前回の書評に引き続きIDEO本を読みました!

本書「デザイン思考が世界を変える」は、早川書房からでているIDEO関連本の3作目になります。これまでの本との関連は、本書のあとがきに書かれていました。

早川書房のIDEO関連書としては三作目に当たるが、前二作が「いかにして恒常的にイノベーションを生み出す会社組織をつくるか」というビジネス書寄りの執筆・編集スタンスであったのに対し、今回はIDEOのノウハウが生まれた根源に立ち返り、それを思想として突き詰め、いわば「いかに人の生活を豊かにするか」とうとに答える方法を提案するようなつくりになっている。

今回の本は、ノウハウよりもむしろ、その根幹にある「考え方・思想」の部分に焦点を当てた本ということですね。

この本では「デザイン思考」という言葉がひとつ大きなテーマとなっています。

デザイン思考とはなにか?

強力で、効果的で、幅広く利用できるアプローチ。ビジネスや社会のあらゆる面に適用できるアプローチ。個人やチームが画期的なアイデアを生み出して、実行し、影響を与えられるアプローチ。このようなアプローチを提供するのが、本書のテーマである「デザイン思考」なのだ。

より具体的にいうと、以下のような特徴をもっているようです。

デザイン思考では、誰もが持ってはいるものの、従来の問題解決方法では軽視されてきた能力を利用する。デザイン思考は、人間中心であるというだけでなく、人間の本質そのものともいえる。

・直感で判断する能力
・パターンを見分ける能力
・機能性だけなく感情的な価値を持つアイデアを生み出す能力
・単語や記号以外の媒体で自分自身を発信する能力

直感、パターン、感情的価値、多様な表現方法をもつ力・・・。これらの力が非常に重要ということですね。

目次をみてみましょう。この本は2部構成になっています。前半はデザイン思考の説明、後半はこれからどこへいくのか?について語っています。

1 デザイン思考とは何か?(デザイン思考を知る–デザイン思考はスタイルの問題ではない
ニーズを需要に変える–人間を最優先に
メンタル・マトリクス–「この人たちにはプロセスというものがまるでない!」
作って考える–プロトタイプ製作のパワー ほか)

2 これからどこへ向かうのか(デザイン思考が企業に出会うとき–釣りを教える
新しい社会契約–ひとつの世界に生きる
デザイン・アクティヴィズム–グローバルな可能性を秘めたソリューションを導き出す
いま、未来をデザインする)

本の中では、いろいろぐっとくる部分はあったのですが、今回私が個人的になるほどと思ったのは「創造性を支える環境」について記述された部分です。以下に引用します。

前もって許可をもらうのではなく、あとから許可を求める方がよいとされる文化、つまり成功には報酬を与えるが、失敗しても許される文化は、新たなアイデアを生み出す際のひとつの大きな障害を取り除く。二十一世紀に必要なのは適応力とたゆみないイノベーションであるというゲイリー・ハメルの主張が正しいとうれば、創造性を「ウリ」にする組織は、それを反映・強化する環境を育む必要がある。

私がいま幸せだなと思うのは、なんとなくこうした環境にいさせてもらえるようなかんじがするからでしょうか。

いかに「デザイン思考」が大事だ!といっても、それを育む環境がなくては、むしろ個人にとってジレンマが起こることになり、結局組織にとってはマイナスにすらなりえるでしょう。こうしたことを考えたときに、この記述はかなりぐっときました。

創造性を支える思考法とは?それを支える文化とは?

本書はこれらの問いに対して、様々な示唆を与えてくれると思います。おすすめの一冊です!

▼IDEO関連本

「東大式 世界を変えるイノベーションのつくりかた」は最近出たばかりですよね。この本の書評もそのうち書こうと思います。過去に出版された「発想する会社!」「イノベーションの達人!」の2冊もオススメです。

「発想する会社!」については前回書評を書きました。

[書評]よりよいブレストをする秘訣を復習してみる 発想する会社!世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法(トム・ケリー他)
https://www.tate-lab.net/mt/2010/05/-ideo.html