そろそろ私の研究室周りでは、修士1年生の方が研究テーマを具体的に決めていく時期になってきます。

色々な先行研究を読んだり、実践したりしたけれど、結局どんな具体的なテーマを選ぶのか?

これはひとつの大きな山場ではないでしょうか。

この決め方というのは色々な考え方があると思いますが、僕の中では3つの視点をベースに、その3つの重なるところを目指すといいのかなあと思っています。

今回はその3つの視点についてお話しできればと思います。

ちなみに、テーマの決め方については色々な考え方があると思うので、ひとつの考え方としてお聞き下さい。文系、理系でもまた違うと思います。

1.自分は何を問いたいのか?

当たり前ですが「これがやりたいのだ」という気持ちがないと研究はうまく進まないのかなと思います。当たり前のように聞こえそうですが、研究について色々つっこみをたくさん受けていると「研究になりそうなもの」を選びがちになるんじゃないかなと思ったりします。

「これでいいでしょ」みたいな(笑)

こうなると一見研究がカタチになっていいのですが、

「研究テーマになるけど、ほんとはあんまり興味ない」

という思いが心のどこかに残ってしまい、大事なときにふんばれない気がします。研究をカタチにすることはとっても大事なことですが、どこかにやはり「自分の思い」が練り込まれているといいですよね。別に「やりたいこと」 or 「やらなくちゃいけないこと」の二者択一ではないので、少しでいいので思いを練り込ませたいところです。

一方で、「思いだけ」では研究としてカタチにならないのもたしかです。これは次につながります。

2.実現可能性はあるのか?

修士の二年間というのは長いようで短いです。時間の長さという制約もありますし、研究を実施するためには自分の研究に協力してくれるフィールドがあるのか等も一つの制約になります。

時間、場所、お金、人、自分の持っている技術(開発できる、社会調査やったことあるなど)、などなど、自分の持っている&これから得られそうなリソースと相談して研究テーマを決めることになるのかなと思います。

思いをカタチにするためには、この実現可能性の意識というのは非常に大事になってきます。自分が現在持っているリソースや、自分がやりたいことを実施するためにはどんなリソースが必要かというのを考えてみると研究が具体的になるかもしれません。

もちろん「実現可能性だけ」を考えるとやはり「カタチになるけど、やりたくない」「カタチになるけど、それってやる意味ある?」っていうことになるので注意は必要です。

それでは思いと実現可能性があればOKなのでしょうか?

3.それをやることが社会もしくは学問分野にどのような意味があるのか?

これは自分の選んだ問いが社会的に意味があるのか、もしくは研究的に意味があるものなのかを検討するということです。(この点については学問分野によってもいろいろ考え方があると思います。)

自分の研究をすることで、どのような人にどのような貢献ができるのか?
自分の研究をすることで、研究分野にどのような貢献ができるのか?

このあたりのことを考えられると、自分のやることが「なぜ大事なのか」ということを自信を持って論じることができるかもしれません。また、研究成果が出たときに喜んでくれる人が増えるかもしれません。

もちろん「社会的・学問的に意義があるけれど、実現可能性がない」とか「社会的・学問的に意義があるけれど、俺はやりたくない」みたいなものもたくさんあるでしょうから、そのあたりは注意が必要かなと思います。

以上、3点について説明してきました。

僕の考えでは、研究テーマを選ぶときにはこの3つの要素がちょっとずつでいいから、一応全部入っているとよいのかなあと思っています。

「自分的にそれなりに興味があり、実現可能性もあり、社会的にも学問的にも意義がある。」

まあこれは少し理想的かもしれませんね(笑)

実際は、最終的に

・「実現可能性が8割」で「興味が1割」「意義が1割」とか
・「興味が8割」で「実現可能性が1割」「意義が1割」

ってこともあるかもしれません(笑)

どこがベストなのかを判断することは難しいですが、
少なくともどこかの要素が1割でもあったほうがうまくいくんじゃないでしょうか。

この3つの視点は「最終的なゴールの指標」というよりも、自分の現状を把握したり、次のアクションを考えるときに役に立つのかなとも思っています。

例えば、

・「興味ははっきりしていて、社会的・学問的にも意義があるけれど、実現可能性に問題がある」
・「実現可能性を優先しすぎて、興味や意義の部分がすっぽり抜けている」
・「社会的・学問的になにをやればいいかはなんとなくわかったけど、自分がその中でなにを、どうやって実現していいかわからない」

などの状態があるのかなと。それぞれの状態によって、やることは異なる気がしています。

ちなみに、基本的には研究のプロセスでは、こういう状態をふらふらしながら、気づいたらなんとなくテーマが決まっているものだとも思います。

そのときの状態によって、

・「これで研究としてカタチにはなるけど、やりたいの?」
・「気持ちはわかったけど、どうやってカタチにするの?」
・「この研究をだれにとどけたいの?」
・「で、なにをやりたいの?」

等々、問いかけられる質問も異なるように思います。

自分はいまどのあたりをふらふらしているのかということがわかると、なんとなく気持ちが楽になるような気がするんですけどね。テーマ決めはとても苦しいプロセスなかんじもしますが。

ということで、今回は「研究テーマを決めるときの3つの視点」について書いてみました。

テーマ決めというのは難しいので、今回紹介した方法がベストとはいえないかもしれません。ただ、なにかしら考えるリソースになればうれしいなと思っています。

うちの研究室ではこうしているとか、こういう考え方もあるよという意見等がありましたらぜひ教えて下さい。

twitter ID → @tatthiy< br />

ちなみに、ここまで書いて、学部時代の恩師である鈴木宏昭先生が「テーマの見つけ方」に関する記事を書いていたことを思い出しました。関連している部分と、僕の記事にはない視点とかがあると思いますので、合わせて読むと参考になるかもしれません。

鈴木 宏昭 ? Blog Archive ? 問題の見つけ方(1)
http://wsd.irc.aoyama.ac.jp/hiblog/suzuki/2011/04/15/%e5%95%8f%e9%a1%8c%e3%81%ae%e8%a6%8b%e3%81%a4%e3%81%91%e6%96%b9%ef%bc%881%ef%bc%89/

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