「他者と協力する」というと、同じグループや組織で「共通の目的を達成するときのこと」を最初にイメージするかなと思います。例えば、大学の授業などでいえば、4人グループを作って、1つのアウトプットを作るために協力しあうというかんじです。これは一番わかりやすいですよね。プロジェクト型学習はたいていこのタイプだと思います。

一方、「文章を書く」とか「本を読む」というと、一見「他者と協力する」というイメージはないですよね。これらは「個人でやること」のように思います。しかし、一見ひとりでやることについても「他者と協力関係」をつくることでうまく学ぶことができます。

例えば、「文章を書く」ということを考えてみます。私たち研究者は論文や書籍を書くことがひとつの仕事ですが、「文章をひとりで書いて、ひとりでチェックして、提出する」ということはまずありえません。必ず書き上げたら、だれかにチェックをしてもらい、それをもとに修正を行って、アウトプットの質を高めていきます。

もちろん「書く」という行為そのものはひとりで行う作業です。しかし、書いている途中に「これ、意味分かるかな?」とちょっと聞いてみたり、そもそも「この日までに絶対原稿書くんで見てもらえる?」とアポをとって自分に締め切りをつくったりと、色々なところで「他者と協力することのメリット」があるんですよね。

つまり、「グループのタスク」ではなく「個人のタスク」であっても、「他者と協力関係を作ること」によって、アウトプットの質を高めたり、自分の成長につなげていくことができるというわけです。

こういう協力関係をつくることも、ひとつのリーダーシップのあり方だと思います。グループ全体のタスクではないのに、相手が協力してくれるというためには、Win-Winになるような関係作りが必要になります。例えば、自分の文章をチェックしてもらう代わりに、相手の文章を読んで、問題点を指摘してあげるといった具合です。

個人としてよい成果をあげている人の周りには、こうした「一見見えない人間関係」が隠れているのではないかと思います。

私自身も大学院時代からこうした関係作りは意識してきました。いろんなことをやってきましたが、例えば、朝型生活を続けるために、午前中に研究室メンバーで集まり、「この1時間はこれはをやる!」と宣言してから研究を活動とかをやっていました。

これも、それぞれがやっていることは個人ワークなので、共通の課題を解いているわけではありません。しかし、「他者とやること」によって、生活のリズムを作ったり、「ちょっとわからないな」と思ったことがあったときに、すぐに相談して解決してしまうということができました。こういう仕組みをつくることで、ひとりだとどうしても長続きしないことをみんなと一緒に乗り切るということをしていました。

一見「個人でやること」も、他者との協力関係をつくることでより楽しく、成果を出せるかたちにできると思います。なにかやりたいけどうまくいかないなあという人は、周りを見渡して一緒にがんばるコミュニティをつくってみてはいかがでしょうか?

 

============
【ちなみに・・・】
立教の経営学部の学生さんたちにとっては、「共通の目的を達成するリーダーシップ」を学ぶのが前期のBL0、「自分の成長のために他者と協力関係をつくるリーダーシップ」を学ぶのが後期のBL1、と位置づけることができるかなと思います。詳しくはまた授業で。
============

■リーダーシップ系の書籍