8/1に京都大学にて行われた「大学生研究フォーラム」に参加してきました。このフォーラムは今年で4回目の開催となります。今回は「現代大学生の学びとキャリアをデータと実践を架橋して理解する」ということをテーマに実施されました。

今回は私の指導教員である中原淳先生がファシリテーターとして午後からのシンポジウムを行いました。

シンポジウムは、最初に溝上慎一先生と下村英雄先生による報告がありました。報告をざっと要約すると以下になります。

○溝上先生のご発表
・大学生を「大学生全体」として括るのではなく、タイプ分けして検討する
・タイプ分けには3つの種類がある
1.授業の時間・授業時間外・自主学習の時間から見る3つのタイプ
2.1週間の時間の使い方から分けた学生のタイプ
3.将来の見通しと理解実行に関するタイプ(2つのライフ)

○下村先生のご発表
・大卒者の初期キャリアと大学の学びを媒介するもの
・例えば、どのような大学生活をした人がどのような就職先を選び、年収がどうかなど
・対人志向・勉学志向の高低でどのような進路を選ぶのかなど

詳しくは当日のツイートのまとめがありますので文末にリンクを貼っておきます。

今回私は溝上先生や下村先生による調査をみることで、「大学生全体」についての理解を深めることができたと思います。

すなわち、「大学生」について、全体をひとくくりにするわけでもなく、自分の知っている大学生だけを検討するだけでもなく、全体を大きく類型するとどのようなタイプにわかれるのか、どのようなタイプがポジティブな結果につながっているか等を知ることができました。

しかし、その一方で「じゃあ大学ができることってなんなんだろうか?」ということについてはかなり「うーん・・・」と思う部分が多かったです。

つまり、「大学生の現状がこうだ。現状としてはこういう人が結果を出している」というのがわかったのはよいのですが、じゃあ大学は何をするべきなのか、何をすることができて、何をすることが学生にとって最もポジティブな効果があるのかということがよくわからなくなってしまったんですね。

そうなってしまう原因のひとつは、タイトルに書いた「大学は学生のキャリアに対してどこまで責任を負うべきなのか?」という問題とリンクしてくるんだろうと思います。

例えば、今回の発表を聞いていても、以下の3つが考えられます。

1.大学生が大学に対して適応すること(現状では6割が不適応といわれている)
2.行きたいところに就職できるということ(いわゆる就職支援)
3.就職した先で適応できるかということ(豊田先生は就活エリートが会社に適応できない現実を明らかにしている)

これを大学が何をすべきかということに言い換えること、こうなるのかなと思います。

・そもそも大学生活を楽しめる(適応できる)ような環境をつくるべきなのか
・行きたいところに就職できる(就職率を上げる)ということをゴールにすべきなのか
・就職した後にも不適応を起こさずに活躍できる人を育成すべきなのか

もちろん、これらが全部バラバラな問題ではないと思います。しかし、大学としては最低限どこまで担保すべきなんでしょうか。

そのゴールを決めない限りは、実際に大学教育として何をするべきなのかというところが見えてこないのかなあと思いました。そして、このゴールは大学によって様々なのではないかとも思いました。

つまり、日本の大学全体が同じゴールを持つというよりも、各大学が大学の特色を活かしながら独自のゴールを設定し、そのための実践を作り上げていくことになるのかなと思いました。

今回のフォーラムに参加したことは自分にとってとても大きな勉強になりました。

大学で非常勤などをやりつつも、まだ学生(院生ではありますが)という身分の中で、いまの大学生の現状はどのようになっているのか、どのようなタイプが結果を出しているのかについては理解できました。

しかし、「ではどのようにするべきなのか?」については、かなり色々考えることになりました。それを決めるためには、各大学が自らの大学の特徴を活かしながら、独自のゴールを設定し、それを実現するための方法を検討することになるのかなと思います。その意味では今後一層、大学ごとの特徴・特色がでてくるのかなと思っています。

まだ僕なりにうまく答えはでていませんが、このあたりを考えることが重要なテーマになってくるのかなと思いました。

大学生研究フォーラム2011
http://www.dentsu-ikueikai.or.jp/forum/forum2011.html

Togetter – 「大学生研究フォーラム2011」
http://togetter.com/li/169293

■溝上慎一先生の著書