「依頼を受けたワークショップ」を企画する上で大事にしていること:対話型鑑賞法のワークショップの事例をもとに

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1/20に京都大学総合博物館でワークショップを実施してきました。この企画は総合地球環境学研究所主催で、京都大学総合博物館館長の大野照文先生から依頼を受けて実施しました。
今回のイベントの企画は、大学院の同期の平野智紀くんや三宅正樹くん、京都造形芸術大学の福のり子先生、伊達隆洋さん、北野諒さん、同志社女子大学の細野あゆみさんたちと一緒に実施しました。企画チームが多様だったので、ミーティングからとても楽しかったです。
告知ページはこんなかんじでした。
「対話型鑑賞法」の事例から「自らの研究成果をナビゲイトすること」を探ろう!
http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/modules/event/content0291.html
イベントの詳細については、すでに平野智紀君がウェブで紹介してくれています(文末にリンク貼りました)。
そこで今回はイベント内容を紹介するよりも、「どのように企画をつくっていったのか」「企画をつくる上でどのような点を大事にしているのか」を中心に書いてみたいと思います。

今回の企画では「研究成果を世の中に発信すること」について、「対話型鑑賞法」という素材をつかって考えるというものでした。
僕が今回担当したのは、この「目的(研究成果の発信)」と「素材(対話型鑑賞法)」が一番生きるようにするためのワークショップ全体の構成をデザインすることでした。そのデザインをする上で僕が心がけたのは以下の3つです。
1.「とにかく聞く」
 まずはとにかく依頼内容を聞きまくります。「研究成果を世の中に発信すること」について、どのような議論を中心的にできるといいのか、どのような制約があるのか、参加者はどんな人なのか等、とにかくどこまでが決まっていてどこまでが自由なのかを聞きまくります。
 次に「対話型鑑賞法」を実施してくれる京都造形芸術大学のメンバーに、対話型鑑賞法のエッセンスや今回の企画内容を踏まえてどういうことができそうかを聞きまくります。聞きまくることで、この企画のミッションや、こちらで用意できる素材(道具だけではなく企画も含めて)として何ができるのかということを整理していきます。
 まあ聞くっていうのは当たり前のようなかんじもしますが、このへんは「これでもか」というくらい確認しておくのは悪いことではないと思います。意外にそのあたりを聞かずに、すぐに「何をしようか」と考えてしまう人も多いのではないでしょうか。
2.「文脈をつくる」
 次にやることは「文脈をつくること」です。今回は素材として対話型鑑賞法をやることは決まっていましたし、京都造形芸術大学のみなさんは普段から対話型鑑賞法のナビゲーションはしているプロなのでその部分の心配はありません。
 ただ、問題は「今回の目的」と「事例」の関係性をうまくつくらないと、「結局なんで対話型鑑賞法だったの?」ということになってしまいます。この部分の文脈についてよく理解できたり、対応づけをしながら議論できるようなデザインを考えていきます。これは参加者の特性なども理解しながら考えていくことになります。
 もちろん目的と事例の関係を全て僕が考えてしまったらイベントをやってみんなと議論する意味はありません(笑)ただし、その間をつないで考えるのが楽しい、もしくは考える価値がありそうだという状態までは持っていく必要があります。そのために、企画の入りのプレゼンテーションの中身や、活動をどのように挟んでいくのかを考えていきます。
3.「教育・学習という視点を付与すること」
 最後にやることは「教育・学習という視点を付与すること」です。私自身の専門性が生きるのはやはり教育が学習について研究しているという点だと思います。私の研究領域では、この問題がどう捉えられているかということをやはりどこかで入れ込むことが大事なのかなと思っています。
 そこで、取り扱う問題に対応するような、自分の領域での理論などについて探し、対応づけて語れるようにプレゼンテーションを用意していきます。例えば、今回は「ダイアローグ:対話する組織」の内容を紹介しながら、「対話」の問題について素材を提供するようにしました。
 もちろんこのあたりについても依頼の内容によると思うのですが、できるだけ活動のデザインをしつつも、「私の研究領域ではこんなことが言われているよ」という考えの素材を提供できるように心がけています。

さて、まあ書いてみると「当たり前じゃないか」ってかんじになりましたが、今回はまず思いついた3つのことをについて書いてみました。書いているうちに、あれもこれもと思いつきはじめましたがあんまり増えるとややこしいのでまたあらたな記事として今度書こうと思います。
ワークショップは始まってしまったら「プランよりも、その場で起きていることを重視する」という姿勢が大事だと思うのですが、上記で示した3つは企画の段階でしっかり詰めていきたいポイントになるかなと思います。
ちなみに、正直今回のブログ記事は、最初はちゃんとワークショップの内容について書こうと思っていたのですが、どのように企画をしたのかを書いていたらすごく長くなってしまったので、「企画のプロセス」について書く記事ということにしました(笑)
イベントの詳細についてもあらためて書いてみようと思いますのでご期待下さいませ。
■イベントの内容について
どのようなプログラムで進んだのかなどに興味がある方は平野智紀くんのブログをご覧下さい。
「対話型鑑賞法」の事例から「自らの研究成果をナビゲイトすること」を探ろう!
http://www.tomokihirano.com/blog/2013/01/kyoto-u-130120.html
■関連する書籍

ダイアローグ 対話する組織
中原 淳 長岡 健
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 21,776


科学コミュニケーション論
東京大学出版会
売り上げランキング: 151,987

ジグソー法を取り入れたワークショップをしてきた:シンポジウム「科学をどう教えるのか」

先日、日本の物理教育について考えるシンポジウムで以下のワークショップを実施してきました。

シンポジウム「科学をどう教えるのか2」
主催:NPO法人 理科カリキュラムを考える会
共催:東海大学教育開発研究所
『科学をどう教えるか』を自分の実践に取り入れるために
木村優里(立教大学)・舘野泰一(東京大学)
シンポジウムの詳細はこちら
http://www.ried.tokai.ac.jp/ried/files/events/entryform20130113/


もちろん僕は物理教育の専門家ではありませんから、なんで君なのよ?と思われるかもしれません。まあ僕的にも初めていく場所だったのでドキドキしました(笑)
今回僕が依頼されたのは、シンポジウムで取り扱った「科学をどう教えるのか」という本の内容について、参加者の方がより内容を深く理解したり、普段の実践を改良したりするきっかけをつくってほしいということでした。つまり、シンポジウムの最後のセッション約1時間半の活動デザインについて依頼をうけたというかんじですね。
さらに、今回題材として扱った「科学を教えるのか」という本は、認知科学の知見をベースに物理教育の教材をつくったという点が特徴的な本です。私は元々学部から認知科学について学んでいたこともあり、その部分の内容的知識はあったため、今回依頼をしていただきました。

1時間半という短い中で何をやろうかなと思ったのですが、今回はこの本の「理論部分」にあたるところについて、理解のきっかけをつくってもらうことを目的にしてみました。この本は認知科学の知見をもとに教材を作っているのですが、認知科学について慣れ親しんでいない人にとっては、実は2章とか3章を読むのは大変だという話を聞いたんですよね(笑)
そこで、今回は理論部分のコアである「デザインのための5つの原理」という部分を題材にしてみました。
 1.構成主義の原理
 2.文脈の原理
 3.変容の原理
 4.個別性の原理
 5.社会的学習の原理

原理だけみてもけっこう難しそうですよね(笑)今回はこれを学ぶ上で、ジグソーメソッドという方法をベースにして活動を考えてみました。
ジグソーメソッドについてすごく簡単に説明すると「全員が同じ教材で学ぶ」のではなく、「全員がバラバラの教材を使って、教えることによって学ぶこと」を目的にしている方法なんです。(ジグソーパズルのように、教材をバラバラにして集めるイメージ)
さきほど紹介した5つの原理を例にすると、普通なら「全員に5つの原理に関する資料」を配りますよね。そうではなくて、「あなたは1つ目の構成主義の原理ね」ということで、バラバラに資料を配るのです。例えば5人グループだとすると、必ず全員が違う資料を持っているということになります。
この方法を使うと、「人に教えるために資料を読み込む」とか「教えることを通じて理解を深める」ということが期待できるというわけです。

今回はこの方法を使うことで以下の3つの点を期待していました。1つ目は、本に書かれれている理論部分を少しでも自分なりに理解していただくきっかになればよいなということです。2つ目は、参加者の方々は、みなさん日々物理教育の実践をされている方ですから、知識の理解だけではなく、配られた資料に関する「普段の実践に関する語り」をしていただきたいと思いました。3つ目は、ジグソーメソッド自体も、認知科学的な要素がたくさん含まれているため、自ら体験してもらうことで理解のきっかけになればと思いました。
実際にやってみると、みなさん短い時間ながらも、それぞれの原理について「こういうことじゃないか」、「普段の実践で起きているこういう現象と似ている」「私はこれにはまらないように、こんな工夫をしている」という会話がなされていました。

今回の実践をやってみて思ったことは、すでに現場での実践経験が豊富な方を対象にしたジグソーメソッドは普段のものとまたちょっと異なるなということでした。というのも、みなさん実践経験が豊富なため、与えられた原理に関するストーリーなどをたくさん持っているんですよね。なので、単純に「理論の理解」が目的になるだけでなく、「普段の実践について語るための素材」として機能しているなという印象を受けました。これは僕にとってはあらたな発見で、とても面白かったです。
シンポジウム終了後の飲み会などでも、みなさんお話しをしながら「これは文脈の原理みたいな話だね(笑)」という具合に、冗談の中に、さっそくさきほどの原理について言及してくださっているのが印象的でした。自分の言葉として語っておられる姿が印象に残りました。

今回の企画は、木村優里さん(立教大学)と一緒に実施したのですが、一番苦労したのはジグソーメソッドで使う「教材作り」でした。5つの原理について、短い時間で理解してもらうためには、その教材をわかりやすく作り込む必要があります。実際、ジグソーメソッドは始まってしまったらそれほど介入する余地がないので、事前に準備出来るのは教材部分くらいなんですよね。
本番までに「木村さんが書いて、僕がコメントする」ということを相当の回数繰り返しました。木村さんの資料作りに関するねばりは本当に素晴らしかったです(笑)

ということで、僕にとってははじめての場所だったのですが、参加者のみなさんが非常に熱く、僕自身も刺激をいただく非常によい機会になりました。今回のような機会をいただき、滝川洋二先生はじめ、主催者のみなさまに本当に感謝いたします。
今後も機会があれば、いろいろな場所で、シンポジウムの活動デザインなどについてご協力できればと思っています。ご興味のある方はお声がけいただけますと幸いです。
■シンポジウムで題材になった本

■関連するリンク
ジグソーメソッドの説明はこちらをどうぞ。
学部4年生の頃に書いたメルマガ記事です。なつかしい(笑)
http://www.beatiii.jp/beating/018.html

自分の専門性は何かを問い直しながら実践すること

年が明けてあれよあれよという間に日々が過ぎていき、全然ブログ更新できていませんでした!ってことで、今日はリハビリ的に更新します。
今月も論文書いたり、いろんなワークショップの実践をしているんですが、今日は実践の方について書きたいと思います。今月はいまのところ2本ワークショップを実施しました。

1つ目は物理教育に関連するイベントです。「科学をどう教えるのか」という本をベースに、ジグソーメソッドという方法を取り入れたワークショップを実施しました。
「科学をどう教えるのか2」
http://www.ried.tokai.ac.jp/ried/files/events/entryform20130113/
2つ目はアートに関連するイベントです。対話型鑑賞法という方法を事例に、研究者が社会に研究成果を発表することについて考えるワークショップを実施しました。こちらは京都大学総合博物館で実施しました。
「対話型鑑賞法」の事例から「自らの研究成果をナビゲイトすること」を探ろう!
http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/modules/event/content0291.html
(どちらのイベントについても詳細は今度ブログに書くのでお待ち下さいませ。)

今月は「サイエンス」のイベントをやったり、「アート」に関連するイベントをやったりで分野がすごくバラバラでした。でもどんな分野であっても、その場を「良い学びの場にする」という点では共通するため、その部分をお手伝いさせていただいたかんじでしょうか。こうやって声をかけていただけるのは、教育や学習について研究をしている身としては大変うれしいことです。
これらの経験を通じて、最近あらためて「内容の専門家」ではないからこそできることとは何かについて考えています。僕は「物理教育」についても「アート」についても詳しくありません。そこでできることのひとつは「よい学びの方法についての専門家」として、方法をアドバイスする立場というのがあるでしょう。実際にそういう部分でお手伝いしているところも大いにあります。

しかし、最近実感することのもうひとつ大きな点は「その領域と関連のない人がきて、外から見える感想をフィードバックする」みたいな意味も非常に大きいのだろうなと思っています。その領域について知らないからこそ、素直に「こう見える」という部分を伝えたり、他の領域ではこういう状況ですよということを伝えることの意味みたいなかんじですね。
それは単純に「教育方法」をお手伝いしているだけではなく、そのコミュニティに普段いないからこそ見える「越境者としての視点」みたいなものが求められているような気がしています。まだこのあたりうまく言語化できていないんですけどね。

最近いろいろな分野の方から一緒にイベントをやろうという声をかけていただき本当に感謝しています。やはりせっかく声をかけていただいたからにはバリューを発揮しなくちゃと思うのですが、そのときにいつも「自分が一番価値を発揮できることはなんなんだろうか」ということを考えます。
それは「教育」や「学習」について研究したり、実践していることの意味を問うことにつながっていきます。「自分もしくは自分の学んでいる学問の専門性や価値はどこにあるのか」という問いはなかなかに重いですが、常に考える必要のある問いですよね。常に実践をしていくフットワークの軽さをもちつつも、こうした問いを抱えながらやっていきたいなと思っています。
それぞれのイベントについては、詳細をまたブログに書くので楽しみにしていてください。
ちなみに来月は、大学図書館の方と共に「未来の大学図書館をデザインする」というワークショップを実施予定です。大学図書館の職員の方限定のものとなりますが、またこちらについても告知できればと思います。
■今回の記事に関連する本
物理教育のシンポジウムはこちらの本を題材にしたものでした。

こちらの本は僕もまだじっくり読めてないのですが、読みたい本です。

みる・かんがえる・はなす。鑑賞教育へのヒント。
アメリア アレナス
淡交社
売り上げランキング: 160,518

2013年もどうぞよろしくお願いします!

あけましておめでとうございます。2013年になりましたね。新年なので今年はどんな年にしていきたいかについて少し書いてみようと思います!
2013年の今年は僕にとって「終わりとはじまりの年」にしたいなと思っています!これまでやってきた研究をしっかりカタチにして一区切りすること、そして、これから数年かけて考えていきたいテーマ(一つのコンセプト)を決めて、一歩でいいので歩みを進めるというのが今年のテーマになる気がします。
2012年はそのための「移行の年」でもあったように思います。2012年の成果は一見雑多に見えるのですが、僕のなかではひとつの「面白いと思うもの」になんとなくつながっていき、その共通点みたいなものがうっすらですが見えてきたかんじがします。そこで見えてきたヒントをもとに、しっかりカタチにつなげていきたいと思います。
2013年の今年は誕生日の6月がくると、とうとう30歳になります。20代の終わりが近づいていく中で、これまでやったことを整理して、また新たな勝負をしていけると楽しいのではないかと思っています。

最近なんとなく思うのですが「新しいものを一からつくるときの雰囲気とか環境」が自分の周りに少しずつ生まれてきているように思います。自分でそういう環境をつくろうと思っているのもあるかもしれませんが。その意味ではまた初心に戻っているかんじがします。
2012年は執筆した本が3冊出版されるなど、成果が色々でた年でもあるのですが、本が出版されるのはプロジェクトの最後の最後であり、計画段階から考えると数年経っているんですよね。つまり、正直いえば「2012年にがんばったから、2012年に成果がでる」というわけではないんです。
30代の10年間を楽しく過ごすためにも、2013年はよいスタートダッシュになるよう、今後につながるようなよい仕事をしていきたいと思います。
そのために必要なことはおそらくこんなことかもしれません。
・自分が面白いと思うことに嘘をつかないこと
 ・「つまらない」と思っているのに小手先でこなしてしまわない
・失敗をおそれずにやること
 ・3勝2敗くらいでいけば御の字
 ・新しいことにチャレンジするために失敗の余白を勘定しておくこと
・まずカタチにすることを大切にする
 ・完璧主義に陥らず、まずはカタチにしていくことが大事
あとはとにかく「たくさんの人と会って話を聞くこと」も個人的に今年は大事にしていきたいと思っています。ブレイクスルーは人との出会いがきっかけで起こることが多いですしね。
ということで2013年もがんばっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!