月別アーカイブ: 2016年11月

自分の文章に対する他者からのアドバイスをどのように受け取るべきか?

文章を書いたときに、だれかに見てもらうということはよくあると思います。むしろ、他人に見てもらう機会をしっかり持つということはとても重要です。

ただ、他人にみてもらってコメントをもらったときに、その全てのコメントを言われるがまま直してしまうと問題が起こることも多いです。そもそもコメントが的外れの可能性もありますし、ついつい「他人任せ」になってしまいがちになってしまいます。

「こう直したらいいんじゃないの?」というコメントは、あくまでひとつの意見であり、それを受け入れるかどうかというのは、自分の責任を持って判断する必要があります。

先日村上春樹さんの「職業としての小説家」という本を読んでいたときにも似たような話がでていました。自分が「あわない」と感じている編集者から、「ここをこうした方がよい」と指摘されたときに、村上さんがどう対応したかという話です。

結果からいうと、「短くした方がいい」と言われたものは「長く」、「長くした方がよい」といわれたものは「短くした」とのことです笑(p.166)

このエピソードは「他人の意見は必要ない」ということを表したものではありません。他人の意見は重要ではあるのですが、それを鵜呑みにするのがよいわけではないということを表しています。

「どう直すか」はさておき、「読んだ人が違和感を感じた」ということは事実です。その違和感の意図を推測しながら、自分で考えて何度も何度も書き直していくことが大事ということでした。

このエピソードは個人的にとてもささりました。

今回の話をざっくりまとめると、以下のようになるのかなと思います。

・文章を他人に読んでもらうことは重要
・他者から率直に違和感を伝えてもらい、それをしっかり聞くことは重要
・しかし、「どのように直すか」は自分の頭で考えることが大切
・「直す方向性」は自分で考えた上で、「しっかり書き直す」という行動こそが大事

自分もこういうポイントを意識して、「書く」という行為と向き合っていきたいです。

文章の書き方に関する記事はこちらにまとまっているのでよろしければどうぞ。

【大学生・院生向け】文章の読み方・書き方・考え方・発表の仕方まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2133342163910863801

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リーダーシップ教育とICTの活用

先日、International Leadership Associationのカンファレンスに参加してきたことをブログに書きました。今日はその中でも「オンラインの学習環境」に関することを書いてみたいと思います。

カンファレンスで感じた感想のひとつとして、リーダーシップ教育をテクノロジーを使って支援するアプローチは思った以上に多いという印象を受けました。テクノロジー活用のパターンとしては、1.オンラインのリーダーシップ学習プログラムの提供、2.e-portfolioの活用、3.オンライン上でのコミュニケーション(skypeなど)を活用すること、などがあったように思います。

海外ではすでにそれぞれのパターンについて実践が行われ、どのような利点や改善点があるのかが議論されていました。日本と比べてここも進んでいると感じた点です。

もちろん日本の実践(自分が関わっている立教大学経営学部の事例)を考えても、ポートフォリオシステムの活用や、LINE・Facebook・skypeなどの活用は当たり前のように行っているわけですが、海外と比較してしまうとまだまだやれることがありそうです。

テクノロジーを活用した教育という意味では、私は教育工学の研究をしてきたということもあり、これまでのノウハウを活かしてリーダーシップ教育を発展させることもできるかもしれないと思っています。

なぜテクノロジーが必要かといえば、単純に仕事をする上でテクノロジーの活用が当たり前になっているということ以外にも、リーダーシッププログラムの拡大といった状況的な理由や、リーダーシップ教育における振り返りの重要性、メンバーの多様性の担保、など色々な点が考えられそうです。

テクノロジーはツールなので、それを使うこと自体が目的化するとややこしくなってはしまいますが、よりよい学びを支援するためのテクノロジーのあり方というのは、リーダーシップ教育の文脈でもキーになるのではないかと感じました。

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海外の大学におけるリーダーシップ教育とは?:ILAに参加してきました

先日、International Leadership Associationのカンファレンス(アトランタで開催に)に参加してきました。ILAに行くのは今年で3回目です。今回ははじめて日向野先生とともにプレゼンテーションもしてきました。

3回目の今回は一番学会にきてよかったと感じました。最初の二回は海外と日本との文脈の違いなどがわからず、前提の部分で色々とわからないことがあったり、自分もまだ自分の実践について話すことがなかったりでしたが、今回は自分がどんな情報を聞きたいや、自分が話したいことも明確だったので、よりアクティブに参加することができたと思います。

ILAでは海外(特にアメリカ)の大学におけるリーダーシップ教育に関する事例や研究が豊富に報告されます。色々感じたことはあるのですが、今回はざっくり2点だけ感想を書きます。

1.アメリカではリーダーシップ教育が大学の中に根付いている

ILAに参加して思うことは、明らかに日本とはフェーズが異なるという点です。日本でリーダーシップ開発をメインにしている実践というのは数少ないと思うのですが、アメリカでは本当に多くの大学で実践されています。

そのため、「どうやって授業をスタートしようか?」といった悩みのフェーズではなく、いろんなところで実践始まっているけど、「実際効果はどうでているか」、「どんな要因がリーダーシップ教育を促進するのか」、という点までだいぶ踏み込んできているという印象を受けました。これは昨年よりも明らかにそういった発表が増えているかんじがしましたね。

あらためて「圧倒的に進んでいる」ということを感じたというのが率直な印象です。日本ではどこからどう手をつけるとよいのかということは色々と考えることになりました。

2.リーダーシップを巡るシチュエーションの違い

ILAに参加して毎回感じることではありますが、「リーダーシップ」という言葉に対する認識や、文化(?)など、前提が日本と色々異なるということをあらためて感じます。

日本人の感じる「リーダーシップ」という言葉から連想されるイメージ、そして、「リーダーシップ行動をとるためにハードルとなること」というのはやはりだいぶ違うのだろうなというかんじです。

その違いの部分がけっこう面白いポイントになるはずなので、具体的にどう違って、違うからこそどう面白いのかという部分を切り出していくことはひとつ重要なことなのかなと思いました。

以上、まずはざっくり大きな印象を2つ書いてみました。

この2つは毎年感じることではあるのですが、日本でリーダーシップ教育の実践に約3年関わってからきてみると、いつもとは違ったインパクトがありました。

やはり海外の文脈を踏まえて、自分たちがやっている日本での実践をみていると、色々相対化される部分がたくさんあります。日本よりも明らかに進んでいる実践がある中で、どのようにそれらと関連づけ、どのようにこちらの強みや特徴を活かしていくのかというのは、難しいものの面白い問いだとあらためて感じました。

具体的に色々感じたポイントについてはあらためてまた記事にしようと思います。

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「グループワークが苦手な子に対してどうしたらいいですか?」と質問されたときに思うこと

アクティブラーニングなどに関する研修をしたときに、必ず聞かれる質問のひとつが「グループワークが苦手な子に対してどうしたらいいですか?」というものです。

こう聞かれたときに考えることは2つあります。

1つ目は、グループワークの得意・不得意の差が出ないような参加の構造をつくることが、アクティブラーニングのデザインのしどころだということです。

例えば、4人グループ場合に、4人それぞれ別々の資料を配って、協力することが必要になる環境をつくるなどの方法があります(ジグソーメソッドと言われたりします)。こうした方法を取り入れると、全員が参加しやすくなります。

こうした方法以外にも、そもそも間違った意見をいっても大丈夫と思えるような、心理的に安全な場作りをするというのもあります。

全員の前で発言をさせて「それは間違っている」など恥をかかせられたりすると「だったらだまっておこう」と思ってしまうでしょう。まずは意見の言いやすい雰囲気を作ることも大切です。

このように参加を促すための仕掛けや知見は現在いろいろと蓄積されてきています。これらを活用してみるのがよいように思います。

ただ、それをするときに前提として重要になるのは「本当に学生たちはグループワークが苦手なのか?」という視点を頭の片隅においておくことです。苦手だとこちらが思い込んで、機会を渡せていないだけの可能性も検討することが必要です。

2つ目はグループワークのプロセスそのものも学習(成長)できるということです。

「グループワークが苦手な子に対してどうしたらいいですか?」という質問をする場合、全てではありませんが「苦手な子は変わらない」というニュアンスが含まれていることがあります。

しかし、実際はグループワークのプロセスそのものを上達させることは可能です。そのためには、グループワークを終えた後に、学習内容だけでなく、グループワークのプロセスそのものも振り返る必要があります。

「あのときこういう質問してくれたのがよかった」
「よい意見を持ってるから、早めに言ってくれてもいいよ」

というかんじで、グループワークそのもののフィードバックと振り返りの仕組みをいれれば、グループワーク自体が得意になる(少なくとも苦手ではなくなる)可能性があります。立教大ではこれをリーダーシップ教育として実施しています。苦手でもやれば成長するという視点を持つことが重要だと思います。

今日は「グループワークが苦手な子に対してどうしたらいいですか?」という質問について考えてみました。

前提として言えることは「その子は本当にグループワークが苦手なのか?」をまず疑うこと、そして「苦手でも上達は可能である」と考えることがスタートではないかと思います。その上で、すでに蓄積されているさまざまな技法や考え方を上手にご自身の実践のなかに埋め込むとよいのかなと思います。

「グループワークが上手になる」というのは、なにも「ものすごく明るくなる」とか「すごく社交的になる」といったことではありません。静かであっても、人と協力して理解を深めることや、物事を達成するためになにかしらの役割を担うことができればOKだと思います。

こうした視点を持っておくと、グループワークも授業の中に取り入れやすいのかなと思っています。

 

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