タグ別アーカイブ: アクティブラーニング

自分の文章に対する他者からのアドバイスをどのように受け取るべきか?

文章を書いたときに、だれかに見てもらうということはよくあると思います。むしろ、他人に見てもらう機会をしっかり持つということはとても重要です。

ただ、他人にみてもらってコメントをもらったときに、その全てのコメントを言われるがまま直してしまうと問題が起こることも多いです。そもそもコメントが的外れの可能性もありますし、ついつい「他人任せ」になってしまいがちになってしまいます。

「こう直したらいいんじゃないの?」というコメントは、あくまでひとつの意見であり、それを受け入れるかどうかというのは、自分の責任を持って判断する必要があります。

先日村上春樹さんの「職業としての小説家」という本を読んでいたときにも似たような話がでていました。自分が「あわない」と感じている編集者から、「ここをこうした方がよい」と指摘されたときに、村上さんがどう対応したかという話です。

結果からいうと、「短くした方がいい」と言われたものは「長く」、「長くした方がよい」といわれたものは「短くした」とのことです笑(p.166)

このエピソードは「他人の意見は必要ない」ということを表したものではありません。他人の意見は重要ではあるのですが、それを鵜呑みにするのがよいわけではないということを表しています。

「どう直すか」はさておき、「読んだ人が違和感を感じた」ということは事実です。その違和感の意図を推測しながら、自分で考えて何度も何度も書き直していくことが大事ということでした。

このエピソードは個人的にとてもささりました。

今回の話をざっくりまとめると、以下のようになるのかなと思います。

・文章を他人に読んでもらうことは重要
・他者から率直に違和感を伝えてもらい、それをしっかり聞くことは重要
・しかし、「どのように直すか」は自分の頭で考えることが大切
・「直す方向性」は自分で考えた上で、「しっかり書き直す」という行動こそが大事

自分もこういうポイントを意識して、「書く」という行為と向き合っていきたいです。

文章の書き方に関する記事はこちらにまとまっているのでよろしければどうぞ。

【大学生・院生向け】文章の読み方・書き方・考え方・発表の仕方まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2133342163910863801

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「グループワークが苦手な子に対してどうしたらいいですか?」と質問されたときに思うこと

アクティブラーニングなどに関する研修をしたときに、必ず聞かれる質問のひとつが「グループワークが苦手な子に対してどうしたらいいですか?」というものです。

こう聞かれたときに考えることは2つあります。

1つ目は、グループワークの得意・不得意の差が出ないような参加の構造をつくることが、アクティブラーニングのデザインのしどころだということです。

例えば、4人グループ場合に、4人それぞれ別々の資料を配って、協力することが必要になる環境をつくるなどの方法があります(ジグソーメソッドと言われたりします)。こうした方法を取り入れると、全員が参加しやすくなります。

こうした方法以外にも、そもそも間違った意見をいっても大丈夫と思えるような、心理的に安全な場作りをするというのもあります。

全員の前で発言をさせて「それは間違っている」など恥をかかせられたりすると「だったらだまっておこう」と思ってしまうでしょう。まずは意見の言いやすい雰囲気を作ることも大切です。

このように参加を促すための仕掛けや知見は現在いろいろと蓄積されてきています。これらを活用してみるのがよいように思います。

ただ、それをするときに前提として重要になるのは「本当に学生たちはグループワークが苦手なのか?」という視点を頭の片隅においておくことです。苦手だとこちらが思い込んで、機会を渡せていないだけの可能性も検討することが必要です。

2つ目はグループワークのプロセスそのものも学習(成長)できるということです。

「グループワークが苦手な子に対してどうしたらいいですか?」という質問をする場合、全てではありませんが「苦手な子は変わらない」というニュアンスが含まれていることがあります。

しかし、実際はグループワークのプロセスそのものを上達させることは可能です。そのためには、グループワークを終えた後に、学習内容だけでなく、グループワークのプロセスそのものも振り返る必要があります。

「あのときこういう質問してくれたのがよかった」
「よい意見を持ってるから、早めに言ってくれてもいいよ」

というかんじで、グループワークそのもののフィードバックと振り返りの仕組みをいれれば、グループワーク自体が得意になる(少なくとも苦手ではなくなる)可能性があります。立教大ではこれをリーダーシップ教育として実施しています。苦手でもやれば成長するという視点を持つことが重要だと思います。

今日は「グループワークが苦手な子に対してどうしたらいいですか?」という質問について考えてみました。

前提として言えることは「その子は本当にグループワークが苦手なのか?」をまず疑うこと、そして「苦手でも上達は可能である」と考えることがスタートではないかと思います。その上で、すでに蓄積されているさまざまな技法や考え方を上手にご自身の実践のなかに埋め込むとよいのかなと思います。

「グループワークが上手になる」というのは、なにも「ものすごく明るくなる」とか「すごく社交的になる」といったことではありません。静かであっても、人と協力して理解を深めることや、物事を達成するためになにかしらの役割を担うことができればOKだと思います。

こうした視点を持っておくと、グループワークも授業の中に取り入れやすいのかなと思っています。

 

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リーダーシップスタイルを「言語」以外で表現してみることの意義

リーダーシップ開発に関する授業では、自分のリーダーシップのスタイルを言葉で表現してもらうことが多いです。例えば、自分のリーダーシップスタイルのキャッチフレーズを考えてもらったり、リーダーシップにおいて大事だと思う要素を3〜5挙げてもらう等の方法をとります。これはこれでとても意味があります。

ただ、最近リーダーシップのスタイルなどを「言語」だけで表現するのは難しいのではないかと思ってきました。例えば、自分がリーダーシップを発揮していると思える「映画や小説のワンシーン」を持ってきたり、「身体で表現してみる」だったり、「イラスト」で書いてみるだったり、さまざまなメディアを使って「情景として理解する」ということが大事なのかなと思います。

実はこれはリーダーシップのスタイルだけでなく、「ビジネスプランを考える」というときにも重要なのだろうと思っています。

私たちは「考える」ということを、どうしても「イスで座って」(身体的に静的に)、「言葉で」と考えますが、これはあくまで思考の一部なのではないかと思います。

もちろん最終的に「抽象化してまとめる」という意味で、「言語を使って書く」ということは大変有効な手段なのですが、「自分が暗黙的に持っているイメージを表出していく」という段階においては、もっと「言語」から離れて、「身体的にも動的に」考えることが大切なのかもしれないと思っています。

つまり、「プランニング段階」ではもっと動的に、「まとめる段階」では「しっかり言葉に」というかんじでしょうかね。

来年度の授業ではこういった点を頭の片隅に入れて、リーダーシップ開発の授業をデザインしてみたいと考えています。

書籍「アクティブトランジション」おかげさまで、多くの大学・企業でワークショップが実践されています。内定者への支援をお考えの企業関係者のみなさま、キャリア教育の実践をされている大学関係者のみなさまにおすすめの1冊です。

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今年の「リーダーシップ入門」の授業を振り返る:授業評価アンケートの結果から

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今年の春学期の授業が無事に終了しました。春学期に私がメインで担当している授業は「リーダーシップ入門(通称BL0)」という1年生向け授業です。この授業は経営学部の1年生約400人全員が受講するもので、18クラスに分かれ、教員18名、Student Assistant18名、Course Assistant 14名で実施します。写真は授業運営メンバーと撮ったものです。

私の役割は、授業内容の責任者(コースリーダー)なので、各クラス共通で使用するスライドを作成したり、SA・CAの採用・育成をしたりしていました。

今年で私がコースリーダーを担当して3年目となります。3年というのはひとつの節目になると思いますので、今年は例年とはまた違った緊張感を持って授業運営にかかわっていました。

今年は「未来のひな形をつくる」ということを運営チームのスローガンとして、「リーダーシッププログラムの基本形」を作り上げられるように、例年以上に大胆な内容の変更を行いました。

正直、かなりたくさんのことを変えたので、授業評価アンケートの数値などは下がることを覚悟していました。しかし、結果的に、ここ3年で一番良い結果となりました。

授業の満足度は全てのクラスの平均が4.74でした。2015年度は4.64、2014年度は4.54なので、着実にステップアップしています。他の項目についても、ほぼ全ての項目が過去最高となることができました。

もちろん、授業評価アンケートの満足度はひとつの指標にすぎません。単純に「満足度だけ」あげようと思えば、至れり尽くせりにしたりすることで達成できてしまう可能性があります。「満足度は高いが、学生の学びに本当につながっているの?」という問いも当然でてきます。

そこで、例年あわせて見ているのが「学生の自発性」にかかわる部分です。「自分からフィードバックをもらいにいく」とか「クラスの雰囲気を自分からつくる」という行動をどのくらいしているのかという部分も合わせてチェックするようにしています。

例年はこの値が、他の項目に比べて低い傾向がありました。つまり「授業の満足度は高いけど、自分からがんがん動いているか」というと、そうでもないという状態でした。ただ、今年はその部分の値に改善傾向が見られたというのが大きな進歩だと思っています。

ここ3年間コースリーダーをやってきましたが、毎年基本的な部分は残しながらも、授業を大きく変えるということに挑戦してきました。毎年授業の改善点を、受講生・教員から聞き、大胆に授業内容を変え続けることができたこと自体がまずよかったと感じています。

元々この授業は、私が着任する前から評判のよい授業であり、経営学部の学生の必修授業ということもあったので、正直変えるのはリスクもたくさんありました。気持ち的にも毎年、怖さを感じながらやっている部分があります。

「うまくいっているものを変えて、評判が下がったら明らかに自分の責任じゃないか…」とふと感じることもあるのですが、周りが「変化を恐れない・変化を奨励する」という環境なので毎年挑戦できているのかなと思います。

今年もプログラムの完成度を高めることはできましたが、まだまだ大きく成長するプログラムではないかと思います。私の立教での生活も折り返しになってきましたが、さらに大胆な変化に挑戦していけるといいなと思っています。

今後は自分の研究領域であるトランジションなどとも絡めて、うまく研究としても形にしていければとも思っています。

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■授業に関連する動画

今年の授業を受けた学生のプレゼンテーション動画です。90班チーム中の、6班に残った学生たちのプレゼンテーションがどのようなものかこれを見るとわかるかと思います。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLQMyZBV6wfSu88Cc8zEKyEmhmwW9V9DIa

BLP 教員SAミーティングのご紹介
https://www.youtube.com/watch?v=eF8NA6aBkvs

アクティブラーニングの教授スキル論から、組織開発論へ:大学から企業のトランジションに向けて

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先日、立教大学経営学部のビジネスリーダーシッププログラムの授業運営を行う教員・学生約70名で一泊二日の合宿をしてきました。

合宿の意義については、行く前にブログにも書きましたが、以下の3つです。

・育成するべきリーダーシップのゴールイメージの共有
・そのための関わり方の方向性を確認
・授業ノウハウの引き継ぎ

今回の合宿では「ゴールイメージ(受講生の状態)の共有」について、「1つの授業をどうするか」ではなく「授業間のつながり」を意識して、授業改善を考えました。具体的には「授業のゴール」を「関連する次の科目のスタート時の状態」で測ろうとしたという点が挙げられます。

例えば、「1年生向け春学期の授業の成功」を、その授業内の活動やアンケートで評価するのではなく、「1年生向け秋学期の授業でどのようにふるまっているか」で考えるということをしました。

さらに「1年生向け秋学期の授業の成功」を「2年生向け春学期の授業のスタート時の状態」で考えるというかんじで、最終的には「社会に出ているときのどのような状態になっているか」についてまで考えました。

こうしたゴールイメージの共有を教職員と学生が一体となって行うことで、目指すべき方向性がぶれずにすみます。

実際に「授業でどのような関わり方をするか」については、これらのゴールイメージの共有を行った上で、最後のワークとして行いました。最初から「方法」にいかないということはけっこう重要なことではないかと思っています。

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最近こうしたワークショップを企画していて非常によく感じるのは以下の3つの重要性です。

  • 1つの授業を工夫するだけでなく、複数の授業で総合的に学生を育てていくことの重要性
  • アクティブラーニングを行える個人手法を磨くだけでなく、アクティブラーニングの組織論が重要であること
  • 大学の授業の成果をその場で評価するのではなく、その先(社会)を見据えて実施していくこと

学生を本当に育てようとしたら、「ある一つの授業だけ」で実施するのは非常に困難です。カリキュラムとして総合的に人を育てるような体制が必要になります。そうなると、必ず他の授業担当者との連携が必要になってきます。連携するためには「チームとして何を目指すべきか」を相互に理解する必要があります。

そして、内容にももちろんよりますが、学習の評価を「その場だけのもの」とするのではなく、「次の授業のスタート状態」など、ひとつ先を見据えて実施していくことが重要になります。

それの積み重ねが、大学から社会へのトランジションへと結びついていくのではないかと思います。

教える人たちひとりひとりがアクティブラーニングの知識やスキルを身につけることももちろん大切です。というか、それはある種の前提になってくるともいえるかもしれません。ただし、少人数の学生だけでなく、多くの学生に対して、総合的に、そして社会にでてからも使える知識やスキルを身につけさせるためには、どうしても上述した3つのポイントが必要になってくるのではないかと思っています。

このあたりについては、今後研究として進めていきたいところなので、論文や書籍にまとめられるといいなと思っています。

「トランジション」については、以下の書籍でも調査・考察・実践を行いましたのでよろしければご覧くださいませ。

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グループワーク中の「沈黙」はよくないことか?

グループワークがうまくいっているかどうかを表す言葉に「盛り上がっている」という表現があります。「今日のグループワークは盛り上がった」、「今日のグループワークは盛り上がらなかった」などの表現は、授業やワークショップ後によく聞かれる言葉ではないかと思います。

しかし、この「盛り上がっている」という言葉はくせものです。例えば、「元気にたくさんの人が話をしていたから、盛り上がっている」と判断したとしても、実は議論して欲しい目的から非常にずれているということもあるかもしれません。

一方で、「盛り上がっていない」と判断されたグループにおいても、「沈黙の時間」は長いものの、しっかり頭を使って目的を意識していて、結果的に議論の目的は果たせているというケースもあります。

このように、グループワークにおける「盛り上がり」や、「沈黙」については、慎重に判断する必要があります。

じゃあどうやって判断したらいいのっていうことですが、「これ!」というのをなかなかうまく表現することは難しいです。

ただ、「沈黙」や「無表情」は「つまらない」ということを意味するとは限らないこと、さらにいえば「盛り上がり」や「笑顔」が全て学びにつながるとも限らないということを頭の片隅にいれておくことが大事かもしれません。

今日はグループワークの「沈黙」や「盛り上がり」について書きました。みなさんはグループワークの成否をどういうところで見極めていますか?

【お知らせ】

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アクティブラーニング型授業を設計するときの考え方とヒントまとめ

最近書いたアクティブラーニング型授業の設計に関する記事をまとめました!目次のようなかんじで使ってもらえればと思います!

■グループワークだけをやればいいの?講義は?個人の時間は?

■授業を実施するときのポイント・コツとは?

■そもそもを問う

■授業を改善していくためには?

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グループワークを効果的にするための「個人時間の確保」の重要性

昨日は「講義」と「グループワーク」の関係について書きました。講義とグループワークのどっちかにするというのが極端だという話です。

今日書きたいのは、「個人作業」と「グループワーク」の関係についてです。

言いたいポイントはひとつで「グループワーク」は大事だけども、その時間をもっとも有効に使うためには「個人作業」が大切ということです。これも「個人かグループか」という二分法に陥らないことが大事ということですね。

他者となにかのやりとりをすることで、新たな発見をしたり、理解が深まるというのは当然あります。よって、「全部ひとり」に比べれば、グループワークの時間を取り入れることは大切です。

しかし、個人で何かを思考する時間をゼロにしたらなにが起こるでしょうか?きっと話をしているだけで作業は進まないでしょう。個人でしっかり考えて思考を深めているからこそ、人と話す時間が有効に働くという側面は大きいと思います。

こうした視点から、最近では、立教大学の授業でも、授業時間外でグループワークをする際に「グループで集まる前に、しっかり個人作業の時間を取ること」と伝えるようにしています。何も調べずに集まっても、なかなか先に進まないからです。

昨日の議論を踏まえて、いま教育のなかで求められているデザインをシンプルに整理してみると、以下の3つを上手に配分することともいえると思います。

1.講義(知識を伝える)
2,グループワーク(他者とともに語る)
3.個人作業(ひとりで思考を深める)

1か、2か、3か、ではなく、これらの効果的な組み合わせを議論できるといいなと思っています。

思考を深める上での「ひとりの時間の重要性」や「内向性の持つ力」については、TEDのこのプレゼンテーションが参考になります。

「グループワークとかは外向的な人だけにしか向いていないんじゃないの?」とか「内向的な人はどうするの?」という疑問を持っている人にとって、この動画はいろいろな示唆があります。書籍もあわせておすすめです。

 

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「講義か、グループワークか」という極端な二分法を超えて

授業を全て講義形式にするのか、グループワーク形式にするのかという議論は、議論としてはわかりやすいですが、実際の問題はそんなにきれいにいくわけではありません。

授業時間をずーっと一方的に話しまくる(聞きまくる)というのもしんどいですし、一方で授業時間を教員がほとんど話さずずーっとグループワークという形式も実際に難しいでしょう。

にもかかわらず、どうしても近年の教育方法の議論をみていると、どっちかを選ばなくてはいけないような雰囲気があるのかなと思っています。

実際いま議論すべきはなにかといえば「講義とグループワークをどのように配分し、どのような順番で配置するか?」ということなのではないかと思います。

「講義もグループワークも両方必要だ」というと、間をとって回答していないように見えますが、どっちも必要なのは前提であり、どうそれらをデザインするかの問題のように思います。

実際に、いま私が担当している大学の授業も「グループワーク」は多いですが、実際の時間の割合からすると半分ずつくらいです。演習型の授業であっても、100%グループワークというのはそれほど多いわけではないのです。

個人的には、授業を構成するパーツが多様化したということなのかなと思っています。実際、私が授業やワークショップをデザインするときにも、だいたい15〜20分でひとまとまりのパーツを順番に配置しているという感覚です。

「20分のレクチャータイムをどこに、何個配置しようかな」
「その前に15分グループワークをしてもらって、少し頭を動かしてもらおうかな」

こういうかんじで全体をデザインしていっているのです。

Aか、Bかという議論はわかりやすいですが、実際の現状と異なって議論だけ進んでいってしまうのはもったいないことだと思います。じゃあ実際それらをどう配分していくのが一番いいのかなということを議論できると楽しいなと思っています。

 

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高校に「学問」を、大学に「教育」を:高校の先生が学び続けられる環境をつくること

先日、京都大学で行われた「大学教育研究フォーラム」に参加してきました。今年のシンポジウムのテーマは「高大連携」です。高校と大学がどう連携していくのかは今後さらに重要になっていくと思います。

今回シンポジウムが面白かったので、取り上げたいことはたくさんあるのですが、今回はその中のひとつとして『高校に「学問」を、大学に「教育」を』という話について書いてみたいと思います。

これはぼくのオリジナルな言葉ではなく、シンポジウムで登壇されていた川妻篤史先生(桐蔭学園)が発表で話されていた言葉です。

この言葉が表すことをぼくなりに一言でいえば「高校の先生が学び続けられる環境を」ということだと思います。

高校の中でもアクティブラーニングが導入され、インタラクティブかつ探究的な学びの機会が増えてきました。こうした学びの機会では「教員は答えの知っている人」としてふるまうことはできず、ある意味で「ひとりの学び手」でもあります。

「これについてどう思う?」と学生に尋ねるだけでなく「じゃあ先生はどう考えたんですか?」と言われる可能性もおおいにありますよね。教員自身も常に頭をフル回転で授業にのぞむ必要があるというわけです。

川妻先生はそうした環境を楽しんでおられるようだったのですが、それと同時に「自分自身がインプット(成長)」できる機会が必要だと感じられているのかなと思いました。

これは私自身も共感する部分があります。アウトプットの機会は非常に重要ですが、アウトプットだけしていると、どんどんとスカスカになっていきます。探究を続けていくためには、アウトプットと同時に、それと同じかそれ以上のインプットが必要になっていくわけです。

川妻先生のお話が面白かったのは、高校の先生が学び続けられる環境をつくるうえで、大学がなにか支援できる可能性を示唆されていた点です。これはひとつの高大連携のかたちなのかなと思いました。

今日は高大連携の話について書きました。

最近、私自身についても、以前に比べて高校の先生方と会う機会が増えてきました。アクティブラーニングの導入など、新たな改革が必要になり大変な部分も増えていると思うのですが、これを機会に高校教育をさらにパワーアップさせようと意欲的な先生方も多く、なにか少しでも協力できるといいなと思っています。

そのためには、まず高校の先生と、大学の教職員、さらには企業の人たちで、ざっくばらんと話をしたりするような場所も必要なのかなと思っています。今年はなにかそんな機会もつくれるといいなと思っていますので、企画したらまたブログに書きたいと思っています。

 

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