タグ別アーカイブ: 組織開発

リーダーシップ教育を導入するためのリーダーシップ

「リーダーシップ教育を新たな現場に導入していく」という場合に、「学生にどのようにリーダーシップ教育をしていくのか」という方法の話をしたくなるわけですが、結局これは「リーダーシップ教育を導入しようとする人の、リーダーシップの旅のはじまり」なのだということ最近あらためて感じます。

もう少しわかりやすくいえば、「学生のリーダーシップを高める」というミッションを遂行するために、教員同士がリーダーシップを発揮し合う環境ができあがるということなのですよね。つまり、我々は一見「学生の」リーダーシップの話をしているつもりではあるものの、「私たち自身がどのようにリーダーシップを発揮するべきか」という議論をしているともいえるわけです。

そのように考えると、元々「学生にどのようなリーダーシップを身につけさせるべきか」という視点で議論している「権限がなくても発揮できるリーダーシップ」や、「リーダーシップの最小三要素:率先垂範・目標共有・同僚支援」は、導入する側の自分自身のチェックシートとしても本当は機能することになりますね。例えばこんなかんじです。

・率先垂範:リーダーシップ教育に自分自身が積極的に取り組み、やり方を他者に示す
・目標共有:学生がどのような状態になっていたらよいのかというビジョンの設定・共有をおこなう
・同僚支援:導入のハードル高いと思っている人の障害を取り除く

これはリーダーシップ教育だけにかぎらず、アクティブラーニングの手法を取り入れようとするときにも同じかもしれませんね。

・やれというあなたはやる覚悟があるのか?(率先垂範)
・そもそも私たちはどのような学生を育てようとするのか?(目標共有)
・実現のための障害はどのような点で、それをどのように除去するのか?(同僚支援)

こうしたことを意識してみると、自分自身のリーダーシップの開発につながり、ミッションの達成にも近づくのかもしれません。

私もリーダーシップ教育に携わって3年目ですが、やっていて一番感じるのは「自分自身のリーダーシップが問われている」という点です。緊張感もありますが、自分のリーダーシップを向上させるためには最高の環境でもあると感じています。

「新たな教育方法の導入」というのはなかなかハードルの高いミッションかもしれませんが、これ自体が自分自身のリーダーシップを向上させるプロジェクトなのだと思うと、また捉え方がかわってくるのではないでしょうか。

リーダーシップの最小三要素のもととなっている書籍です。

リーダーシップ・チャレンジ[原書第五版]
ジェームズ・M・クーゼス James M. Kouzes バリー・Z・ポズナー Barry Z. Posner
海と月社
売り上げランキング: 16,240

私の執筆した「アクティブトランジション」もよろしければあわせてどうぞ。

アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ
舘野 泰一 中原 淳 木村 充 浜屋 祐子 吉村 春美 高崎 美佐 田中 聡 保田 江美
三省堂
売り上げランキング: 35,597

今年の「リーダーシップ入門」の授業を振り返る:授業評価アンケートの結果から

20160719_5574

今年の春学期の授業が無事に終了しました。春学期に私がメインで担当している授業は「リーダーシップ入門(通称BL0)」という1年生向け授業です。この授業は経営学部の1年生約400人全員が受講するもので、18クラスに分かれ、教員18名、Student Assistant18名、Course Assistant 14名で実施します。写真は授業運営メンバーと撮ったものです。

私の役割は、授業内容の責任者(コースリーダー)なので、各クラス共通で使用するスライドを作成したり、SA・CAの採用・育成をしたりしていました。

今年で私がコースリーダーを担当して3年目となります。3年というのはひとつの節目になると思いますので、今年は例年とはまた違った緊張感を持って授業運営にかかわっていました。

今年は「未来のひな形をつくる」ということを運営チームのスローガンとして、「リーダーシッププログラムの基本形」を作り上げられるように、例年以上に大胆な内容の変更を行いました。

正直、かなりたくさんのことを変えたので、授業評価アンケートの数値などは下がることを覚悟していました。しかし、結果的に、ここ3年で一番良い結果となりました。

授業の満足度は全てのクラスの平均が4.74でした。2015年度は4.64、2014年度は4.54なので、着実にステップアップしています。他の項目についても、ほぼ全ての項目が過去最高となることができました。

もちろん、授業評価アンケートの満足度はひとつの指標にすぎません。単純に「満足度だけ」あげようと思えば、至れり尽くせりにしたりすることで達成できてしまう可能性があります。「満足度は高いが、学生の学びに本当につながっているの?」という問いも当然でてきます。

そこで、例年あわせて見ているのが「学生の自発性」にかかわる部分です。「自分からフィードバックをもらいにいく」とか「クラスの雰囲気を自分からつくる」という行動をどのくらいしているのかという部分も合わせてチェックするようにしています。

例年はこの値が、他の項目に比べて低い傾向がありました。つまり「授業の満足度は高いけど、自分からがんがん動いているか」というと、そうでもないという状態でした。ただ、今年はその部分の値に改善傾向が見られたというのが大きな進歩だと思っています。

ここ3年間コースリーダーをやってきましたが、毎年基本的な部分は残しながらも、授業を大きく変えるということに挑戦してきました。毎年授業の改善点を、受講生・教員から聞き、大胆に授業内容を変え続けることができたこと自体がまずよかったと感じています。

元々この授業は、私が着任する前から評判のよい授業であり、経営学部の学生の必修授業ということもあったので、正直変えるのはリスクもたくさんありました。気持ち的にも毎年、怖さを感じながらやっている部分があります。

「うまくいっているものを変えて、評判が下がったら明らかに自分の責任じゃないか…」とふと感じることもあるのですが、周りが「変化を恐れない・変化を奨励する」という環境なので毎年挑戦できているのかなと思います。

今年もプログラムの完成度を高めることはできましたが、まだまだ大きく成長するプログラムではないかと思います。私の立教での生活も折り返しになってきましたが、さらに大胆な変化に挑戦していけるといいなと思っています。

今後は自分の研究領域であるトランジションなどとも絡めて、うまく研究としても形にしていければとも思っています。

アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ
舘野 泰一 中原 淳 木村 充 浜屋 祐子 吉村 春美 高崎 美佐 田中 聡 保田 江美
三省堂
売り上げランキング: 17,837

■授業に関連する動画

今年の授業を受けた学生のプレゼンテーション動画です。90班チーム中の、6班に残った学生たちのプレゼンテーションがどのようなものかこれを見るとわかるかと思います。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLQMyZBV6wfSu88Cc8zEKyEmhmwW9V9DIa

BLP 教員SAミーティングのご紹介
https://www.youtube.com/watch?v=eF8NA6aBkvs

アクティブラーニングの教授スキル論から、組織開発論へ:大学から企業のトランジションに向けて

IMG_0716

先日、立教大学経営学部のビジネスリーダーシッププログラムの授業運営を行う教員・学生約70名で一泊二日の合宿をしてきました。

合宿の意義については、行く前にブログにも書きましたが、以下の3つです。

・育成するべきリーダーシップのゴールイメージの共有
・そのための関わり方の方向性を確認
・授業ノウハウの引き継ぎ

今回の合宿では「ゴールイメージ(受講生の状態)の共有」について、「1つの授業をどうするか」ではなく「授業間のつながり」を意識して、授業改善を考えました。具体的には「授業のゴール」を「関連する次の科目のスタート時の状態」で測ろうとしたという点が挙げられます。

例えば、「1年生向け春学期の授業の成功」を、その授業内の活動やアンケートで評価するのではなく、「1年生向け秋学期の授業でどのようにふるまっているか」で考えるということをしました。

さらに「1年生向け秋学期の授業の成功」を「2年生向け春学期の授業のスタート時の状態」で考えるというかんじで、最終的には「社会に出ているときのどのような状態になっているか」についてまで考えました。

こうしたゴールイメージの共有を教職員と学生が一体となって行うことで、目指すべき方向性がぶれずにすみます。

実際に「授業でどのような関わり方をするか」については、これらのゴールイメージの共有を行った上で、最後のワークとして行いました。最初から「方法」にいかないということはけっこう重要なことではないかと思っています。

IMG_0724

最近こうしたワークショップを企画していて非常によく感じるのは以下の3つの重要性です。

  • 1つの授業を工夫するだけでなく、複数の授業で総合的に学生を育てていくことの重要性
  • アクティブラーニングを行える個人手法を磨くだけでなく、アクティブラーニングの組織論が重要であること
  • 大学の授業の成果をその場で評価するのではなく、その先(社会)を見据えて実施していくこと

学生を本当に育てようとしたら、「ある一つの授業だけ」で実施するのは非常に困難です。カリキュラムとして総合的に人を育てるような体制が必要になります。そうなると、必ず他の授業担当者との連携が必要になってきます。連携するためには「チームとして何を目指すべきか」を相互に理解する必要があります。

そして、内容にももちろんよりますが、学習の評価を「その場だけのもの」とするのではなく、「次の授業のスタート状態」など、ひとつ先を見据えて実施していくことが重要になります。

それの積み重ねが、大学から社会へのトランジションへと結びついていくのではないかと思います。

教える人たちひとりひとりがアクティブラーニングの知識やスキルを身につけることももちろん大切です。というか、それはある種の前提になってくるともいえるかもしれません。ただし、少人数の学生だけでなく、多くの学生に対して、総合的に、そして社会にでてからも使える知識やスキルを身につけさせるためには、どうしても上述した3つのポイントが必要になってくるのではないかと思っています。

このあたりについては、今後研究として進めていきたいところなので、論文や書籍にまとめられるといいなと思っています。

「トランジション」については、以下の書籍でも調査・考察・実践を行いましたのでよろしければご覧くださいませ。

アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ
舘野 泰一 中原 淳 木村 充 浜屋 祐子 吉村 春美 高崎 美佐 田中 聡 保田 江美
三省堂
売り上げランキング: 67,545