月別アーカイブ: 2011年11月

【コラム】研究テーマを決めるときの3つの視点

そろそろ私の研究室周りでは、修士1年生の方が研究テーマを具体的に決めていく時期になってきます。

色々な先行研究を読んだり、実践したりしたけれど、結局どんな具体的なテーマを選ぶのか?

これはひとつの大きな山場ではないでしょうか。

この決め方というのは色々な考え方があると思いますが、僕の中では3つの視点をベースに、その3つの重なるところを目指すといいのかなあと思っています。

今回はその3つの視点についてお話しできればと思います。

ちなみに、テーマの決め方については色々な考え方があると思うので、ひとつの考え方としてお聞き下さい。文系、理系でもまた違うと思います。

1.自分は何を問いたいのか?

当たり前ですが「これがやりたいのだ」という気持ちがないと研究はうまく進まないのかなと思います。当たり前のように聞こえそうですが、研究について色々つっこみをたくさん受けていると「研究になりそうなもの」を選びがちになるんじゃないかなと思ったりします。

「これでいいでしょ」みたいな(笑)

こうなると一見研究がカタチになっていいのですが、

「研究テーマになるけど、ほんとはあんまり興味ない」

という思いが心のどこかに残ってしまい、大事なときにふんばれない気がします。研究をカタチにすることはとっても大事なことですが、どこかにやはり「自分の思い」が練り込まれているといいですよね。別に「やりたいこと」 or 「やらなくちゃいけないこと」の二者択一ではないので、少しでいいので思いを練り込ませたいところです。

一方で、「思いだけ」では研究としてカタチにならないのもたしかです。これは次につながります。

2.実現可能性はあるのか?

修士の二年間というのは長いようで短いです。時間の長さという制約もありますし、研究を実施するためには自分の研究に協力してくれるフィールドがあるのか等も一つの制約になります。

時間、場所、お金、人、自分の持っている技術(開発できる、社会調査やったことあるなど)、などなど、自分の持っている&これから得られそうなリソースと相談して研究テーマを決めることになるのかなと思います。

思いをカタチにするためには、この実現可能性の意識というのは非常に大事になってきます。自分が現在持っているリソースや、自分がやりたいことを実施するためにはどんなリソースが必要かというのを考えてみると研究が具体的になるかもしれません。

もちろん「実現可能性だけ」を考えるとやはり「カタチになるけど、やりたくない」「カタチになるけど、それってやる意味ある?」っていうことになるので注意は必要です。

それでは思いと実現可能性があればOKなのでしょうか?

3.それをやることが社会もしくは学問分野にどのような意味があるのか?

これは自分の選んだ問いが社会的に意味があるのか、もしくは研究的に意味があるものなのかを検討するということです。(この点については学問分野によってもいろいろ考え方があると思います。)

自分の研究をすることで、どのような人にどのような貢献ができるのか?
自分の研究をすることで、研究分野にどのような貢献ができるのか?

このあたりのことを考えられると、自分のやることが「なぜ大事なのか」ということを自信を持って論じることができるかもしれません。また、研究成果が出たときに喜んでくれる人が増えるかもしれません。

もちろん「社会的・学問的に意義があるけれど、実現可能性がない」とか「社会的・学問的に意義があるけれど、俺はやりたくない」みたいなものもたくさんあるでしょうから、そのあたりは注意が必要かなと思います。

以上、3点について説明してきました。

僕の考えでは、研究テーマを選ぶときにはこの3つの要素がちょっとずつでいいから、一応全部入っているとよいのかなあと思っています。

「自分的にそれなりに興味があり、実現可能性もあり、社会的にも学問的にも意義がある。」

まあこれは少し理想的かもしれませんね(笑)

実際は、最終的に

・「実現可能性が8割」で「興味が1割」「意義が1割」とか
・「興味が8割」で「実現可能性が1割」「意義が1割」

ってこともあるかもしれません(笑)

どこがベストなのかを判断することは難しいですが、
少なくともどこかの要素が1割でもあったほうがうまくいくんじゃないでしょうか。

この3つの視点は「最終的なゴールの指標」というよりも、自分の現状を把握したり、次のアクションを考えるときに役に立つのかなとも思っています。

例えば、

・「興味ははっきりしていて、社会的・学問的にも意義があるけれど、実現可能性に問題がある」
・「実現可能性を優先しすぎて、興味や意義の部分がすっぽり抜けている」
・「社会的・学問的になにをやればいいかはなんとなくわかったけど、自分がその中でなにを、どうやって実現していいかわからない」

などの状態があるのかなと。それぞれの状態によって、やることは異なる気がしています。

ちなみに、基本的には研究のプロセスでは、こういう状態をふらふらしながら、気づいたらなんとなくテーマが決まっているものだとも思います。

そのときの状態によって、

・「これで研究としてカタチにはなるけど、やりたいの?」
・「気持ちはわかったけど、どうやってカタチにするの?」
・「この研究をだれにとどけたいの?」
・「で、なにをやりたいの?」

等々、問いかけられる質問も異なるように思います。

自分はいまどのあたりをふらふらしているのかということがわかると、なんとなく気持ちが楽になるような気がするんですけどね。テーマ決めはとても苦しいプロセスなかんじもしますが。

ということで、今回は「研究テーマを決めるときの3つの視点」について書いてみました。

テーマ決めというのは難しいので、今回紹介した方法がベストとはいえないかもしれません。ただ、なにかしら考えるリソースになればうれしいなと思っています。

うちの研究室ではこうしているとか、こういう考え方もあるよという意見等がありましたらぜひ教えて下さい。

twitter ID → @tatthiy< br />

ちなみに、ここまで書いて、学部時代の恩師である鈴木宏昭先生が「テーマの見つけ方」に関する記事を書いていたことを思い出しました。関連している部分と、僕の記事にはない視点とかがあると思いますので、合わせて読むと参考になるかもしれません。

鈴木 宏昭 ? Blog Archive ? 問題の見つけ方(1)
http://wsd.irc.aoyama.ac.jp/hiblog/suzuki/2011/04/15/%e5%95%8f%e9%a1%8c%e3%81%ae%e8%a6%8b%e3%81%a4%e3%81%91%e6%96%b9%ef%bc%881%ef%bc%89/

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【イベント】東京アートビートの7周年記念パーティーに行ってきました!

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先日のことになりますが「東京アートビートの7周年記念パーティー」に参加してきました。東京アートビートさんは、東京のアート・デザイン展のガイドとして、イベント情報、レビュー、ストアなどを提供しています。サイトは毎日更新され、常時500以上の展覧会情報を提供しているそうです。

東京アートビートの7周年記念パーティー!
http://www.tokyoartbeat.com/event/2011/56FC

東京アートビートさんには、以前依頼をうけてイベントのデザインに関してアドバイスをさせていただきました。また、イベント「PARTYstream」のゲストとして東京アートビートさんに登壇していただいたことがあります。そこで今回パーティーにご招待いただきました。

イベントは渋谷の「ディクショナリー倶楽部」で行われました。イベントは外に出店がでていたり、建物のなかでは音楽ミニライブなどが行われており、ワクワクするようなデザインになっていました。

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ミニライブにはユニクロのCM曲などを提供している「DadaD」さんがきていました!

お祭りのような雰囲気で、場所の使い方やイベントのデザインなども参考になることが多かったです。自分もまたイベントがやりたくなりましたし、今後もまたなにか一緒にコラボレーションなどできるといいなと思いました。

ちなみに今度東京アートビートでは、私が以前、少しだけ企画の設計に関わり、僕の同期である平野智紀くん(@tomokihirano)がナビゲイターをつとめる、対話式鑑賞法のイベントが実施されるようです。応募締切は11/17(木)までとのことですので興味のある方はぜひご参加下さい。

11/27(日)ミューぽんユーザー限定企画第三弾!!対話型鑑賞 in 東京都現代美術館 | TABlog | Tokyo Art Beat
http://www.tokyoartbeat.com/tablog/entries.ja/2011/11/mupon-in-mot.html

自分のことを少し振り返ると、僕は大学院に入るまでは、ほとんど美術館などに行くことはありませんでした。嫌いではなかったし、興味もあったんだけど、なんとなくハードルが高かったんですよね。行ってもなにをみたらいいのだろうみたいに(笑)前提知識もなさすぎました。

ところが同期の平野君や友達に連れられていくことで、少しずつ楽しみ方がわかり、いまでは休みの日にふらっといくことも増えてきました。そして気づいたら東京アートビートさんと仲良くさせていただいたりするようになっているわけですから、わからないものですね(笑)

以前、平野君と美術館にいったときにどうやって楽しんだらよいのかのポイントをまとめた記事がありますので、よろしければご覧下さい。

僕が「なるほど!」と思った美術館鑑賞を楽しむ5つのポイント
 – tate-lab – 教育・学習について研究する院生のblog
http://www.tate-lab.net/mt/2010/08/post-181.html

いまは興味がないという人も、ふとしたきっかけに好きになることもあると思います。休日やることないなあと思ったら、なんとなく足を運んでみるのはいかがでしょうか。

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「先行研究のまとめ方講座」を実施しました!(@青山学院大学)

先日、青山学院大学の社会人大学院生の方(修士1年)を対象に、「先行研究のまとめ方講座」を実施しました。知り合いの院生の方に依頼されて実施したのですが、自分にとっても学びの多い講座となりました。

今回実施した講座で話したトピックは大きく以下の3点です。

1.先行研究の読み込みに関するもの

こちらは以下の記事を発展させたかたちで話をしました。

僕が中原研で学んだ「先行研究の読み込み」に必要な3つのポイント
http://www.tate-lab.net/mt/2010/04/post-176.html

2.先行研究の読み方と研究の進め方の関連について

先行研究の読み方は一様ではなく、研究の時期によって少しずつ異なってきます。
ここでは自分の研究課題と、読んでいる文献が対応しているかについて検討しました。

3.先行研究を文章としてまとめる方法について

これはすでにテーマも決まって、論文やレポートを書く段階のときのことですね。
中原先生のこの記事をベースに、私なりのアレンジをして話をしました。

先行研究をまとめる5つのプロセス、陥りやすい3つの罠
http://www.nakahara-lab.net/blog/2011/10/post_1803.html

今回は時間的な制限があったり、対象が修士一年生の方でしたので、特に1の部分に焦点をあてて実施しました。

進め方としては、僕が一方的に「こうすればいい!」と話すだけでは面白くないので、

  • 事例として、実際に先行研究をまとめたレジュメをみてみる(研究室の後輩から許可を得てかりました)
  • 参加者のひとたち自身によるワーク(これまで読んだ研究を整理する)

などを取り入れて実施しました。全体で約2時間ですね。
2,3についてはあまり触れられませんでしたが、1の活動をよりよいものにするためにも、今後の流れを意識しておくのは大事かなと思いました。

私はもともとアカデミック・ライティングに関する研究をしていたり、専修大学でも関連する非常勤をしたりしているのですが、こうした講座をあらためてやるのは少し緊張しました(笑)

自分自身も試行錯誤しているものなので、「お前が教えられるのか!」というお叱りも飛んできそうですが、やれるだけのことはやりました(笑)

こうやってノウハウとして人に話せるのは、自分が元々できたからではなく、「全然できなくて試行錯誤してやっとのことである程度できるようになってきたから」こそだと思います。

ちなみに、今回内容をつくるにあたって気づいたのですが、大学の初年次生を対象にした「大学での学び方」「スタディスキル」の本などはたくさんでていますが、意外に修士の学生にぴったりのテキストというのは少ないなと思いました。そのため、内容はわりと独自で考えたものが多かったと思います。

参加者の感想としては、

  • 自分がいかにいままで先行研究を読んだ気になっていたのかわかった
  • これまで読んだフリをしていただけだったんだな・・・
  • 自分が読んでいた先行研究をあらためてメタに振り返る機会になってよかった
  • 具体的に自分が研究をどう進めていくかという具体的なイメージが湧いた

などがありました。うれしいコメントですね。
コメントをもとに、少しずつ改良していこうと思います。

ちなみにこの講座は今度千葉大学で実施する予定です。
こちらも依頼を受けたもので、現在詳細については検討中です。
今回の内容とまた少し違ったかたちになるかもしれません。

他にももし「うちでもやってほしい!」という方がおりましたら、以下のお問い合わせからご連絡下さい。
日時、内容、条件などについてご相談できればと思います。

お問い合わせ – tate-lab
http://www.tate-lab.net/mt/contact/

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