宮原詩織さん、三宅なほみ先生が中心になって進めてくだっているDigital Habitatsを読む勉強会の第二回に参加してきました。この勉強会は、私が所属している学際情報学府だけでなく、東京大学の教育学研究科の方や、ベネッセの方など多様なメンバーで行っています。今回は第4章から6章まで読んできて議論を行いました。
 

Digital Habitats; Stewarding Technology for Communities
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前回の勉強会の様子はこちらにまとめています。
「テクノロジーの導入屋さん」を超えて
今回の勉強会で面白かったと思ったことを3つのポイントでまとめてみました。今回は本の内容というよりも、内容に関連して出てきた議論に関するものが中心です。
・「先生は1人」である必要があるか?
・「学習」という言葉で想起するイメージとは?
・研究のルーツを探ることの意味
それぞれの感想を書いていきましょう。
▼「先生は1人」である必要があるか?
今回の勉強会の議論で面白かったことの一つに、「先生はいつも一人である必要があるか?」という話がありました。これをタイトルでは「ステキな実践はチームだからこそ生まれる?」と表現してみました。
どういうことか?
僕は教師教育などの専門家ではないので、間違っていたら申し訳ないのですが、日本の場合、教師を育てる場合に、どうしても「なんでもできる一人の先生を育てる」というイメージがあるのではないかという話でした。
今回読んでいる本と関連させるならば、「テクノロジーの専門家と一緒に協同して学習環境をつくる」ということになるのですが、日本の場合は、「テクノロジーにも詳しく、授業にも詳しい、ひとりの先生」を求めがちではないか?という指摘ですね。これは面白いなと思いました。
海外のいくつか有名な実践においては、様々な専門家が協同して授業を作っていたようです。例えば、Knowledge Forumなども一つの例といえるかもしれません。
『Knowledge Forum』
もしかしたら、日本でもすでにやられているかもしれませんし、自分はこの分野の専門外かつ、現場も知らないので、チンプンカンプンなこと言っていたらすんません。
ただし、考えてみると、重要な指摘じゃないかなと思ったのです。
例えば、ワークショップの話をしているときにも思うのですが、面白いワークショップをする人たちは、必ずメインでファシリテーションする人がいるだけではなく、「よいチーム」が出来上がっていますよね。

例えば、デザインをアドバイスしてくれる人、システムに強い人、食事のデザインができる人など、様々な人が関わって、ひとつのワークショップを作っている場合があります。このあたりは一つのポイントかなと思いました。

多様な専門家と協同しつつ、なにかを成し遂げていくというイメージなのかなと思うのですが、これは重要なトピックかなと思いました。山形大の酒井先生が取り組んでいるテーマは、まさにこういうことなのでしょうかね。

研究においても、共同研究というかたちが少しずつ広がっていることも、これに関連するのかもしれません。

▼「学習」という言葉で想起するイメージとは?
この議論は何の文脈でできたかは忘れてしまったのですが(笑)、「学習」という言葉を聞いたときに何をイメージするのか?という話です。
みなさん、どうでしょうか?
「学習」とは、ひとつのゴールに到達することをイメージするようなものでしょうか。はたまた、一生、更新していくような「変わり続けるようなイメージ」をお持ちでしょうか。
普段、ほとんど自覚することなく使っている「学習」という言葉ですが、この言葉にまつわるイメージは実はかなり多様であるという話がでて、非常に面白かったです。
「学習」という言葉をキーワードに、ワークショップ出来るなとふと思いました(笑)
勉強会では、ウェンガーの「実践共同体」の概念で言う、「実践」とはなにか?についても議論を行いました。「実践」ってなにを指すのか?これも面白いです。
書評:コミュニティ・オブ・プラクティス
コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践 (Harvard Business School Press)
エティエンヌ・ウェンガー リチャード・マクダーモット ウィリアム・M・スナイダー 櫻井 祐子 野中 郁次郎 野村 恭彦
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5 地に足の着いた方法論
5 今こそ学ぶべきところは多い
4 実践コミュニティのデザインと発達
4 知識ってマネージメント可能なんですね
4 自由なコミュニティーを用いたナレッジマネジメントの影響力

▼研究のルーツを探ることの意味
勉強会をやるときに学生同士でやるのも楽しいのですが、先生と一緒にやると、これまた違った面白さがあります。その面白さの一つとしてあげられるのは「ルーツを知ることが出来る」という点です。
勉強会の途中に何気なく、三宅先生が「この話は、こういう流れがあって、いまにつながっているのよ」というヒトコトをつぶやいてくださるのですが、これは激しく理解を促します。
今回でいえば、「テクノロジーと学習」というテーマや、「学習者中心」という概念がでてきた流れなどを、議論の途中で、補足してくださったのが印象的でした。知識を「点」ではなく「線」として捉えるという意味で、ルーツを語れる人が勉強会に参加して下さるというのは非常に意味のあることだと思いました。
ということで、勉強会の感想をまとめてみました。今回の記事では4章から6章の詳しい内容がなくすいません(笑)
4章から6章にかけては、かなり具体的な内容になってきました。例えば、具体的に、「テクノロジー・スチュワードが、こういうことをしたい場合に、何を気をつけるべきか?」というレベルで文章が書かれています。マニュアル的なかんじなので、「使える」情報がまとめられています。かなりビジネス書的なかんじになってきました。
この勉強会は、夜に開催されているのですが、気づけば3時間くらい議論が白熱してしまうという、なかなか熱く、面白い場となっています。次回は1月です。楽しみ。また内容をまとめて報告しようと思います!
▼三宅先生に関連する記事はこちら
「わからない人は質問して下さい」という問いは本当に意味があるか?
大学授業を活性化する方法を読み直した
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