IMG_0177.jpg

少し時間が経ってしまいましたが、先日「対話型鑑賞法を甘太郎で!?あたらしいアートのかたち・飲み会のかたち」というイベントを実施しました。この企画は、普通の居酒屋で、普通のコースを頼んで飲みながらアートを楽しもうよというものです。

「あたらしいアートの楽しみ方」ともいえるかもしれませんし、「あたらしい飲み会の楽しみ方」ともいえるかもしれません。

この企画では、あくまで「飲み会」がメインで、余興としてアートを楽しむひとつの方法である「対話型鑑賞法」を体験するということにしました。たとえが正しいかよくわかりませんが飲み会で山手線ゲームとかをする感覚で、飲み会で「対話型鑑賞法をする」というかんじです。

対話型鑑賞法とは「みる」「かんがえる」「はなす」「きく」という4つを基本にしながら、美術の知識だけに頼らず、みる人同士の対話を通して、作品の理解を深めていくための鑑賞方法です。当日は対話型鑑賞法のナビゲーションを平野智紀さん、三宅正樹さんがやってくれました。この企画自体も一緒に考えて実施しました。

■おしゃれ居酒屋ではなく「甘太郎」

今回の企画では、お店もおしゃれ居酒屋ではなく、大学生のときに一度はお世話になったはずの「甘太郎」さんで実施しました。当日は約20名の方が参加してくださいました。

どのような作品を鑑賞したのかについては、平野智紀さんがブログに書いてくれているので、ぼくは「なんでそもそもこんな企画をやったの?」ということについて書きたいと思います。

■ アートをひらくとは?

ぼくが今回のイベントをつくる上で意識したのは「アートに興味のない人にきてもらう」ということでした。ぼくはアートの専門家ではまったくないのですが、よくアート系のイベントを実施している人から「アートに興味のない人を呼びたいけれど難しい」といったような話をよく聞くことがあったので、そういう問題をどうにか解決できないかなと思っていました。

これはアートに限らず「○○をひらく」ということをする場合には全てに関連してくるものだと思います。なんとか多くの人に知ってもらいたいのだけど、結局好きな人がより好きになるだけだという問題をどうやったら解決できるのかという点に興味をもっていました。

■「アートイベントをカジュアルに」ではなく

そこでぼくが考えたのが「主従関係の逆転」でした。「アートイベントをカジュアルに」という方向性ではなく、「カジュアルな場所にアートをいれればいいのではないか」という発想です。

なので人に誘うときにも「飲み会があるからこない?」と誘います。そして飲み会のなかでやることがちょっと他と違うのだけどというかんじで、対話型鑑賞法の話をするのです。

場所の選定にもこだわりました。おしゃれな居酒屋でやってももちろんいいのですが、アートと遠そうな場所がいいだろうと考えました。そこで今回は、大学生のときに大変お世話になった渋谷の甘太郎さんをチョイスさせていただきました。なぜ和民ではなく甘太郎かというと、なんとなく「対話型鑑賞法を甘太郎で」という響きがいいかなと思ったからです(笑)

■邪道かもしれないけれど

当日は居酒屋のカラオケルームで対話型鑑賞をしました。最初は適当に飲んでいて、途中で対話型鑑賞をして盛り上がるというかんじです。

鑑賞する絵は印刷されたものだし、気づいたらポテトフライやメニューの下に置かれているし、間違いなくアート業界のひとには怒られるだろうなとも思いました。ただ、これをきっかけに本物を見に行きたいという人もいたりしました。

これは「ひらく」っていうことはどういうことなのかを考えさせられる場面でもありました。「○○をひらく」という言葉に悪いニュアンスはありません。しかし、ひらく場合に、どこまでどう開きたいのかということは考えるべき点であるのかなと思います。ひらくということはある意味でいえば、特権性を解放することでもあると思いますし。このあたりについては今後も考えていきたい点として残りました。

■ぼくがデザインしているのはアートイベント?それとも飲み会?

今回のポイントは「主従関係の逆転」でした。学びのイベントを飲み会やカフェといったリラックスした場所に近づけていくのではなくて、元々リラックスした場所にあわせて学びの要素を取り入れればいいのではないかと思ったんですね。言ってみれば同じことなんですが、それでも主従が逆になると全然出来上がってくるものも異なるのではないかと思っています。

そうやって考えてみると、ぼくは「アートイベント」のデザインをしているのか、「飲み会」のデザインをしているのかよくわからなくなってくるんですよね。まあ別にどっちでもいいのですが。学びの場を楽しくするのか、楽しい場が学びに溢れるのかという問いについてはあらためて色々と考えてしまいました。

ちなみに、ぼくは今後もこの発想をもとに、アート系に関するものだけではなく、他のエッセンスを取り入れた飲み会を企画していきたいと思っています。次回は即興演劇(インプロ)を取り入れた会を実施しようかなと思っています。もちろん対話型鑑賞法を取り入れたものも実施予定です。興味のある方は是非お声がけくださいませ。