a0001_001830.jpg

大学の歴史シリーズ第三弾です。これまで、12世紀の大学のはじまりについてや、中世で行われていた「スコラ学」について書いてきました。この時代はどちらかといえば「大学が生まれて、拡大していく」時代でした。

しかし、その後の16世紀から18世紀くらいにかけて、大学には危機が訪れます。今日はその危機について少し書いてみようと思います。今回の参考文献も「大学の歴史」です。

大学の歴史 (文庫クセジュ)
クリストフ シャルル ジャック ヴェルジェ
白水社
売り上げランキング: 306973

近代(16世紀から18世紀)における大学の危機を非常に簡単にまとめるならば以下の3つのポイントがでてくるといえるでしょう。

1.大学が時代遅れの教育を続けている!

中世の時代から変わらず古い典拠を使っていることや、大学の外で起きた革新的な流れを取り入れていないのではないか、という批判を受ける。

2.あらたな発明や発見は「大学の外」で行われていた!

この時代の大学は先端的なものではなく、あらたな発明や発見は大学の外で行われていた。大学の外の場として、近代になると学者たちの研究や知的革新のためのあらたな公共空間が出現した。
例)アカデミー、学会、図書館、宮廷、サロンなど

3.学位が簡単にとれてしまう!
学位の取得が容易になっていた。学生の出席率は低く、それにより教師も欠勤することが多かったため、講義や討論は実質行われていないこともあった。簡単に学位がとれてしまうので、学位が知的能力を裏付けるものでなくなってしまった。(特に当時学生の多かった法学部ではその傾向が強かったとのこと)

昔も大学にはこんな時期があったんですねえ。教えている内容が古く、大学は「先進的なものを作り出す場所」でなくなり、大学を卒業したときにもらえる「学位」の価値がなくなってしまう。なんだか昔のこととは思えない部分もあります。

こうした問題から大学改革が必要という流れになります。参考文献によれば、一般的に、大学の近代化は、大学が国家や職業の需要にこれまで以上に適応するかたちをとるそうです。これもある意味いまっぽいかんじもしますね。

個人的には「新しい発見などが行われていたのは大学以外だった」というのはびっくりしました。現在も、大学以外の学びの場というのはどんどん拡大しているように思います。もちろん近代のように、新たな知の発見が大学以外でばかり起こるような状態にはなっていませんけれどね。

大学の外の学びの場が増えてきたときに、大学はどんな役割を担うのか、そもそも大学以外の場所としてどのようなものが生まれ、それらはどんな役割を担うのかは非常に興味のあるところです。

私が個人的に思うのは「ワークショップ」という学びの方法などが着目されるのも「その方法自体の新しさ」だけではなく、現在行われている「フォーマルな学びの場」と「ノンフォーマルな学びの場」の関係が変化しているという大きな流れも影響しているように思います。

ということで、歴史を振り返ることは、現在を考えるひとつのリソースになりますよね。どこまで続くかわかりませんが、大学の歴史シリーズも少しずつ継続してブログに書いていこうと思います。

■最近書いた関連記事
「大学の歴史」から「これからの学び」を考える
「中世の大学」の教育方法から現代を考えてみる

■関連する本

大学の歴史 (文庫クセジュ)
クリストフ シャルル ジャック ヴェルジェ
白水社
売り上げランキング: 306973
大学とは何か (岩波新書)

大学とは何か (岩波新書)

posted with amazlet at 12.12.01
吉見 俊哉
岩波書店
売り上げランキング: 40790