表に関連するグッズ・書籍はこんなかんじです。

まねが育むヒトの心 (岩波ジュニア新書)
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大学生研究フォーラム2016のまとめ(午前中編)

大学生研究フォーラム2016に参加しています。今回は完全に参加者なので、感想をまとめつつ参加したいと思います。

今回のテーマは「経験で終わるな、メタに上がれ!―わたしのメタラーニング宣言―」です。
http://www.dentsu-ikueikai.or.jp/transmission/forum/outline/

近年の教育方法は、経験学習的な考えがベースになっているので、結局のところ「体験前の目標設定」「フィードバック」「振り返り」をどのようにデザインするかという議論にならざるを得ないのだろうと思います。今回はそのあたりがポイントなのかなと思って参加しました。

フォーラムはまず村上正行先生の導入でスタートします。全体の流れがわかり、おだやかな雰囲気が会場にできあがったと思います。「聞く、聞く、聞く、帰る」じゃないという話は、お馴染みワードですが、中原先生ではなく、村上先生が言うとなにか違った雰囲気があってよかったです笑

一人目の講演者は、中原淳先生です。最初に経験学習の理論の紹介、次に事例、最後に経験学習の今後について話をされました。中原先生がまとめた「経験学習の理論的系譜と研究動向」についてはこちらで論文が読めます。

経験学習論をベースにした議論をすごく簡単にまとめてしまうとこんなかんじかと。

・体験が学びになるためには振り返りが必要
・振り返りを導入するワークは広まってきたけど、深い振り返りができていない
・深い振り返りのためには、問いや論理思考が重要

さらにこれを5・7・5でまとめるとこんなかんじなのかなと思います笑

振り返り ないならやろう いますぐに
適当に やるとこけるよ 振り返り
振り返り 深めるコツは 問いと思考

最後に中原先生は「経験学習バブルの危険性」についてお話しします。たしかに、教育の議論は振り子のようにふれていきます。「体験だけ大事」という反知性主義に陥る罠についてはしっかり考える必要があるだろうと思いました。

二人目の講演者は、溝上慎一先生です。溝上先生は「メタ」ということについて、認知心理学などの知見をもとに解説してくださっています。「メタ認知とは?実践知とは?」に関する学問的知見の紹介です。

キーワードをみても「推論」「概念」「省察」「批判的思考」と、よい意味で「体験」「経験」とは一見異なるようなキーワードが並びます。

体験が大事という話と、批判的思考が大事という議論はついつい二者択一の議論にもなりがちだと思うのですが、これらが両方必要になってくるというのは大切な認識だと思われます。

続いて、調査の結果を報告です。ここでは舘野の研究も色々と紹介していただきうれしかったです。

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調査結果で面白いのは「職場の能力向上」をもっとも説明するのは「批判的思考」だった(.585)という点です。これはなかなか面白い結果だと思います。プロアクティブ行動も.231とのことなので、大事であることがわかります。

最後に大学の教育方法の話で、「卒論」の重要性などが語られました。深い学びをするためには「つなぐ」ということ大事で、そのひとつにストーリー化があるというのは面白いですね。

事例のひとつとして、立教大学経営学部のBLPの話も紹介していただき感謝です。

以上が午前中のざっとしたまとめです。ぼくなりの解釈で書いているところもあるので、あくまで舘野解釈として読んでいただければと思います。

中原先生、溝上先生のプレゼンスタイルの違いも、とても面白く聞かせていただきました笑

通底しているのは、「体験」は重要でありながら、それを学びにつながるために何が必要かという話だったと思います。その際に、「メタとは何か」「振り返りとは何か」、そしてそれらをどのようにデザインするのかがポイントだったと思います。

結局のところ経験から学ぶためには「批判的思考」などの思考や推論が欠かせませんし、自分の思考のサイクルそのものを捨てる「アンラーニング」などが必要になります。「体験」を作り出すだけでなく、これらの力の必要性を認識して、これらを支援する環境をいかにつくるのかがポイントになるのかもと思います。

こんなことを考えながら午後につなげていきたいと思います。

午前に出ていた書籍の一部も紹介しておきます。

活躍する組織人の探究: 大学から企業へのトランジション
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経験からの学習-プロフェッショナルへの成長プロセス-
松尾 睦
同文舘出版
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職場学習論―仕事の学びを科学する
中原 淳
東京大学出版会
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オープンキャンパスで立教大学経営学部「リーダーシップ入門」の授業体験会をおこないました

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8/5の立教大学のオープンキャンパスで、高校生を対象にした授業体験会を実施しました。高校生には、経営学部1年生が受講する「リーダーシップ入門」の授業を体験してもらいました。参加した高校生100名を超え、大盛況でした。

授業体験の概要はこんなかんじです。

  • 立教大学経営学部が目指すリーダーシップとは?
  • 参加者自己紹介
  • リーダーシップ目標を立てる
  • ミニプロジェクト体験
  • 相互フィードバック
  • 振り返り
  • まとめ

内容的には、経営学部の1年生が入学と同時に体験するウェルカムキャンプの内容を、短い時間で体験するようなものとなっています。

「企業の課題について議論をしてプレゼンテーションをする」ことを通じて、自分なりのリーダーシップの目標を立て、行動して、フィードバックをもらい、振り返るという一連のサイクルを体験してもらいました。オープンキャンパス用に時間は短くしていますが、ほぼ大学内で実施するものと同様のプログラムを実施しました。

授業体験会の実施の主体は大学生1年生です。私はプログラムの監修を行いましたが、当日のファシリテーションの多くは、1年生がメインとなり、2年生がサポートするというという形式でおこないました。

これも立教大学経営学部の授業をリアルに体験してもらうことが目的です。「リーダーシップ入門」の授業では、教員だけが授業を進めるのでなく、一年先輩のスチューデント・アシスタント(SA)とともにおこないます。その雰囲気も含めて体験してもらうこととしました。

授業は非常によい雰囲気で実施されました。体験会のアンケートにおいても、満足度は4.83(5点満点)と、高い評価をいただきました。また、自由記述欄においても、こんな意見が見られました。

・「リーダーシップ」という言葉に対する考えがかわった
・高校の授業でもやりたい
・普段考えたことのないテーマで新鮮だった
・楽しむだけでなく力もつけたいと思った
・学校ではあまり意見をいえないけれど体験授業では言えた

「もう少し時間が欲しかった」というコメントも多かったので、来年度はもう少し時間を確保できるといいなと思っています。

今回の企画は今年はじめて実施したものです。実は実施のきっかけは教員ではなく、学生からの提案でした。経営学部の学生団体の学生が「リーダーシップ入門の授業体験会をオープンキャンパスで実施したいので、プログラム作りに協力してほしい」とぼくに声をかけてきたのです。こうやって授業外でも、リーダーシップを発揮してくれていることがとてもうれしく思います。

来年度はさらに拡大して実施していければと思っています。

ちなみに、2017年1月7日(土曜日)にも、立教大学経営学部の授業体験会を実施予定です。高校1〜3年約300名を募集予定で、詳細は近日中にウェブでも公開いたしますので楽しみにしていただければと思います。

舘野に関連するイベントはこちらのメルマガでも配信しておりますのでよろしければご登録下さいませ。もちろん無料です。

→メルマガ登録:http://goo.gl/ruHlZi

舘野の書籍もよろしければどうぞ。

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リーダーシップ教育を導入するためのリーダーシップ

「リーダーシップ教育を新たな現場に導入していく」という場合に、「学生にどのようにリーダーシップ教育をしていくのか」という方法の話をしたくなるわけですが、結局これは「リーダーシップ教育を導入しようとする人の、リーダーシップの旅のはじまり」なのだということ最近あらためて感じます。

もう少しわかりやすくいえば、「学生のリーダーシップを高める」というミッションを遂行するために、教員同士がリーダーシップを発揮し合う環境ができあがるということなのですよね。つまり、我々は一見「学生の」リーダーシップの話をしているつもりではあるものの、「私たち自身がどのようにリーダーシップを発揮するべきか」という議論をしているともいえるわけです。

そのように考えると、元々「学生にどのようなリーダーシップを身につけさせるべきか」という視点で議論している「権限がなくても発揮できるリーダーシップ」や、「リーダーシップの最小三要素:率先垂範・目標共有・同僚支援」は、導入する側の自分自身のチェックシートとしても本当は機能することになりますね。例えばこんなかんじです。

・率先垂範:リーダーシップ教育に自分自身が積極的に取り組み、やり方を他者に示す
・目標共有:学生がどのような状態になっていたらよいのかというビジョンの設定・共有をおこなう
・同僚支援:導入のハードル高いと思っている人の障害を取り除く

これはリーダーシップ教育だけにかぎらず、アクティブラーニングの手法を取り入れようとするときにも同じかもしれませんね。

・やれというあなたはやる覚悟があるのか?(率先垂範)
・そもそも私たちはどのような学生を育てようとするのか?(目標共有)
・実現のための障害はどのような点で、それをどのように除去するのか?(同僚支援)

こうしたことを意識してみると、自分自身のリーダーシップの開発につながり、ミッションの達成にも近づくのかもしれません。

私もリーダーシップ教育に携わって3年目ですが、やっていて一番感じるのは「自分自身のリーダーシップが問われている」という点です。緊張感もありますが、自分のリーダーシップを向上させるためには最高の環境でもあると感じています。

「新たな教育方法の導入」というのはなかなかハードルの高いミッションかもしれませんが、これ自体が自分自身のリーダーシップを向上させるプロジェクトなのだと思うと、また捉え方がかわってくるのではないでしょうか。

リーダーシップの最小三要素のもととなっている書籍です。

リーダーシップ・チャレンジ[原書第五版]
ジェームズ・M・クーゼス James M. Kouzes バリー・Z・ポズナー Barry Z. Posner
海と月社
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私の執筆した「アクティブトランジション」もよろしければあわせてどうぞ。

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今年の「リーダーシップ入門」の授業を振り返る:授業評価アンケートの結果から

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今年の春学期の授業が無事に終了しました。春学期に私がメインで担当している授業は「リーダーシップ入門(通称BL0)」という1年生向け授業です。この授業は経営学部の1年生約400人全員が受講するもので、18クラスに分かれ、教員18名、Student Assistant18名、Course Assistant 14名で実施します。写真は授業運営メンバーと撮ったものです。

私の役割は、授業内容の責任者(コースリーダー)なので、各クラス共通で使用するスライドを作成したり、SA・CAの採用・育成をしたりしていました。

今年で私がコースリーダーを担当して3年目となります。3年というのはひとつの節目になると思いますので、今年は例年とはまた違った緊張感を持って授業運営にかかわっていました。

今年は「未来のひな形をつくる」ということを運営チームのスローガンとして、「リーダーシッププログラムの基本形」を作り上げられるように、例年以上に大胆な内容の変更を行いました。

正直、かなりたくさんのことを変えたので、授業評価アンケートの数値などは下がることを覚悟していました。しかし、結果的に、ここ3年で一番良い結果となりました。

授業の満足度は全てのクラスの平均が4.74でした。2015年度は4.64、2014年度は4.54なので、着実にステップアップしています。他の項目についても、ほぼ全ての項目が過去最高となることができました。

もちろん、授業評価アンケートの満足度はひとつの指標にすぎません。単純に「満足度だけ」あげようと思えば、至れり尽くせりにしたりすることで達成できてしまう可能性があります。「満足度は高いが、学生の学びに本当につながっているの?」という問いも当然でてきます。

そこで、例年あわせて見ているのが「学生の自発性」にかかわる部分です。「自分からフィードバックをもらいにいく」とか「クラスの雰囲気を自分からつくる」という行動をどのくらいしているのかという部分も合わせてチェックするようにしています。

例年はこの値が、他の項目に比べて低い傾向がありました。つまり「授業の満足度は高いけど、自分からがんがん動いているか」というと、そうでもないという状態でした。ただ、今年はその部分の値に改善傾向が見られたというのが大きな進歩だと思っています。

ここ3年間コースリーダーをやってきましたが、毎年基本的な部分は残しながらも、授業を大きく変えるということに挑戦してきました。毎年授業の改善点を、受講生・教員から聞き、大胆に授業内容を変え続けることができたこと自体がまずよかったと感じています。

元々この授業は、私が着任する前から評判のよい授業であり、経営学部の学生の必修授業ということもあったので、正直変えるのはリスクもたくさんありました。気持ち的にも毎年、怖さを感じながらやっている部分があります。

「うまくいっているものを変えて、評判が下がったら明らかに自分の責任じゃないか…」とふと感じることもあるのですが、周りが「変化を恐れない・変化を奨励する」という環境なので毎年挑戦できているのかなと思います。

今年もプログラムの完成度を高めることはできましたが、まだまだ大きく成長するプログラムではないかと思います。私の立教での生活も折り返しになってきましたが、さらに大胆な変化に挑戦していけるといいなと思っています。

今後は自分の研究領域であるトランジションなどとも絡めて、うまく研究としても形にしていければとも思っています。

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■授業に関連する動画

今年の授業を受けた学生のプレゼンテーション動画です。90班チーム中の、6班に残った学生たちのプレゼンテーションがどのようなものかこれを見るとわかるかと思います。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLQMyZBV6wfSu88Cc8zEKyEmhmwW9V9DIa

BLP 教員SAミーティングのご紹介
https://www.youtube.com/watch?v=eF8NA6aBkvs

アクティブラーニングの教授スキル論から、組織開発論へ:大学から企業のトランジションに向けて

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先日、立教大学経営学部のビジネスリーダーシッププログラムの授業運営を行う教員・学生約70名で一泊二日の合宿をしてきました。

合宿の意義については、行く前にブログにも書きましたが、以下の3つです。

・育成するべきリーダーシップのゴールイメージの共有
・そのための関わり方の方向性を確認
・授業ノウハウの引き継ぎ

今回の合宿では「ゴールイメージ(受講生の状態)の共有」について、「1つの授業をどうするか」ではなく「授業間のつながり」を意識して、授業改善を考えました。具体的には「授業のゴール」を「関連する次の科目のスタート時の状態」で測ろうとしたという点が挙げられます。

例えば、「1年生向け春学期の授業の成功」を、その授業内の活動やアンケートで評価するのではなく、「1年生向け秋学期の授業でどのようにふるまっているか」で考えるということをしました。

さらに「1年生向け秋学期の授業の成功」を「2年生向け春学期の授業のスタート時の状態」で考えるというかんじで、最終的には「社会に出ているときのどのような状態になっているか」についてまで考えました。

こうしたゴールイメージの共有を教職員と学生が一体となって行うことで、目指すべき方向性がぶれずにすみます。

実際に「授業でどのような関わり方をするか」については、これらのゴールイメージの共有を行った上で、最後のワークとして行いました。最初から「方法」にいかないということはけっこう重要なことではないかと思っています。

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最近こうしたワークショップを企画していて非常によく感じるのは以下の3つの重要性です。

  • 1つの授業を工夫するだけでなく、複数の授業で総合的に学生を育てていくことの重要性
  • アクティブラーニングを行える個人手法を磨くだけでなく、アクティブラーニングの組織論が重要であること
  • 大学の授業の成果をその場で評価するのではなく、その先(社会)を見据えて実施していくこと

学生を本当に育てようとしたら、「ある一つの授業だけ」で実施するのは非常に困難です。カリキュラムとして総合的に人を育てるような体制が必要になります。そうなると、必ず他の授業担当者との連携が必要になってきます。連携するためには「チームとして何を目指すべきか」を相互に理解する必要があります。

そして、内容にももちろんよりますが、学習の評価を「その場だけのもの」とするのではなく、「次の授業のスタート状態」など、ひとつ先を見据えて実施していくことが重要になります。

それの積み重ねが、大学から社会へのトランジションへと結びついていくのではないかと思います。

教える人たちひとりひとりがアクティブラーニングの知識やスキルを身につけることももちろん大切です。というか、それはある種の前提になってくるともいえるかもしれません。ただし、少人数の学生だけでなく、多くの学生に対して、総合的に、そして社会にでてからも使える知識やスキルを身につけさせるためには、どうしても上述した3つのポイントが必要になってくるのではないかと思っています。

このあたりについては、今後研究として進めていきたいところなので、論文や書籍にまとめられるといいなと思っています。

「トランジション」については、以下の書籍でも調査・考察・実践を行いましたのでよろしければご覧くださいませ。

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BLPの授業運営チームの合宿に行ってきます:その意義とは?

本日から、BLPの授業運営チーム(教職員・SAなど)の合宿にいってきます。合宿は、春夏に一度ずつ実施しています。毎回合宿の目的は異なりますが、主な目的は以下に集約されます。

・育成するべきリーダーシップのゴールイメージの共有
・そのための関わり方の方向性を確認
・授業ノウハウの引き継ぎ

要するに「組織の目指すべき方向性(ビジョン)を全員で再確認して、知識を引き継ぐ場」ということになります。短期的ではなく、中長期的なビジョンを作る場でもあります。企業でいうところの、理念共有のワークショップに近いでしょうかね。

理念共有といっても、一方的にビジョンを語る時間が全体に占める割合は少ないです。事前に何か課題について考えてきてもらい、それを共有しながら、方向性を作り上げるというイメージです。

毎年思うのですが、この合宿をやる意義は大きいと思っています。それは「大きな目的や目標」を、授業を作る側が共有していないと、すぐに組織はバラバラになってしまうからです。「目標の設定・共有」をしておかないと、細かい部分で「なぜその方法でやるの?」ということになってしまいます。

最適な「方法」は「目的」によって選択されるわけです。つまり、違う目的を設定している人とは話がかみ合ってこなくなってくるんですね。(それぞれの目的に最適な方法を選んでいると互いが思っているから)

そういったいわば「前提」となる部分を、この時期にそろえておく意味は非常に大きいように思います。

結局、教育の議論をする際に、すぐに「教育方法だけの議論」をしようとするとうまくいかないのですよね。「明日の授業のやり方どうしよう」とする前に、どこかで時間をとって「そもそもどういう人を育てたいんだっけ?」という目的のところのすりあわせて、「それならこういう方法のほうが適切かもね」としなければいけないのですが、その時間をとらずに前に進めようとするケースも多いのかなと思います。

「真の目的」や「真の問題」とは何かを問う時間を、はしょっていきなり「方法(プラン)」でなんとかしようとたいていうまくいきません。そういった時間をしっかりとる仕組みを組織の中に用意しておくことはとても重要なのかなと思います。

ということで、ここから一泊二日がんばってきたいと思います。

日本教育工学会論文誌に論文が掲載されました

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「大学での学び・生活が就職後のプロアクティブ行動に与える影響」というタイトルの論文が、日本教育工学会論文誌に掲載されました。中原淳さん、木村充さん、保田江美さん、吉村春美さん、田中聡さん、浜屋祐子さん、高崎美佐さん、溝上慎一さんとの共同研究です。

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縦断調査のデータを分析し「どのような大学生活をしていた人が、入社後に主体的な行動をしているのか」について分析を行いました。大規模調査のデータをもとに論文を書くのははじめてでしたが、論文が無事に掲載されてほっとしています。共同研究者のみなさまのおかげです。

今後も「大学と企業」を結ぶような研究・実践を行っていきたいなと思っています。

論文の成果の一部は書籍「アクティブトランジション」に掲載されています。論文にご興味ある方は書籍のほうもご覧いただけますと幸いです。

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株式会社吉野家ホールディングス代表取締役社長 河村泰貴氏と講演会を行いました

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今年の6月のことになりますが、株式会社吉野家ホールディングス代表取締役社長 河村泰貴氏に立教大学にて講演会を行っていきました。私はその司会を担当させていただきました。

株式会社吉野家ホールディングス様は、今年の「リーダーシップ入門(BL0)」の授業の協力企業になってくださっている縁で講演が実現しました。演題は「外食は未だ産業ではないー飲食業界へのあなたの価値観が変わるー」でした。

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講演は大きく、1.河村氏のキャリアに関すること、2.飲食業界の現在、の2つにわかれていました。前半のキャリア編では、河村氏が「吉野家のバイトをする」というきっかけからこの業界に入った話をしていただきました。「バイトから社長」というのは夢のような話ですが本当にあるのですね。

このお話の中から「偶然の中からキャリアの道筋が決まっていくものであること」、「どこの場でも一生懸命やることが次につながっていくこと」の2つが学生に伝わったのではないかと思います。

後半の飲食業界の現在の話では、「外食はまだ産業とはいえない」ということを現在のデータなどを踏まえてお話をされていました。

この話を聞くと、1つの企業がどうという話だけでなく、飲食業そのものの付加価値を上げていくということがかなり重要なのだということをあらためて理解することができました。

もうひとつ個人的に学んだことは、飲食業は「差別化」が難しい業界であるということです。「レシピ」や「新メニュー」というのはすぐにマネができてしまうというわけですね。そういった環境の中で、真に差別化するために何ができるか?という話は非常に参考になりました。

今回の講演会は個人的にも学ぶことがとても多かったです。「自分自身が本当にがんばりたいと思える仕事にどのように出会っていくのか」、「差別化のしにくい環境のなかで、真に差別化するために何をするべきか」という視点は、いまのぼくにとっても考える素材になるようなものでした。

立教大学経営学部でおこなっているリーダーシップとのかかわりでいうと、河村氏が講演のなかで「自分は元々外向的なほうではなく、最初は人前で話すのもの緊張していた」とおっしゃっていたのが印象的でした。

大学の授業の中で「リーダーとかリーダーシップというと、外向的な印象はあるけど、内向的だからこそ発揮できるリーダーシップがある」と言うのですが、河村氏自身からそのような話があったのは、学生にとってもよかったのではないかと思っています。今回は非常に貴重な機会をいただき、本当に感謝しています。

大学のリーダーシップに関する授業は、基本は「体験型(自分で考える)」が多いのですが、それを前提にした上で、こうした「講演型」も組み合わせると非常に効果的だなと最近感じています。

・リーダーシップの実践(体験)
・実践者の体験談(ストーリーの講演)
・リーダーシップの理論(学問面での講義)

この3つを上手にデザインするとよいのかなと最近あらためて考えてます。またこうした機会をもてればと思っています。

経営学部のウェブページにも講演の詳細が掲載されています。
http://cob.rikkyo.ac.jp/blp/3131.html

書籍「アクティブトランジション」絶賛発売中です。企業の採用・内定者教育の担当者の方々、大学のキャリア教育に携わるみなさまに特におすすめです。

書籍に掲載しているワークショップの実践情報などは、Facebookページに掲載しております。(ページのいいねも是非よろしくお願いします)

https://www.facebook.com/activetransition/

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進路指導・キャリア教育専門誌「キャリアガイダンス」にインタビューが掲載されました

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私が担当している、立教大学経営学部のビジネスリーダーシッププログラムに関する記事が「キャリアガイダンス」に掲載されました。

1年生が体験する一泊二日のウェルカムキャンプや、「リーダーシップ入門(BL0)」の授業内容が、学生のインタビューとともに掲載されています。これをみると授業の概要と、具体的にどのような学びがあるのかのイメージが湧くのではないかと思います。

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この号は『「リーダーシップ教育」で生徒が変わる』がテーマで、高校・大学のリーダーシップ教育に関する最新事例がいくつも紹介されているので、全体的にとても読み応えがあります。

記事はこちらからpdfがダウンロードできますのでご興味あればぜひご覧くださいませ。私のインタビューは「立教大学経営学部」のところからダウンロードできます。
http://souken.shingakunet.com/career_g/2016/07/vol41320167-6c8d.html

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