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午後のまとめもやってみようと思います。午前のまとめはこちらです。
https://www.tate-lab.net/mt/2016/08/1555.html

お昼は立食形式だったのですが、いろいろな人とお話しすることができ非常に楽しかったです。「この人とこの人がつながっているんだ!」という色々な驚きもありました。こういうイベントは話を聞くだけでなく、こういうネットワーキングも醍醐味ですよね。

午後も村上先生の導入からスタートです。村上先生の導入は安心感があります。午後は4人の話題提供があります。

午後の発表の一人目は、須田淳先生(京都大学大学院 工学研究科・准教授)です。「午前の発表はちゃらいかんじ」とおっしゃったり、最初から面白いです笑 ただ、学びの視点の転換などお話しされているポイントは非常に本質的です。タイトルは「創造的な技術者・研究者を育てる教育-工学部・工学研究科の事例から」というものです。

「理工系って物事がきっちり決まっていて、正解は一つだけなのでは?」というのは大きな間違いだよという話からはじまります。しかし、受験勉強に毒されているからなかなか発想の転換に至らず、「解法を教えてくれ」ということになってしまうのだそうです。

実際教員が期待していることは「解法の適用」ではなく、「物理法則の感覚化」であるといいます。何かを考えるときに「これ計算しときます」と作業するだけでなくて、事前の予測をして、結果を鑑賞して、感覚化していくことが大切なのだということです。

こうした感覚を身につけるためには、基礎だけやっていても伝わらないので、夏休みなどにマインドストームなどを使ったプロジェクトを行うのだそうです。こうしたプロジェクトをすることで、基礎基本の意義がわかるというお話でした。

発表の要約するとこんなかんじなのですが、須田先生の実際の語り口はこの文章の100倍面白く、ぜひ須田先生から直接お話を聞いて欲しいなと思えるような内容でした。

二人目の発表は、明和政子(京都大学大学院 教育学研究科・教授)先生です。タイトルは「発展途上の脳とメタ認知―京都大学教育学部・教育学研究科の教育活動で大事にしていること」です。京大の教育活動の紹介からはじまります。具体的には、エビデンスベースドの教育を大切にしており、特に以下の3つのポイントが大切になります。

1.「理論」と「実践」の往還
フィールドワークを重視した教育(身体性の認知)。自分で問いを見つける。多様な価値観などを体で感じる。

2.「対話型」教育
専門ゼミナールの実施。黙っていると目立つような授業。

3.「文理融合の視点」を重視した教育(理系入試の導入)
文理融合の視点と方法論が不可欠。理系入試などもおこなっていく。

最後は脳の話です。「他者の心」を理解する2大神経ネットワークは「ミラーニューロン」と、「メンタライジング」です。それぞれ自己と他者を切り離さないものと、自己と他者を切り離してメタ理解するものになります。

機能の成熟は30歳まで続くそうです。大学生は大人が思う以上に、脳としても発展途上であるということになります。それはよい面もあるのですが、メタ認知を可能にする前頭前野の発達が、現代は遅くなっているというのもあるようです。脳の話も人の学びをする上でやはり欠かせないですね。

三人目の発表は、安藤直人(昭和電工株式会社 総務・人事部事業支援グループ マネージャー)様です。タイトルは「新入社員育成プログラムでの経験を成長につなげる取り組み」です。昭和電工さんで重視する行動特性は以下の4つです。

・達成指向性
・対人能力
・職務専門能力
・思考力

中原先生の「企業内人材育成入門」の書籍を読んで学び、「経験学習ノート」というツールを使いながら、振り返りの機会を提供したそうです。ノートとかワークシート的なかんじなものを使うというのはわかりやすいですね。

ツールを使うことの効果として3つが挙げられていました。
・仕事を進める上でのポイントをおさえられる
・専門外の能力向上に目を向けられる
・成長の度合いを把握できる

よい振り返りをするために3つを意識されているそうです。このあたりは振り返りの質をあげるtipsとして面白いですね。
・具体的に振り返る(絵にする)
・多様なバックグラウンドの仲間とゆっくり話す
・ポジティブに振り返る(リストーリー/ポジティブイット)

経験をしっかり「成長実感」につなげていくのはあらためて大切ですね。

四人目の発表は、松本 加奈子(大阪ガス株式会社 大阪ガス行動観察研究所 研究員 兼 株式会社オージス総研 行動観察リフレーム本部 主任)様です。タイトルは「行動観察のビジネスへの応用」です。

まず松本さんの自己紹介ででてきたエピソードが面白かったです。顧客が「言葉として言うこと」と「本当に思っていること」のギャップをどう捉えるか。ギャップや問題をどのように創造的に解決するかということなどを仕事でなされていたそうです。

「行動観察」は、「意識」レベルのアンケートやインタビューでわからない「無意識」のところを拾い上げていく手法であるということです。イノベーションのための「リフレーム」を行動観察から提供するかんじですね。

「ビックデータ」と「行動観察」は対比されますが、結局両方必要になるといいます。データでわかること、わからないことがあります。データでは「相関がある」というのはわかるけど、「なぜ相関があるの?」などはわかりません。

例えば、「雑誌とガムの売り上げが両方下がっているのはなぜか?」観察してみると、レジ待ちの間に「スマホ」を見ているからだということがわかります。これがデータと観察の関係を理解するひとつの例とのことでした。わかりやすいですね。

最後は帰納でも演繹でもない、アブダクションという思考形式のことについてお話がありました。アブダクションとは、蓋然的推論のことです。

例としては、シャーロックホームズが、ワトソンと出会ったときに「あなたはアフガニスタンにいっていましたね?」と当てるのですが、そのために「日焼け」「表情」「手の動き」「服装・動き」といった事実から、知識を使い、軽く解釈していくといったそんな流れを想像してもらえばよいかと思います。

データをもとに、洞察をして、展望を作っていく、そしてそのためには高いレベルで矛盾を持ちつつ、統合していくことが重要ということですね。

ということで、午後も盛りだくさんでした!まとめるのは大変でした笑

重要なキーワードを挙げると「学びの発想の転換」「基礎と応用の関係」「理論と実践の関係」「メタ認知と脳」「振り返りを習慣づけるためのツールとアクティビティ」「行動観察(現場・フィールドワーク含む)」というかんじでしょうかね。

抽象的に考えることや法則などの重要性が指摘されながらも、それと同時に「応用」や「体験」、そして「現場」の重要性が指摘されるのが面白かったです。

すごく簡単にいってしまえば、本当は両方必要なんですよね。なのに「経験か」「知識か」などの変な二者択一になってしまうのはもったいないよなとあらためて思いました。

1日通したまとめはまた別記事にしようかなと思います。

午後の発表に関連するグッズ・書籍はこんなかんじです。

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