昨日International Leadership Associationのカンファレンスの話を書いたのでその続きです。

リーダーシップに関する実践においても、その効果をどう検証するかということは一つの重要なトピックとして取り上げられています。

では論点はどこにあるのか?その論点はリーダーシップ開発に限らず、現在の大学における教育実践の評価で言われていることと基本的に同じだと感じました。

ポイントは以下の3つです。

1.統制群を置かない中でどう評価するか?
2.学生の学習を促進する評価方法とは?
3.大学卒業後にどのようなインパクトがあるのか?

それぞれについて説明してみましょう。

1.統制群を置かない中でどう評価するか?

統制群を置かない(おけない)という理由は大きく2つの理由があげられると思います。1つ目は、実験状況ではなく、教育実践そのものを対象にした場合、「要因」を特定することが難しいからです。その特定ができないと統制群を置くことが難しくなります。2つ目は、統制群を置くという倫理的な理由からだと思います。統制群に入った学生は、有効であると考えられている方法を体験できないわけで、そういうことはありなの?ってことです。

リーダーシップ開発における評価でも状況は同じであるように思いました。統制群を置かない中でどうやってプログラムの評価をするのかというところを検討しているようでした。

2.学生の学習を促進する評価方法とは?

評価の方法は、その目的によって異なります。「学生がある一定の成長をしたのか」を選別する評価なのか、はたまた「プログラムの改編」や「学生をさらに成長させるため」の評価なのかで、何をどのように測定するかは異なります。教育学系の言葉でいえば「総括的評価」と「形成的評価」の違いといえるでしょう。

リーダーシップ開発における評価でも、「目的を意識して、それにあわせた評価をしよう」ということや、「プログラムの改編」や「学生の成長」に資する評価を考えていこうということが言われていたように思います。

3.大学卒業後にどのようなインパクトがあるのか?

近年の大学教育では、大学教育の成果を「卒業後の成果」で測ろうとする動きが増えてきています。私自身も「トランジション調査」などをもとに研究を進めています。

リーダーシップ開発における評価でも、「キャリアディベロップメント」という言葉がタイトルに入るなど、大学卒業後にどのようなインパクトがあるかを測定しようという動きがあるように感じました。

冒頭で述べたとおり、この3つはリーダーシップに関する実践だけでなく、大学教育の実践に関わる評価に共通して見られる論点であるように思います。その意味では、自分がこれまで研究してきたやり方などをうまく活かすことができるかもしれないと考えています。

一方で、「リーダーシップ開発」というジャンル特有の問題や論点も存在すると思います。そのあたりについては今回の記事では少し長くなってきたので、また今後書いてみたいと思います。

【関連する文献】

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Leadership (International Student Edition): Theory and Practice
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