秋学期の授業のひとつに、ビジネスコミュニケーションに関するものがあります。この授業は、折口みゆき先生がメインで、私がサポート的に入っている授業です。

この授業では、ここ数回、タイトルに書いた「事実」と「解釈」を見分けて、自分の「見えない価値観に気がつく」という練習をやっています。「事実」と「解釈」を分けるというのは、簡単そうに見えてけっこう難しいです。特に自分がかかわっているものであればあるほど、「何が事実か」「何が解釈か」というのを分けてみられなくなるものですよね。

でもこうした思考習慣は、論理的に考えるときにも、創造的になにかを考えるときにも基本となる視座なのではないかと思います。

事実と解釈の違いがわかってくると、自分は「どんな出来事」に対して「どんな考え方をしているか(価値観をもっているか)」ということを自分でも意識的になっていきます。そうすると、ある物事に対してひとつの側面から決めつけるのではなく、「もしかしたらこういう可能性があるかも?」と視野を広げたり、「自分はいまこういうことにこだわっているのかも」という自己理解に結びつけることができるのではないかと思います。

こうした「事実」と「解釈」を見分けて、自分の「見えない価値観に気がつく」というのは、実は色々なワークショップに共通する基本的なデザインのポイントなのかもと思います。

例えば「対話型鑑賞法」という、アート作品をベースに対話を行うという方法があります。この方法では、鑑賞者は作品を見た感想を話すわけですが、そのときにも「何をみて(事実)」、「どう感じたか(解釈)」という両方を分けて理解することを大切にしているように感じました。例えば、「作品からさびしさを感じる(解釈)」というと、「具体的にどこの部分をみてそう思いますか?(事実)」というかたちで、しっかり対応付けをすることを大切にされているのかなと思います。

こうした思考の習慣に慣れることは大切なことなのかなと思います。

(↓対話型鑑賞法ではひとつの作品をもとに、みんなで対話しながら鑑賞する方法です。)

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「事実」と「解釈」を見分けることができると、「きっとこの人はこうだ!」といった決めつけをしてしまうのではなく、ものごとに対して「よい保留」ができるようになるのではないかと思います。

「じっくりみて、考える」という思考の様式に慣れる訓練はいろいろなところで必要になってくるのかなと思います。

■関連情報

以前対話型鑑賞のイベントをやったときの記事はこちらです。(平野智紀くんのページです)
http://www.tomokihirano.com/blog/2013/01/kyoto-u-130120.html

アクティブトランジションのワークショップも基本的には、ワークをやるなかで「自分の価値観に気がつく」というものが多いです。

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