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 今日はワークショップについて少し書いてみようと思います。ワークショップや場作り関連の本は最近すごく増えてきているので、何を書くの?ってかんじがするかもしれませんが、僕なりに思うことを少し書いてみようと思います。
 今日のテーマは「ワークショップの当日までをデザインすること」についてです。僕はこれまで色々なワークショップやイベントを実施してきましたが、ここ最近はこの点を意識した場作りの実験を行うことが非常に多いです。本当はワークショップの前後について書こうと思ったのですが、意外に長くなってしまったので、今回は「参加前のデザイン」に絞って書いてみようと思います。参加後については、また今度書きます。

 例えば「参加前のデザイン」としてわかりやすいものとしては、ワークショップ当日までに、ソーシャル・メディア上で自己紹介をしてもらったり、なにか簡単なお題をアップしてもらうなどがあります。とても簡単な課題ですが、これをしてもらうことで「今回の参加者はどんな人がいるのだろう」「どんな関心で申し込んでいるんだろう」という部分が可視化されます。
 これらはいわば「アイスブレイク」のような機能を持つことになります。僕はアイスブレイクには2つの効果・狙いがあるべきだと思います。
 1つ目は、企画のコンセプトをプチ体験できることです。これはワークショップの研究をしている安斎勇樹君も言っていた気がしますね。僕の場合は、アイスブレイクで「文脈と関係ない活動」をすることはあまりありません。今回のコンセプトを体験できるような小さな課題を用意します。2つ目は、参加者同士の関係をつくることです。ワークショップでは基本的に協同でやる活動が多いので、ベースになるような関係を作ってもらいます。
 こういう活動をいってみれば「当日の前に」やってもらっちゃうんですよね。オンラインの活動でもこうしたことはある程度できます。それに実施することのメリットも多いです。
 例えば、企画側のメリットとしては、参加者がどのような人なのか、どのようなニーズを持っているのかということが事前にある程度理解できるため、活動をある程度カスタマイズしておくことができます。また、当日の活動を事前にやっておけば、当日は「対面だからこそできること」に注力することができます。
 参加者側のメリットとしては、当日参加するための「準備」ができます。当日の具体的な活動のイメージがわきますし、どんな人がくるのかもわかるので安心感が高まります。

 具体的な例はいくつかあるのですが、今回はそのひとつである対話型鑑賞法のイベントの例について書いてみます。
2012/3/12(土)に「対話型鑑賞 in ワタリウム美術館」というイベントがありました。このイベントは平野智紀さんと、TOKYO ART BEATさんの共同企画のイベントでした。僕は企画者ではなく、活動のアドバイスを事前にさせていただくというかたちでかかわりました。
 そのときに提案させていただいたのは「事前に対話型鑑賞法を体験する」というものでした。対話型鑑賞法というのは、ある作品をみて感じたことを、参加者同士が対話しながら鑑賞をするというものです。それをネット上でやってもらっちゃうというものです。
 インターネット上にひとつの作品を提示して、その作品に対して感じたことをtwitterでつぶやいてもらうというものでした。これは別に参加者に限定したわけではなく、どんな人でも参加できるような形式で実施しました。
詳細についてはサイトが残っていますので、こちらをご覧下さいませ。
対話型鑑賞 in ワタリウム美術館
http://goo.gl/jsC9r
ちなみにネット上ででてきた意見については、平野君が自分のウェブにまとめていました!ネットだけでもこれだけ多様な意見がでていて、見ているだけでも面白いです。こうすることでイベントが始まる前に期待感が高まりますよね。
ミューぽん対話型鑑賞 in ワタリウム美術館 #mupon_taiwa まとめ!
http://goo.gl/a7iF3

 「ワークショップの事前のデザイン」というのは、全てのワークショップに必須なものなのかというと、そうではないでしょう。デメリットもあります。例えば、参加者がソーシャル・メディアを使っていることが前提になるということや、拘束時間も増えます。ちゃんと事前にやってくれるかも、よくデザインしていないと難しいですよね。
 しかし、上手に使えば、「対面の時間だけではできない活動」を全体として提供することができます。ワークショップの時間は限られています。その時間をもっと違う使い方にするためのヒントがここにあるのではないかと思っています。
 ということで、今回は「ワークショップの当日までのデザイン」について書いてみました。まだ書き足りないこともあるので、もう少し事前について書いたり、今度は事後のことについても書くかもしれません。
■関連する記事
やっぱり安斎君のブログにもアイスブレイクの件が書いてありましたね。
ワークショップにおける「入り口」のデザイン
対話型鑑賞法のイベントをやった平野智紀君のブログ
http://www.tomokihirano.com/
以前舘野が対話型鑑賞法について連続ツイートしたものはこちら。
http://togetter.com/li/398843
■ワークショップに関連する本
この本で「大学教育とワークショップ」という章を書いています。興味がある方はぜひご覧下さい。

ワークショップと学び2 場づくりとしてのまなび
東京大学出版会
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