大学生研究フォーラム2016に参加しています。今回は完全に参加者なので、感想をまとめつつ参加したいと思います。

今回のテーマは「経験で終わるな、メタに上がれ!―わたしのメタラーニング宣言―」です。
http://www.dentsu-ikueikai.or.jp/transmission/forum/outline/

近年の教育方法は、経験学習的な考えがベースになっているので、結局のところ「体験前の目標設定」「フィードバック」「振り返り」をどのようにデザインするかという議論にならざるを得ないのだろうと思います。今回はそのあたりがポイントなのかなと思って参加しました。

フォーラムはまず村上正行先生の導入でスタートします。全体の流れがわかり、おだやかな雰囲気が会場にできあがったと思います。「聞く、聞く、聞く、帰る」じゃないという話は、お馴染みワードですが、中原先生ではなく、村上先生が言うとなにか違った雰囲気があってよかったです笑

一人目の講演者は、中原淳先生です。最初に経験学習の理論の紹介、次に事例、最後に経験学習の今後について話をされました。中原先生がまとめた「経験学習の理論的系譜と研究動向」についてはこちらで論文が読めます。

経験学習論をベースにした議論をすごく簡単にまとめてしまうとこんなかんじかと。

・体験が学びになるためには振り返りが必要
・振り返りを導入するワークは広まってきたけど、深い振り返りができていない
・深い振り返りのためには、問いや論理思考が重要

さらにこれを5・7・5でまとめるとこんなかんじなのかなと思います笑

振り返り ないならやろう いますぐに
適当に やるとこけるよ 振り返り
振り返り 深めるコツは 問いと思考

最後に中原先生は「経験学習バブルの危険性」についてお話しします。たしかに、教育の議論は振り子のようにふれていきます。「体験だけ大事」という反知性主義に陥る罠についてはしっかり考える必要があるだろうと思いました。

二人目の講演者は、溝上慎一先生です。溝上先生は「メタ」ということについて、認知心理学などの知見をもとに解説してくださっています。「メタ認知とは?実践知とは?」に関する学問的知見の紹介です。

キーワードをみても「推論」「概念」「省察」「批判的思考」と、よい意味で「体験」「経験」とは一見異なるようなキーワードが並びます。

体験が大事という話と、批判的思考が大事という議論はついつい二者択一の議論にもなりがちだと思うのですが、これらが両方必要になってくるというのは大切な認識だと思われます。

続いて、調査の結果を報告です。ここでは舘野の研究も色々と紹介していただきうれしかったです。

acitve

調査結果で面白いのは「職場の能力向上」をもっとも説明するのは「批判的思考」だった(.585)という点です。これはなかなか面白い結果だと思います。プロアクティブ行動も.231とのことなので、大事であることがわかります。

最後に大学の教育方法の話で、「卒論」の重要性などが語られました。深い学びをするためには「つなぐ」ということ大事で、そのひとつにストーリー化があるというのは面白いですね。

事例のひとつとして、立教大学経営学部のBLPの話も紹介していただき感謝です。

以上が午前中のざっとしたまとめです。ぼくなりの解釈で書いているところもあるので、あくまで舘野解釈として読んでいただければと思います。

中原先生、溝上先生のプレゼンスタイルの違いも、とても面白く聞かせていただきました笑

通底しているのは、「体験」は重要でありながら、それを学びにつながるために何が必要かという話だったと思います。その際に、「メタとは何か」「振り返りとは何か」、そしてそれらをどのようにデザインするのかがポイントだったと思います。

結局のところ経験から学ぶためには「批判的思考」などの思考や推論が欠かせませんし、自分の思考のサイクルそのものを捨てる「アンラーニング」などが必要になります。「体験」を作り出すだけでなく、これらの力の必要性を認識して、これらを支援する環境をいかにつくるのかがポイントになるのかもと思います。

こんなことを考えながら午後につなげていきたいと思います。

午前に出ていた書籍の一部も紹介しておきます。

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